逆ピラミッドの組織

9月1日より当社の組織がガラッと変わった。

 従来のピラミッド型組織が、ひっくり返り「逆ピラミッド型」の組織となった。

逆ピラミッド型の組織!?と困惑される方もおられるかと思うため、若干解説をするが、その前に、当社では何故従来の普通の組織ではダメなのか?という説明をする。

 セルコの社名はセルフコントロールという言葉が元となった社名であり、経営理念も“Harmony & Prosperityy in Self-Controlled people”(自らをコントロールし調和と繁栄をもたらす)という理念を掲げている。

 セルフコントロールというのは、「他から命令、指示されて動くのではなく、自ら積極的に考え、自己管理の下に動きなさい」ということであり、これまで続けて来たピラミッド型組織による上から下への情報伝達と矛盾し、動ける人は自由に自分の部署以外の仕事をしたりしていたため、何か起きた場合、社内各所で一体誰が動くのだ、誰の責任だ・・・という問題が常に起きていた。

 そういった意味では、組織があってないような状態だったということになる。

 そこでそういったことを全て解消する手段がこの逆ピラミッド型組織であった。

 よくよく考えてみれば、通常の量産品の生産の流れは、別に命令や指示でなくても迅速且つ正確な連絡網があればこと足りる。

 この逆ピラミッドの組織の意味するところは、当社では、あくまでモノ造りに携わる各担当者が主役であり、その他の役職者はそのサポーターになるということだ。

 従って一番最下部に位置する社長は「スーパーサポーター」であり全従業員を迅速かつ適切に、しっかりとサポートすると云うことになり、常務、部長、課長といった役職者はそれに準じて上級サポーターとしての力を発揮する必要があるということだ。

 この組織の目的は、特に製造部内=モノ造りに関する組織の簡素化、フラット化であり、通常業務(量産品)に関する全てのやり取りを担当者レベルで遂行できるようにするためのシステム構築を目指したものである。

 その方法として管理部内の4名の生産管理担当者を各得意先別に定め、内示、受注から部材の発注管理、外部調達の管理、社内ライン、検査ラインとの完製品納入に至る全ての生産活動を一気通貫で責任を持って管理してもらう。

 従って、基本的には量産品の顧客窓口と納入業者窓口は各生産担当者ということになり、通常量産品のやりとりは全て生産管理担当者が行う。

 但し品質に関しては、各顧客毎に品質保証担当者を定め対応する。ただ生産管理担当者に品質情報を伝えても責任を持って対応し、解決が難しい問題が発生した際は、担当者と共にサポーターである管理者も加わり、問題に対し迅速に対応する。

 そして各製品別グループ毎にグループ長を選出(一年毎に再選出)し、グループ長は自分の生産ラインの生産状況、品質状況全てを把握し、常に生産管理担当者とコミュニケーションを取り、情報を共有するようにする。

 役職者は全員、これらのラインのサポーターとして当面は社長の指示、依頼で様々な問題解決に当たる。

 従って各ラインで、不良、生産遅延、その他の問題が発生した場合は、各生産担当者から社長に報告、社長はその時の判断で各サポーターに指示、依頼する。状況によっては社長自身が動き、問題の早期解決を図る。

 社長は、当面は采配を振るいながら、出来るところから当システム及び会社全体の整備をし、それぞれ制度化を図って行く。➡適材適所の人員配置、最適システムの構築、スーパー連絡網の整備をし、最終的には殆どの業務は自分達でこなし、社長には必要な情報だけが入いるような状態までに持って行く。(目標1年)

 一方、役職者は、通常のライン仕事からは離れ、不良問題、生産遅延問題等の異常時の対応(当面は社長からの指示、依頼による)をすると共に、新規受注、新規顧客の確保に全力を尽くし、常に「新たなる柱」構築のために努力する。

 社内機構の改革は、当社のような小さな会社でも大変である。

 それも今回のように、組織を180℃ひっくり返してしまったのだから、特にこれまで管理者であった”役職者“は困惑するかと思う。

 これは”意識改革“が必要になる。

 私の考え方は、「役職者」は決して偉くなはない。

 ただ組織の中の一つの役割に過ぎない。

 会社が役職につける意図としては、スキルの高さとか功績とか人徳とか…いろいろな要素があるが、役職に付いても付かなくても同じ人間であり、急に神様のような偉い人間になるわけでは無い。

