今週の日経ビジネスの特集は、ドイツの特集であった。
ドイツは、今やユーロ危機が叫ばれる中で際立っており、世界一の経常黒字国となっている。
9月の総選挙で与党が勝利し、アンゲラ・メルケル首相は3期12年の欧州最大の経済大国の長期政権を担うことになった。
ドイツは、ユーロという大きな市場をの中で、賃金上昇を抑え、長期ビジョンに基づいた改革をブレずにやり遂げてきた成果が実っている。
反面、短期政権を繰り返し、何の有効的なビジョンもないまま来た日本は、実に20年もの間、景気低迷に苦しんできた。
いかに上に立つ者の采配が大事かということを、ドイツと日本を比べると歴然としてくる。
今、アベノミクスで円安・株となり、景気が良いように思える日本経済であるが、果たしてこの景気浮揚感はホンモノなのであろうか?
それは、極めて懐疑的と言わざるを得ない。
当社の量産ベースの低迷を含め、私の周りは、かなり厳しい状況に置かれている小さな会社が多い。
車の関係と一部の設備関係の会社は、大分景気がよさそうであるが、その他多数の企業は、生き残るのに汲々としているのが現状である。
円安・株高は日本の大企業にとってはかなりの経済的インパクトがあるが、我々中小零細製造業には、殆どその恩恵が及ばないのは、日本の中小零細は直接海外の得意先との取引きしている会社はごく僅で殆ど大会社の下請で生きており、その肝心の大企業は中国、タイの人件費高騰を受け、未だにミャンマーだ、バングラディッシュだ、ベトナムだ、フイリッピンが穴場だ・・と海外生産をすることが最も有効な手段だと思っているからなかなか日本に帰って生産しようと考える企業が多くなって来ない。
そこへ行くと、このドイツの中小企業は「ミッテルシュタント」と呼ばれ、それぞれ小さいながらもパワーがあり、直接海外との取引を積極的に行い、何と大企業並みのペースで成長し、付加価値の総額が大企業より高いという、日本では全く考えられないような状態なのである。
日本の中小零細製造業は、大企業の“下請”として生まれ育ってきた歴史があるが、ドイツは小さくても一個の”メーカー“として生まれ育ってきたということであろうし、ユーロ経済圏が出き、ユーロ圏内の各国への輸出が容易になったことも大きく影響しているかと思う。
さらに日本と異なるのは、1~19名位の零細企業は日本のようには多くは無いが、高収益であり、圧倒的に多いのは中企業であり層が厚い、また一極集中せず、地方に分散しているということだ。
このように、ドイツの中小企業は非常にスキルが高く、自立心も高い。
日本の中小企業は、ドイツに負けない素晴らしいスキルを持ちながら、下請に甘んじてしまっている。
また、大企業は、ただただ”小さい”と云うことだけで、そのスキルは認めてもその会社の価値は認めていないため、日本の殆どの中小零細企業は、よっぽどのことが無い限り、大きくはなれないし、高収益会社にはなれない。
私が最近書いた『2020年 東京五輪開催の年に メイド・イン・ジャパンが復活する!!~中小零細企業の活性化が”メイド・イン・ジャパン“を大復活させる』は、大企業は生産拠点を賃金が高騰する中国、東南アジアから少なくとも”地産池消“を基本とし、日本で販売するものは日本で造るべきだ。そして、日本の優れた中小零細企業を下請けとしてではなく、パートナーとして使うようにすることが、”メイド・イン・ジャパンの復活“につながるのだ・・・と云うことを、色んな角度から見て、実証した本である。
ドイツでは、既に中小企業は大企業のパートナーとしてのみならず、自力で他国に販売し、収益を上げるような体制が出来ているということであり、なんとも羨ましい限りだ。
・・・と同時に、日本の我々中小零細企業もドイツを見習って、大企業の下請けに甘んじることなく、海外との取引を活発化し、日本の大企業はきちっと、中小零細の技術を認め、単なる下請けではなく、パートナーとして、それなりの対応をすべきである。
私の書いた今回の本は、奇しくもこの事を言っていた。
実際、日本の中小零細企業が海外から注文を取ると言っても、日本の場合は言葉の問題から始まり、海外貿易の基礎が構築されていない上に、関税の問題、輸出入経費の問題等、環境的には殆ど無理な状態がある。
どうしても、ここは大企業が海外生産の〝イタチごっこ”を止め、生産の国内回帰を促進すべき時である。
そして、優秀な日本の中小零細企業の部品を使い、”メイド・イン・ジャパン“を復活させることが、将来の日本の経済発展に必ず繋がるのだ・・・と言うことを強調したのが、今回の本の趣旨だ。
是非一一読願いたい。
そして感想をお聞かせ願いたい。
ドイツの中小企業については、この本の下巻で詳しく書こうと思っている。