30年ぶりの栄冠「ホンダF1 最後の戦い」~NHK BS1スペシャル~

2021年、ホンダは今シーズンでF1レースから撤退する、これが最後の戦い。
「絶対に負けられない!」・・・技術者たちの執念が爆発的なパワーを生み出す。

2020年10月、ホンダはF1撤退を決定。
この撤退の知らせは、パワーユニットの骨格から見直すという画期的な開発途中だったホンダのチームにとっては衝撃的な通告だった。社長と掛け合い、このパワーユニットの開発を前倒しすることの許可を取った。
金属の3Dプリンターを駆使しこのパワーユニットの骨格を半年で造り上げ、また強度を増すために、鋳造を堅い金属の削り出しに替え、この新骨格はこれまでよりかなりパワーアップしていた。
オールホンダ、全社体制での開発だった。特に試作部門、シリンダーの強度を鋳造からアルミ合金の削り出しに変えた。長年培った技術の蓄積がこの短期開発を成功させた。
成功のトークの中に“サプライヤー”という言葉も聞かれたが、間違いなくどこかの中小零細企業の技術が入っていたのかと思う。

6年前の屈辱的な敗退からの復活を目指す。
既に4度の世界チャンピオンをとっているレッドブルがホンダの技術に興味を持ち、2019年、ホンダと提携することになっていた。
絶対王者ハミルトンに挑む若き獅子フェルスタッペン、そしてこれは7年連続王者に輝くメルセデスとレッドブル・ホンダとの闘いでもあった。
山本雅史、田辺豊治、中村聡、浅木泰昭等の技術者の面々は、これに全てを掛ける。
スタートダッシュのローンチが難しく、順位を下げてしまう。
ローンチとは、アンチストールといってクラッチに繫いだ時にエンスト防止のためドライバーの意志に関係なく自動でクラッチを切り離してしまうようになっており、車が前に進まなくなる。
この影響でフェルスタッぺンはパワーのコントロールが出来なくなり順位を4つも下げてしまったことがある。メカは運転手の操作に正確に反応する必要があるのだ。
ローンチ時は、チャンバーという空気を貯める部分から勢いよくピストンに送り込むため、このチャンバーの容量を増やす必要があったのだ。
レッドブルの力が必用となり、ホンダとレッドブルとのコラボレーションが始まった。
レッドブルチームは、このチャンバーの管を普通の倍の長さにしてこの問題を解決した。
市街を走るモナコグランプリがその重要なレースだった。急カーブで低速にしてから高速にする場面が多いためこのローンチが重要となる。果たしてフェルスタッペンは圧勝だった。ホンダにとっては29年ぶりの勝利となった。

タイヤ交換も重要なポイント。
ソフトタイヤ、ハードタイヤ、ミディアムタイヤと3種類のタイヤを2秒以下で交換するチームがついている。

6年前間にはボロボロだったホンダが首位争いをしている。
過去の口惜しさをバネにし、MGU-Hというパワーユニットの改善をする。
パワーユニットはガソリンエンジンとモーター発電機のハイブリット。

いよいよ2021年の決戦
フェルスタッペンとハミルトンとのデッドヒートはすさまじく、第14戦ではどちらも譲らず、2台ともコースアウトしたりした。
直線コースで赤いランプが点くかつかないかがバッテリーの効率の違い。
高出力バッテリーが栃木のHRD Sakuraで8年間に亘って開発された。
この高出力バッテリーユニットはリチウムイオン電池にカーボンナノチューブを使ってパワーアップ。
2022年の完成予定だったが、2021年F1の参戦撤退の発表で1年前倒しとなり、撤退が決まっても陰で研究を進めていた。それを支えた上司が居た。
橋水純一氏がこのESSという新バッテリーユニットの責任者。40%パワーアップした。一週で0.1秒の違い。
「できない理由は言うな!」「出来るまでやれ!」がその時の合言葉。

2021年8月に完成。16戦は10月10日、しかし日本の鈴鹿サーキットがコロナで中止、結局トルコでのグランプリとなった。
20歳のルーキー角田佑毅が8週に亘り後方スタートのハミルトンの前に立ちふさがり、フェルスタッペンを助ける。その後レッドブル・ホンダのセルジオ・ペレスが立ちふさがる。結局、チームホンダで助け合い、フェルスタッペンは4番手でハミルトンにはなかなか追い抜かせなかったため、フェルスタッペンは2位でゴールし、メルセデスには勝てた。

本田宗一郎は、ホンダの技術向上を目指しF1に参加した。
若いスタッフの養成をした。ホンダは若い人達がエネルギッシュに活躍する会社。
ホンダはエンジンの改善もした。偶然の発見であったが、プラグ点火の火が上だけではなく、下からも燃え上がるパワーアップしたエンジン。
「人の真似をするな、やるなら独自のモノを考えて勝負しろ!」が本田宗一郎の言葉、その通りのエンジンが出来たのだ。

その後、ハミルトンは新エンジンを投入し、19戦、20戦と連勝。
ホンダ側も、エンジンを点検整備する。
21戦、両社一騎打ち、両社相譲らず接触し、フェルスタッペンがペナルティとなりハミルトンが3連勝。
最終第22戦「アブダビグランプリ」は二人全く同点で迎えた。
レースはハミルトンが早い、残り20周で差が17秒、このまま終わりかと思ったら、たまたま周回遅れの車がクラッシュでイエローフラッグ、全社速度ダウンで差が詰まった。その間フェルスタッペンはソフトタイヤに交換し、最後の一周に賭ける。
見事、フェルスタッペンがハミルトンを抜き去り、劇的な優勝。
まるで、映画のラストシーン!