 それなりの責任が出て来るため、それなりに給与も上がる。

 今回の組織における役職者の役割は只管“サポーター”という役割だ。

 上に行けば行く程、担当者等が気持ちよく働ける環境を提供するのが自分達の役割だ・・・と認識すれば全て上手く行くはずだ。

 逆に言うと、このサポートが上手くできる人程、上級役職者になれるということになる。

 従って、スーパーサポーターたる社長は、社内の誰よりもスキル高くサポートできなくてはならない。

 しかし私を含め役職者は自分ができなくても心配はない、出来る誰かに指示したり、依頼してそのサポートを完遂させる力があればよいのだ。

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近畿地震と新幹線の出張

群馬で地震が起き珍しいなと?と思っていたら、今度は近畿地方で地震が起きた。

折しも私が大阪へ向かおうとするその矢先だった。

いつもギリギリに時間設定する私が,殊勝にも一本早い佐久平から東京への一番列車に乗り東京に出て、8時3分発のひかり(のぞみは大人の休日倶楽部3割引きが効かない)に乗って東京から大阪へ向かう東海道新幹線の電車の中の出来事であった。

今にも発車・・・という時刻になって社内が突然暗くなり非常灯に代わった。

最近東海道線では殺人、山陽新幹線では新幹線自殺・・・と色々とあったので、今度は何?と思ったら、車掌が回って来て肉声で「近畿地方に地震があり、新幹線の送電が一時ストップして自動停止状態となっております」とのこと。

しかし私も周りの人もあまり動揺はせず、少し時間が経てば動き出すだろうと思っていた。

しかし、なかなか動かない。

約1時間後、停電が回復し電車が動き出したが、品川で停まった。

そしてアナウンスで大阪―京都間の点検に約3時間はかかる・・・とのことで、取りあえず、第一目的だった、大阪店天王寺のアベノハルカス12階のレストランでのタイのTIT会長とお客様の3名での会食がてらの打ち合わせはキャンセルすることにした。

その後、その予約したレストランからも本日は休業との電話連絡が入った。

大阪の電車も動いていないようだ。

それから新幹線は全く動かない。

私の仕事は最近はもっぱらPCでのメールでのやり取りが主のため、この雑音のない静かな新幹線空間は、途端に私の簡易オフィスに早変わりした。

メールチェック返信後は、普段なかなか時間が取れないセルコのホームページブログ、「社長の部屋」への投稿もじっくりできた。

何かに熱中すると私は時間の感覚が無くなってしまう。

いつの間にか12時になっており、あれから3時間が経っていた。

その後、タイの会長と連絡を取って、大阪市内も電車が未だ復旧してないとのことで、このまま会社に戻った方がいいだろう・・・と云う結論に達し、あちこち拡げた書類やコンピュータをバッグに詰め込み、降りようと・・・した途端に間が悪く?ドアが閉まり、新幹線が動き出した。

結局、新横浜迄動いた。

お昼を過ぎたため、何か食べたいと思っても売店もなく、どうしようもない。

「お急ぎのお客様は隣のホームの『のぞみ』に乗り換えてください」とのアナウンスで即乗り換えたら12時40分過ぎ頃動き出した。

結構調子良く走って名古屋手前迄1時間半くらいだったが、・・・・その手前で全く動かない、折しもカーブするエリアか?と思われるが車体が右の方に大きく傾いたままである。

結局、1時間位そこに立ち往生した後、名古屋に着いた。

名古屋からはスムースに動き始めたが、また京都の前でストップ。

会長の方は、どうにかタイの懇意にしている会社の大阪在住の方に車で迎えに来てもらい、第二の目的であるPM3時からの大阪のメーカーさんへどうにか辿り着いたようだ。

何か、大阪市内の携帯電話が繋がらず、その得意先は私を通じ連絡を取り、タイの会社はタイと連絡を取って大阪の社員に連絡を取っていたとのこと。

普段便利に使っているモノは、災害時には逆に大変不便になってしまうという教訓か?

