日経ビジネスにパナソニックのレッツノートの記事が載っていた。
タイトルは「パソコンは未だ稼げる」
世界のパソコン市場のトップ3は、①中国レノボ・グループ、②米ヒューレット・パッカード、③米デルで、日本は、価格競争に負け、存在感は殆どない。
そんな中でパナソニックが頑張っているという。
神戸市のパナソニック神戸工場でレノボ・グループが年6000万台規模に対して、年100万台ではあるが、規模を追わず、顧客ニーズをきちっと捉え、効率を上げる工夫をしながら生産している。
日本の家電は、ここ20年ほどの間に、殆ど中国や韓国、台湾に持って行かれてしまった。
その一番の要因は、とにかく安さの追求=安く造って大量に販売することこそが、グローバル化に対応して生き残る道だと思ったからである。
そこから、“メイド・イン・ジャパン”という考え方は自ずから消え去り、安ければどこで造ろうがOK・・・という考え方が蔓延した。
日本のメーカーは中国の安い労働力を当てにして、我先に・・・と中国へ出て行った。
そこで起こったことは、“自明の理”である。
日本のモノ造り技術がドンドン中国に根付き、やがては中国で品質的にも変わらない製品が出来るようになってしまった。
当然、巨額にして巨大な日本の本社組織を抱える日本は、中国とか韓国の身軽な企業と闘っても、コストでは勝てない。
結局は、ただただ技術を教えて、仕事を取られてしまっただけなのだ。
これまでの話は、誰もが知っている日本の家電市場喪失のストーリーかと思うが、以下に私の考え方を披露したい。
日本のメーカーはバブル崩壊後、こぞって中国へ生産移管をしたが、これはすべきではなかった。
・・・というよりも、少なくとも日本に生産を残すべきであった。
日本のモノ造りは、特に部品は、日本の中小零細企業が賄っていた。それもかなり精度の高い、優れものだった。
良く”過剰品質“と言われるが、正に過剰品質で我々は部品を造っていた。
なぜなら、メーカーがそれを望み、それが出来なければ、我々は生き残れなかったからだ。
当社は、ドットプリンターのソレノイドコイルとそのアッセンブリ―がメインだったが、抵抗値の管理は非常に厳しく、12個いっぺんに巻く機械で、結構バラツキのある電線やボビンを使用しながらも、抵抗値をど真ん中に調整すべく、線の張り(テンション)の調整をしたり、巻の調整をしたり、涙ぐましい努力をして巻線をした。
なぜなら、もしそのコイルに抵抗値の規格が外れたものがあったら、即得意先は即連絡してきて、工程に数量の余裕がなければ、否応なしに数人得意先に飛んで行って測定・選別、上手くして、全数返品で再検査、となるからだ。
これもそのうちに、“社重”といって、得意先の受け入れ検査を無くす代わりに、全面保証・・・・というような、今から考えれば、無謀なことを下請けに背負わせていた。
しかし当時の”下請け”は、とにかく得意先から言われるままであり、我々はその重圧から逃れるために、さらに管理を強化して、巻線し、検査し、もしも数値が真ん中から少しでも外れ始めると、即調整し、とにかく”ど真ん中“以外は製品じゃー無い・・・という位の管理をしていた。
しかし今考えると、これが”メイド・イン・ジャパン“の正体だった。メイド・イン・ジャパンは過剰品質そのものだったのだ。
それでは、各メーカーが中国や海外で自社で造った部品、或いは近隣の安い部品を購入して組み立てた製品は、果たしてどの程度のモノだったのだろうか?ということである。
私が海外移管後、行ったあるメーカー(以前当社が巻いていた)では、この12本いっぺんに巻く巻線機のノズルを月に何十本も交換していると聴いた。
一本確か当時6,7千円したノズルは、当社では1本曲げたり、折ったりしたら「始末書モノ」で大騒ぎしたものだったが、このメーカーは、機械の台数も多いかもしれないが、何十本もダメにしていた…すなわち、巻が乱れていることが容易に想像できるのである。
巻が乱れていては抵抗値は間違いなくバラつく、プリンターの印字が日本の頃とは比べ物にならない位のレベルになっているはずである。
これが、”メイド・イン・ジャパン“の消えた大きな要因なのである。
現在、パナソニックが国内で今なお、もうとっくに消え失せたはずのパソコンを造っているということは驚きであった。
ソニーから独立したVAIOの存在は知っており、私のパソコンはVAIOだが、まだパナソニックのパソコン生産が国内で生き残っており、それも採算が取れ、業績が伸びている…という事実は、多少日本のモノ造りに光明を与える事例かと思う。
願わくば、その部品は国内製・・国内の中小零細メーカーのモノであれば、いうことは無いが、これは私には分からない。
しかし、これが日本のこれからの向かうべき道の一つであることは間違いない。
特に、パソコンとかの重要な製品は、日本の最高級のモノ造りで対応すべきである。最高の品質=我々中小零細が造るバラツキの無い優れた製品である。
私は今は各個人にとって一番大事な“スマホ”は国内で、前部品国内調達で造るべきだと思う。最初は国内の少数派から始まり、やがては世界中のスマホは日本製になるのは間違いない。
混ぜなら故障が殆ど無くなるからである。
国内で造れば高い…というが、これから量さえあれば、いくらでも自動化、ロボット化が可能であり、その自動化、ロボット化も日本が世界で一番得意な分野である。
自然エネルギー活用で電気代を極力カットして、オール自動で、大量に先校の品質の製品を造る・・・
“安くて品質ピカ一”、これが”メイド・イン・ジャッパン“の復活となる。
すなわち日本再生につながるただ一つの道なのだ。