このところ、EV車向けのモーター用コイル中心にリッツ線とか集合線の引き合いが増えている。
渦損対策のようだ。
当社は、これまでコイルの「占積率アップ」を錦の御旗にして技術を蓄積してきたが、ただただ占積率を上げても、特に太線は表紙効果の問題があり、銅損は少なくなるが、渦損が発生し思ったような特性が出ないということのようだ。
当社のリッツ線の歴史は古い。
IH技術を寡占化したパナソニックの前身の量産はセルコが電線会社の下請けとして担当していた。
リッツ線についての特許はパナさんが殆ど抑えていったが、このIHのコイルを巻く技術、リッツ線の取扱技術については、当社は様々なノウハウを持っている。
パナさんは、20年以上前に電線会社が電線が売れれば…ということで、パナさんの技術者を4~5人連れてきて、装置の説明をしたり、写真を撮ったりして帰り、仕事は来なくなったが、その後も様々な会社からロット数は少ないもののIHの仕事はずっと続いてきている。
このIHコイルの製造技術により、当社にはEV時代には欠かせない「無接点充電」の話が、結構舞い込んで来る。
IHコイルにしても、無接点充電にしても、ただ「リッツ線」と云っても、ピンキリであり、撚り方、扱い方はそれなりに工夫が必要で、巻線技術、電線会社とのコラボは不可欠である。
一時、複写機のIH定着装置用のコイルが、各複写機メーカーから次々と受けた時期があったが、この時には、このリッツ線を巻いておいてこれを「曲げる」という技術が必要となった。
これらは試作のみで、終に一社として量産には至らなかった。
理由はパナさんの特許を超えることが出来ないと云うものだった。
しかし、当社は、これらの様々な試作をこなすことによって、様々なノウハウ、知見を得ることが出来た。
今、EV化の波で、リッツ線を使った巻線は、正に当社の出番・・・という状態にある。
また集合線に関しては、当社の丸線で高密度巻線が使える可能性がある。コイルを密に巻いたものを集合線にするという発想だ。
更にこの集合線の占積率を高めたいというお客様には、コイルの圧縮技術(当社の特許技術)も使えるかも知れない。
当社は、これまで被膜を損傷せずに電線をいかに圧縮したり成型したり、曲げたりするか・・・という技術を磨いてきた。
今回の「リッツ線」、「集合線」が必要になってきた時代は、正に「セルコの時代」が訪れた…ということか。