丸山晩霞記念館企画展「水彩の明星」コラボコンサート
「心にしみる音」 By 神原恵里子& 近藤聡
丸山晩霞画伯の水彩画に魅せられて思いついたというドボルザークの新世界から始まったピアノとヴァイオリンのコンサート。
静かに荘厳な雰囲気の中で始まった。
神原さんの優雅で落ち着いたトークも秋の気配満載の東御市のサンテラスロビーに流れた。
3曲ほど済んだところで、近藤さんの例の大阪弁のトークが入った。
「今までしゃべるなと止められていたんですよー!」
・・・と一気にまくしたてる。
「サイン、コサイン、タンジェント、微分、積分、ええ気分!」・・・と、お得意の自分が数学の教師であることを紹介しながらの名調子に、会場は一転して寄席の雰囲気に変る。
しかしまた演奏が始まると、神原さんのピアノに乗せた近藤さんのヴァイオリンの音色は、聴いている人達の心に響く、このコンサートのテーマに合わせれば、“心にしみる”
演奏が終わると、また近藤さんの止まらないトーク、私は一番前の席で大笑い。
時々、近藤さんが神原さんをいびるのだが、神原さんは全く動じず平然とマイペース。
この二人のやりとりは、近年になく面白い。
ちょっと分析をすると、この二人は、それぞれ自分の音楽、自分の生き方が確立されており、相手に気を遣うことも無ければ、相手におもねる必要もないため、正に「マイ・ペース」なのだ。
神原さんは、元々はクラシックから始まっているが、これまで軽井沢星野リゾート、ブレストンコートでの2000回以上の演奏で、新郎、新婦を魅了しながら様々な曲を弾き演奏テクニックを鍛え上げて来ており、加えて、ポップス、歌謡曲、その他の様々なジャンルに挑戦、そして、ソロ、デュオ、バンドと演奏形態もこだわらずに何でもこなしてきて、自分なりの音楽を作り上げてきた人、そして近藤さんは、4歳からヴァイオリンを習い始め、信州大学交響楽団の学生指揮者と依頼演奏のコンサートマスターを歴任し、コロナ前までは、長野県内のみならず、札幌、大阪と全国を飛び回り、過去には、ウィーン学友協会やブタペスト宮殿、イタリア会館等海外での演奏も経験してきていて、トークの軽快さとは裏腹に、凄いヴァイオリンの奏者、そして彼の口笛はアメリカの大会にも出たほどの腕前=口前?であり、ヴァイオリン演奏と共にこの口笛も聴きものだ。
大阪の出身で今は東御市に住み、予備校の数学教師をしている。
私もスタジオをやっている関係から、色んなセミプロ演奏家と会ってきたが、彼のような演奏、口笛抜群、口八丁のトーク最高の人は見たことが無い。
この音楽的に、人間的に確立された二人の個性がそれぞれ輝いて、ぶつかり合い、協調しあいする様は、見ている人達を完全に魅了する。
これが普通の演奏会であったら、会場はいつもの普通に良かった演奏会になったと思うが、この静寂さとハチャメチャ感溢れるトークのコラボは、その”落差“が生み出す、不思議なハーモニーによって見ている人を魅了したのだった。
“笑う”、“泣く”という人間だけに与えられた感情・・・
これを操れる人が、映画で言えば大監督であり、小説家で言えば、大作家であり人の心を大きく揺さぶるのである。近藤さんのトークで大笑いした後、お2人の素晴らしい演奏が始まると、その揺さぶられた感情が、そのままストレートにその音楽に移入され、ピアノとヴァイオリンの調べに酔いしれてしまうのである。
だから、あの会場に来た人は、皆さん、この演奏会に酔いしれたのだ。
・・・ということで、私のこのコンサートについてのコメントを終わりますが、今回のお二人の演奏についての私の分析は如何だったでしょうか?
このコラボ演奏会は、途中から時節柄、ハロウィンの衣装替えもあり、曲は葉加瀬太郎の「ワイルド・スタリオンズ」、ジョージ・ウインストンの「あこがれ/愛」、鬼滅の刃の「紅蓮華」、「この道」、「千の風になって」等々…どれもそれぞれ素晴らしく、ピアノとヴァイオリンの音が、秋の東御市の青空に吸い込まれて行くような演奏会でした。
2021年10月31日