結局、私が大阪に着いたのは5時過ぎ、お客様との打ち合わせが終わってしまっており、その後、会食を・・・と云う話があったため、せめてお客様のコストが1/3,1/4になるかも知れないという画期的なVA提案のサンプルだけでも見てもらおうと思ったが、とにかく新大阪から先が動きが取れない。

電車はオールNG、タクシーは長蛇の列で、いつになったら乗れるか検討もつかない。(のちのテレビでもこのタクシーの列を大変な状況として映し出していた。)

お客さんと会長に連絡を取り、結局そのまま引き上げるしかないということになった。

私は翌日は名古屋から三重のお客さんに行く予定となっていたため、ホテルは京都にとっており、そのまま京都に向かった。

飲まず食わずの一日だったため、夕飯は思い切り上手いモノを食べてやろうと思ってあちこち歩き回ったが、結局お好み焼き屋さんに入った。

メニューを見ていると、店の女の娘が、「前のお客様からのリレープレゼントで肉ニラのお好み焼きのプレゼントがあります!」ということで、、、私は小食のため、それだけでいい・・・と思ったが、もう一品京都の九条ネギのお好み焼きを頼んだ。

結局、生ビ―ルとこの二品のお好み焼きはなかなかの味であり、まあぐるぐる歩き回った意味があった。

新幹線に缶詰の一日・・・結局佐久平6時~新大阪5時で11時間の一日は、結構疲れており、ホテルに入るとバタンキュー状態だった。

ところが夜中12時40分頃、グラグラと揺れた。

私は寝ぼけていて大声で「小諸でこんなに揺れれば、大阪壊滅だー!」・・・と叫んで飛び起きたが、そこは京都だった。

また新幹線が停まっては・・・と思いテレビを点けたら、震度4の余震ということで安心し眠りについた。

翌日は、散歩がてら京都駅で昨日の新幹線特急料金の払い戻しをし、近くの五重の塔で有名な東寺迄散歩した。

近く・・・と言っても結構な距離があり、私の万歩計は14,000歩まで上がって、一日1万歩の目標は朝だけで達成した。

その日の打ち合わせは、当社の技術の部長と名古屋で落ち合い、話もスムースに進み、無事に帰って来た。

東京駅で大阪のお客様に届けるコイルサンプルをその日の夜便でタイへ向かう課長に手渡し、同じく同日タイへ向かったお客様に見せられるということになったため、一応目的は達成した。

疲れた!!

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「新老人の会」のニンニク作り

「新老人の会」・・・・昨年105歳で亡くなった聖路加病院名誉院長の日野原重明先生の会である。
 先生が没後もこの会はそのまま継続はしているが、やはり求心力は急速に落ちている。
 しかしここ信州支部東信ブランチの活動は一向に衰えない。
 4月には日光へ一日バス旅行をし、先週は長野の先の飯山の戸狩温泉スキー場にワラビ取りに一泊旅行、昨日は一昨年から始めたニンニク作りで収穫作業。勿論その後は食べて飲んで、よもやまの話題には事欠かない。
 そのニンニクっ作りであるが、去年はいい調子で結構なニンニクが取れたが、今年はちょっとばかり不作で去年の半分くらいしか取れなかった。
「連作障害」、「深く埋め過ぎ」、「草に栄養分を取られた」、「種が悪かった」等々、なにせ手はあまり動かないが、口だけは百戦錬磨の人達ばかりで、色んな見解が飛び交う。
 代表の私としては、「収穫云々・・と云うよりも、こうしてみんなで楽しく作業し、仲よく過ごす時間そのものが大事なんです!」と強調するが、内心は面白くない。

 4年ほど前に日野原先生を東信ブランチの主催で上田市の市民会館にお呼びし、1400名という参加者を集め、その時に得た収益金が当会の活動資金となっているが、あれから4年、食事会やバス旅行、ニンニク栽培等への補助金を結構気前よく出していたら、だんだん懐が寂しくなり、日野原先生もいない今、収益源はニンニクの栽培・販売事業にかかってきたからだ。
 一昨年は、未だチョロチョロやっていたが、昨年からは大々的にやろうということで、種も結構高くて立派なモノを買い、1年目はそこそこの収穫だったため、2年目からは道の駅等に卸し、本格的に事業化しようと思っていた。
 その夢が残念ながら今回、がっくりの結果となってしまった。
 
また父から受け継いだセルコの敷地は5200坪あり、この敷地や工場建屋を管理する(有)同延舎という会社であるが、こちらの管理もしている。
 今同延舎の建物の中に、かれこれ20年近く前にホンの遊び心で結果、結構な改装費を費やして倉庫を改装した音楽スタジオがある。
これは長年女房から、事ある毎に「あんなものを作って!」と責められ続けている私の最大の弱点である。
 こちらは苦節20年、東京の区役所で勤めていて、50歳そこそこで早期退職、こちらに移住し、自給自足農業をやりながら残りの人生を自分の好きな音楽をやって過ごしたい・・・と云う人が現れ、カビ臭かったスタジオ内を隅から隅まで掃除し、快適な空間にすると共に、設備はそれほど増やさずに音響を見事に生まれ変わらせたのである。
 私は早速「小規模事業者持続化助成金」という補助金を申請し、この資金を基にこのスタジオのリニューアルを計り、どうにか多少でも利益を確保できるように・・・と考えている。

