「高密度コイル」
・・・これは私が今から14年前にN社の半導体、露光装置リニア―モーター用として考えられ、造られ、採用されたコイルに私が命名したものであり、その後特許も取得した。
最近ネット上では、「高密度コイル」という言葉が飛び交っている。
いわゆる、コイルをきちっと巻くことの総称ということになる。
しかし、私が命名したこのコイルは、この一般的に言われているモノとはちょっと違っている。
私が高密度コイルと命名したのは、丸線をまず他社の一般的な整列巻よりも10%以上きちっと巻き、その上で、更に圧縮して密度を上げ占積率が90%以上のモノだった。
その後、これも前述の露光装置用として、平角線をα巻きしたコイルを積層し、占積率が100%(被膜込み)に近い巻線ができ上がった。
しかし、これらのコイルはそれから10年あまり他社に採用されることは殆どなく、前段階のきちっと巻いた状態のコイルの採用にとどまっていた。
当社は一時広告に「巻いただけでも高密度」と謳って、世の中のニーズに合わせながら来た。
ところが最近EV車のモーターを中心とした「占積率獲得合戦」が始まり、車メーカーとその周辺メーカーによる当社のアプローチは格段に増えて来て、当社も「高密度圧縮成型コイル」として太線やパラ線をきちっとある程度の形に巻いたものを圧縮成型する製造法を考え、新たに特許出願した。
しかし、車メーカー関連の会社は試作はするものの、このコイルを圧縮成型するという一見無謀に思える方法は、なかなか採用するまでには至らない。
高電圧による被膜の損傷を懸念している。
確かにこの技術は無暗に圧縮成型すると危ない技術には違いないが、これは欲しい占積率の「程度」を考えれば済む問題である。
例えば97%圧縮は確かに怖いが、94%だったら高電圧クリアーするとか、もっと安全を重視して90%にとどめる・・とかである。
当社も各社の巻線仕様によって圧縮できる程度が異なるため、一般論は言えないが、丸線で90%以上は間違いない。
車以外の電圧もそれ程かからないコイルに、あるメーカーがこの圧縮成型技術を取り入れたところ、小型高効率のモーターとなり、未だ市場に出したばっかりであるが、好評で増産の話が出てきている。
結局、これまでには考えられなかったような仕様のコイル設計が可能になる・・・と云うことだ。
一方殆どの関係技術者は、平角線の方が丸線より占積率が高いと思っている節があるが、必ずしもそうではない。
平角線の最も有効な占積率アップは間違いなく「α巻き」である。但しα巻きは2層しか巻けないため、多層にするためには「積層連結工程」が必要となるため、どうやってもコストの点では不利になる。
しかし私は敢えて言っておきたい。
「最高のコイルの占積率を狙いたければ、平角α積層巻きである」・・・と。
現在車のEV化の花盛りの技術はセグメント方式である。
これは我々コイル屋、巻線屋にとっては全くの「邪道」である。
太い平角線をUの字にフォーミング・組合せ、端末を溶接によって連結しコイル化すると云う技術である。
最近、この業界の動向に合わせ当社もこの「まがい技術のセルコ版」を研究しており、その内に発表することになろう。乞う、ご期待!!
平角線を普通に積層すると、コーナーがある分クロスポイント(乗り上げ部分)が丸線より不利となるが、ある巻線機メーカーはその部分を上手く逃がして高密度巻線を実現しているので、高密度平角積層巻線は、このような巻線がお奨めです。
しかし、占積率を100%に近づけたければ、平角α積層巻きしかないということはここで明言しておきたい。