会長の部屋:岡山県津山市での講演-

 これまでの講演で一番遠いところは大阪だったが、今回は佐久平から7時間弱、岡山から1時間ほど入った津山市の商工会議所さんで呼ばれ、講演をした。
 講演内容は先般の信大とほぼ同じ内容だったが、今回の講演の演題が「倒産の危機から脱し、コイル技術世界一の会社を目指す!」ということであったので、特にいかにこの会社が大変な状態であったか、またその危機的状態をどう乗り越えてきたかを話した。

 確かに今からヨクヨク考えてみると、あの売り上げが殆ど無い状態から良くここまで来れたなぁ!という思いがする。
”無我夢中”ということだったかと思う。
 当時の従業員も良くまあ頑張ってあの困難な時を乗り切ったと思う。

 私の講演で一番強調したい点は、「日本のモノ造り文化」ということである。
 島国、農耕民族、何も言わなくても気心が通じ合う世界で稀に見る特異な民族、助け合いの精神がDNAレベルで受け繋がれ、自分の現在の職業を天職と捉え、悪条件、悪環境下でも文句も言わずコツコツコツコツやる人々・・・・これらの特性は他の国がどんなに逆立ちをしても得ることのできない大変特種にして稀有のモノなのだ。
 特に”モノ造り“というひたすら手を抜かずコツコツコツコツやるしか他に方法のないアイテムにとっては大変に重要にして有効な特性なのだ。

 資源もなく、島国日本は海外から入った素材に手をかけ、他ではできないようなモノを造り、世界の必要とする人達に提供して行くこと・・・これこそが”メイド・イン・ジャパン“であり、日本が世界に誇るべきものなのである。

 バブル崩壊後の大企業はこぞって日本を捨て、海外生産に走ってしまったことで、このメイド・イン・ジャパンというブランドは特に家電製品、デジタル製品等の分野では壊滅的な状態となり、韓国や台湾にに抜かれ、中国に追いつかれ、日本のメーカーとしての地位は殆ど無くなってしまった。
 
 それは考えてみれば当たり前のことである。
 いくら日本の企業だとはいえ、中国とか東南アジアでのモノ造りは決してメイド・イン・ジャパンにはなり得ず、メーカーが自覚しているか否かは分からないが、確実にその品質が落ちているということである。
 品質が落ちたことに加え、韓国、台湾、中国は日本のモノ造りを学び、日本とほぼ遜色のないモノを造れるようになってしまった。
 そこには最早日本としてのプライオリティは全くなく、ただただ安いか否か?という価格合戦の世界が広がるだけなのである。
 価格合戦になると、日本国内に本社機構があり、莫大な固定費が付いて回る日本のメーカーは絶対的に不利となる。
 また昨今の経営者がサラリーマン化(オーナー社長ではない)しており、重要決定事項は全て合議制、稟議制をとる今の機構の下では、決断から実行までが超早い中国や韓国にはとてもとてもかなわない。
 
 日本が他の国に勝てる唯一の方法は、他の国では造りたくても造れないような”良いモノ“を造ることしかない。

 それには、大企業の力だけでは無理で、日本の我々中小零細企業を使うこと、それも以前のような下請、子会社に対する隷属的な使い方ではなく、パートナーとしてそれなりの対価を払い末永く付き合うような“姿勢”が必要となる。

 日本の中小零細程、いじめられ、虐げられてきた歴史を持つ国はない。
 大企業は、Q,C,D,の三拍子がそろわない会社にはまず発注しない。
 納期、品質はランク付けされ貼りだされ、ワーストが続くと転注される。
 品質は特に、”魔の抜き取り検査”があり、これに引っかかると、良くて全数返品、ラインに支障があると呼び出しがかかり、人数を繰り出して、その場で全数選別をさせられる。
 私などは、課長時代、”選別課長”と呼ばれ、しょっちゅうアチコチに選別で飛び回った。
 価格はライバル会社と競わされ、大量受注になればなるほど、利幅が少なくなり、モノによっては完全に足を出してしまう場合もある。
 そうやってしごかれしごかれしながら我々はどうやったら、完璧に不良がない製品を造るかを学んできた。

 海外のローカル下請に対し、もしこのような過酷な扱いをしたら、即引き上げられてしまうだろうし、海外に一緒に出た日本の下請に対して日本と同様な扱いは恐らくしない。
 日本人は海外に出ると非常に結束力が強くなり、また海外では親会社だから下請け会社だからというよりは、日本人同士の”同朋”意識が強くなり、何か問題があっても、日本にいる時の様には厳しくできない。
 また社内生産に至っては、最初はそれまでの日本で管理していたと同じような品質を求めるかと思うが、いくらやっても上手く行かないと分かると「まっいいか!」感覚が生まれ、結局は中パッパ状態のモノ造りがまかり通り、公差ぎりぎりの部品、多少公差を外れている部品を使うことが普通になり、結局は今国内にも出回っているような大変壊れやすい”粗悪品”が日本のメーカー品として横行しているのである。
 このような品質では、韓国、中国と戦っても、ただ高いだけで何のメリットも出ないのである。

 日本は少なくとも、マザー工場的に日本で量産品をある程度造り続ける必要がある。日本で量産しながら、”改善・改革”をドンドン推し進め、これを標準化し、これを海外で極力同じような管理,造り方を確立しメイド・イン・ジャパンあるいは少なくとも”準メイド・イン・ジャパン”位の品質を保つことが日本のモノ造りの最低条件なのである。

 このような講演をした後、昨日の打上げ交流会は、次から次へと名刺交換しながら話に花が咲き、結局、殆ど出てきた食べ物には手を付けられず終いとなり、ホテルに戻ったが、やはり空腹のため1Fのレストランへ行き美味しそうなどんぶりメニューがあったため注文した。
「ひまつぶしください!」と云ったら笑われた。
 ”ひつまぶし”と云うウナギを小さく切って最後はお茶漬けで食べるどんぶりだった。
 私も講演の後、お腹が空いて何もやることが無く”ヒマ”だったため、「ひまつぶし」と読めてしまったのだった。

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