会長の部屋:日本回帰への流れ-

<日経ビジネスの記事より2015年1月5日号「第四次産業革命」より>

 2015年の日本の製造業のキーワードは「再編」となるだろう。まず加速しそうなのが、国内生産への回帰に伴う生産体制の再構築だ。

 ダイキン工業やキヤノンを代表例に、中国などの工場から一部製品の生産を国内工場に戻す動きは既に広がっている。1ドル=100円を超える円安が定着し、足元では120円に近い水準で推移している。新興国での人件費上昇もあり、国内生産の優位性が高まった。

円安基調が続き国内の生産体制を再構築する動きも広がる。

 経済産業省の「工場立地動向調査」では、2014年上期の工場立地件数(電気業除く)は前年同期比42%増の500件。これまでは既存の国内生産拠点の生産数量を増やすというのがケースの大半だったが、今の為替水準が続けば新たな生産拠点を設ける企業も増える可能性が高い。

 例えばシチズン時計は長野県佐久市に時計やその部品の新工場を立ち上げる。ファナックや安川電機などロボット大手も相次いで国内での新工場建設を決めた。いずれも需要は海外が中心だが、高い付加価値とシェアを持っているのが共通点だ。

 アイリスオーヤマもLED(発光ダイオード)ライトの生産の一部を、中国から佐賀県の鳥栖工場に移転。ただ、為替変動に左右されない生産体制を目指しており、「国内回帰するのは国内市場向けに限る」(同社の大山健太郎社長)。日本では人手不足が顕在化していることもあり、企業にとっては何を国内で生産すべきかを見定める必要がある。

 その上で、主力拠点を東京都日野市から茨城県古河市に移転する日野自動車のように、国内の生産体制を大胆に再編する動きも出てきそうだ。これらの投資はほとんどが地方だけに、安倍政権が進める地方創生が軌道に乗るかどうかも、こうした動向が大きく影響するだろう。

<読売新聞 1月5日(月)8時50分配信 >
パナソニック、国内生産回帰…円安・人件費高でパナソニックは、海外で生産し日本に逆輸入している洗濯機やエアコンなどの家電製品の大半を、今春から順次、国内生産に切り替える方針を明らかにした。

 円安の進行や海外の人件費の上昇で海外生産の利点が小さくなったためだ。家電最大手のパナソニックの「国内回帰」が他社に波及し、国内製造業の空洞化に歯止めがかかるかどうかが注目される。

 パナソニックの家電の国内販売額は5000億円前後とみられ、うち約4割を中国を中心とした海外で生産している。

 パナソニックはまず、ほぼ全量を中国で作る縦型洗濯機の生産を静岡県袋井市の工場に戻す。その後、全量を中国から輸入している家庭用電子レンジは神戸市での製造に、中国で生産している家庭用エアコンも滋賀県草津市に、それぞれ切り替えを進める。.

日経と、読売の二つの記事から、ここのところの円安で、いよいよ日本回帰の流れが始まってきたようである。
 これはいい傾向で大歓迎の話だ。

 これだけ円安になっても、全く貿易の黒字にはならず、むしろ輸入品の方が圧倒的に多く、貿易赤字がドンドン膨らんで行く。
 車を除いて、電化製品を始めとする殆どのモノが海外生産だからである。
 
 バブル崩壊後、日本の中小零細製造業は、当時の1/2に減ってしまっている。
 しかも未だにその倒産・廃業の速度は衰えておらず更に減少を続けている。
 
 バブル崩壊後、雪崩を打ってメーカーは中国、タイ、マレーシア、インドネシアへと生産をシフトした。
 車で残った中小製造業は未だよかったが、我々電気、電子部品の下請け業は、国内ではナーンにも無くなってしまった。
 当社は、国内に於いては従業員を1/10の13人に絞り、国内に残る試作。少量多品種等のそれまでの何百万、何十万という注文からすれば”ゴミ漁り”のようなことをしながら、生き延びて来た。
 以前ならば、何万個の引き合いでは、「やる気にならない」・・という状態が、その後は、何万個という数は、夢のような数量に変わった。
 たまたま当社は、「高密度コイル」という開発の最先端を行くアイテムにぶち当たり、この技術力で徐々に回復することができたが、普通の状態ではとても会社存続は無理であったかと思う。
 
 そんなことで、中小零細製造業はドンドン姿を消して行ってしまう。
「息子がいないから」・・という場合もあるが、息子がいたって、おやじが朝から晩まで働いても生活が一向に楽ならない、金繰りで銀行や金融を駆けずり回る姿を見ていれば、誰もこんな条件の悪い仕事を引き継ぐ若者はいない。
 
 しかし、私ははっきりと宣言したい。
 日本の”モノ造り”はこれらの小さな会社が”本元”なのであり、これらの会社が消滅してしまったら、日本の”モノ造り文化”はなくなってしまうのである。

 海外に丸ごと生産拠点を移した多くの大企業は”モノ造り”と云うモノを大変簡単に考えているように思える。
 この辺の詳細は拙書「2020年東京五輪の年に・・・」の本に詳しく述べているため割愛するが、メーカーが海外で自社で造る部品あるいは安いからと言ってローカルで造らせた部品と日本の下請零細企業に造らせた部品とでは均一性、精度等において”雲泥の差”があるということである。

 ということで、パナソニックを始め、色んな企業が戻って来るのはいいが、これらの企業がただただ円安狙い、海外賃金の高騰対策で戻るとすると、まだまだ・・・なのである。
 日本に戻ったら、日本の中小零細製造業の部品を使うことが必要なのである。
 日本で造っても、海外から部品を取り寄せ自動化で造るのでは、真の”メイド・インジャパン”にはならないのである。

 もしも、メイド・イン・ジャパンが復活したら、日本の製品は以前の様に壊れにくく長持ちがし、どの製品も均一となり、当たり外れがなくなる。
 それと日本国内はもとより、海外のお客が”純日本製=メイド・イン・ジャパン”をドンドン買い求めることになり、「買った」、「良かった」、「また買う」の連鎖が起き、これがアジアを始め世界に広がって行くと、東京オリンピックの2020年頃には、”メイド・イン・ジャパン”の大復活が始まり、日本の経済は再び世界に君臨することとなる。
 
 しかし、その道程は決して楽ではない。
 各メーカーの経営者、あるいは政府のお偉いさん達の考え方の根底に「日本人のDNAには”モノ造り”にたいする基本的な好条件がもともと備わっているのだ”と云う確個たる信念がなければならない。

 私の二度に亘って書いた本は、正にそのことを日本の全ての皆さんにしっかり認識してもらいたくて書いたのであるが、残念ながら、ホンの一部の人にしか読んでもらっておらず、その目的は全く達成していない。

 しかし、このようなきちっとした考え方がないと、この混迷し続けている日本は、最終的に何も無くなって行ってしまうような気がするため、私としてはこうして何度でも叫ばざるを得ないのだ。

 これを読んだ皆様、是非、私の言っていることを理解して戴き、ご自分の周りの人達に、この事をお伝え願いたいと思います。

 宜しくお願いします。

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