 ・・・・・このように、私の場合は、「仕事」という概念はあまりない。
 私の前に現れる全てのことが仕事であり、趣味であり、結局私の人生そのものだということだ。
 そしてその対象に向かって全力でぶつかって行くことが、私が生きている証であり、
 私は「ああここまでやったから自分のやるべき事は終わった」・・・と云うことはまずないか?と思う。
 生きている限り、何かを考え、何かをやり続け、その途中で人生を終わるのか?と思う。
 私にとってコイルで大きな仕事を受注することも、「新老人の会」でニンニクを作ることも、その直面している時は、その対象事項が私の全て・・・と云うことなのである。

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高密度コイル

「高密度コイル」

・・・これは私が今から14年前にN社の半導体、露光装置リニア―モーター用として考えられ、造られ、採用されたコイルに私が命名したものであり、その後特許も取得した。

 最近ネット上では、「高密度コイル」という言葉が飛び交っている。

 いわゆる、コイルをきちっと巻くことの総称ということになる。

 しかし、私が命名したこのコイルは、この一般的に言われているモノとはちょっと違っている。

 私が高密度コイルと命名したのは、丸線をまず他社の一般的な整列巻よりも10%以上きちっと巻き、その上で、更に圧縮して密度を上げ占積率が90%以上のモノだった。

 その後、これも前述の露光装置用として、平角線をα巻きしたコイルを積層し、占積率が100%(被膜込み)に近い巻線ができ上がった。

 しかし、これらのコイルはそれから10年あまり他社に採用されることは殆どなく、前段階のきちっと巻いた状態のコイルの採用にとどまっていた。

 当社は一時広告に「巻いただけでも高密度」と謳って、世の中のニーズに合わせながら来た。

 ところが最近EV車のモーターを中心とした「占積率獲得合戦」が始まり、車メーカーとその周辺メーカーによる当社のアプローチは格段に増えて来て、当社も「高密度圧縮成型コイル」として太線やパラ線をきちっとある程度の形に巻いたものを圧縮成型する製造法を考え、新たに特許出願した。

 しかし、車メーカー関連の会社は試作はするものの、このコイルを圧縮成型するという一見無謀に思える方法は、なかなか採用するまでには至らない。

 高電圧による被膜の損傷を懸念している。

 確かにこの技術は無暗に圧縮成型すると危ない技術には違いないが、これは欲しい占積率の「程度」を考えれば済む問題である。

 例えば97%圧縮は確かに怖いが、94%だったら高電圧クリアーするとか、もっと安全を重視して90%にとどめる・・とかである。

 当社も各社の巻線仕様によって圧縮できる程度が異なるため、一般論は言えないが、丸線で90%以上は間違いない。

 車以外の電圧もそれ程かからないコイルに、あるメーカーがこの圧縮成型技術を取り入れたところ、小型高効率のモーターとなり、未だ市場に出したばっかりであるが、好評で増産の話が出てきている。

 結局、これまでには考えられなかったような仕様のコイル設計が可能になる・・・と云うことだ。

 一方殆どの関係技術者は、平角線の方が丸線より占積率が高いと思っている節があるが、必ずしもそうではない。

 平角線の最も有効な占積率アップは間違いなく「α巻き」である。但しα巻きは2層しか巻けないため、多層にするためには「積層連結工程」が必要となるため、どうやってもコストの点では不利になる。

 しかし私は敢えて言っておきたい。

「最高のコイルの占積率を狙いたければ、平角α積層巻きである」・・・と。

 現在車のEV化の花盛りの技術はセグメント方式である。

 これは我々コイル屋、巻線屋にとっては全くの「邪道」である。

 太い平角線をUの字にフォーミング・組合せ、端末を溶接によって連結しコイル化すると云う技術である。

 最近、この業界の動向に合わせ当社もこの「まがい技術のセルコ版」を研究しており、その内に発表することになろう。乞う、ご期待!!

 平角線を普通に積層すると、コーナーがある分クロスポイント(乗り上げ部分)が丸線より不利となるが、ある巻線機メーカーはその部分を上手く逃がして高密度巻線を実現しているので、高密度平角積層巻線は、このような巻線がお奨めです。

 しかし、占積率を100%に近づけたければ、平角α積層巻きしかないということはここで明言しておきたい。

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