ルーキー角田祐樹も4位で終わった。
有終の美を納めた。
諦めずに続け、執念を燃やしたホンダとレッドブル、レーサーと技術者たちの勝利だった。

<感想>
対象があまりにも当社とは違うため、意見を言うこともおこがましいという感じだが、ホンダの各面々のF1に賭ける情熱は間違いなく伝わってきた。
特にF1という、世界的な大レースでの勝利という目標、そしてその挑戦も最後になるという追い詰められた状態での開発は、我々が納期に追われてどうにか間に合わすというような生易しいモノではなく、極限状態での葛藤だったと想像される。
私の持論に、“開発”は実際にモノを造っている現場でしか生まれない・・・という考え方があるが、このビデオでも全ての発想はモノ造りから生まれている。
まず、必要となるニーズは、F1ドライバーの“現場”から出て来た。
ローンチ時にエンジンが一時的に作動しなくなる不具合は、様々な実験・検証の果てに、空気の入れ込む量の問題だと判り、レッドブル社と協働し見事解決する。
プラグの点火時のシリンダ内の火の燃え上がり方も実験時に偶然判ったこと。 またバッテリーの改善は、カーボンナノチューブを使用するという、これはあくなき探求心の産物だ。
いずれも、机上の3D画面からだけでは得られない発見や技術。

私は、ただただ安さを求めて海外に出、海外の方が安く開発できるというような考えを持つメーカーには、本当の意味の新しい発明は生まれないと思っている。
開発はタダの閃きだけでは生まれない。コツコツコツコツ・・気の遠くなるような繰り返し、繰り返しの果てに、偶然だったり、ちょっとした閃きから生まれるものだ。
これは、日本人に備わった独特の特性、そして開発者の信念の強さが必要になるのだ。

思えば、当社の高密度圧縮コイルの開発も、かなり追い詰められた状態から生まれた。
得意先から占積率90%以上と言われて、巻線で87%までは頑張ったが、それ以上はどうやっても無理だった。
ここで諦めるか?どうするか?
・・・という時に、当社の技術スタッフは、コイルを潰す・・というタブーの方式を取ることを選んだ。
かくて圧縮コイルという全く新しい概念が生まれ、納入実績を積み、その後「圧縮・成型」コイルが生まれた。

ホンダ社で、社長に直談判したり、隠れて開発していたりというようなちょっと間違えば、首か左遷か?というサラリーマンにとってはかなりのリスクを抱えながらの開発であり、凄いことだったかと思う。
しかし自分の信念に基づいて開発し続ける、そしてそれを最終的には認める社風が、このホンダ社にあったということが素晴らしいと思う。
これは間違いなく、次の時代に伝わるものだろう。

ソニーも昔は、自由闊達な雰囲気から新しいモノを産み出す元だったのが、一時普通の会社になり下がってしまったようだが、最近はまた以前のソニーが戻ってきたような話をあちこちで耳にする。
日本は、やはりどこにも負けない”モノ造り力“で、世界の頂点に立つべきだと、私は思う。                                    

以上

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第90回サンテラスロビーコンサート

丸山晩霞記念館企画展「水彩の明星」コラボコンサート
「心にしみる音」 By 神原恵里子& 近藤聡

丸山晩霞画伯の水彩画に魅せられて思いついたというドボルザークの新世界から始まったピアノとヴァイオリンのコンサート。
静かに荘厳な雰囲気の中で始まった。
神原さんの優雅で落ち着いたトークも秋の気配満載の東御市のサンテラスロビーに流れた。
3曲ほど済んだところで、近藤さんの例の大阪弁のトークが入った。
「今までしゃべるなと止められていたんですよー!」
・・・と一気にまくしたてる。
「サイン、コサイン、タンジェント、微分、積分、ええ気分!」・・・と、お得意の自分が数学の教師であることを紹介しながらの名調子に、会場は一転して寄席の雰囲気に変る。
しかしまた演奏が始まると、神原さんのピアノに乗せた近藤さんのヴァイオリンの音色は、聴いている人達の心に響く、このコンサートのテーマに合わせれば、“心にしみる”
演奏が終わると、また近藤さんの止まらないトーク、私は一番前の席で大笑い。
時々、近藤さんが神原さんをいびるのだが、神原さんは全く動じず平然とマイペース。
この二人のやりとりは、近年になく面白い。
ちょっと分析をすると、この二人は、それぞれ自分の音楽、自分の生き方が確立されており、相手に気を遣うことも無ければ、相手におもねる必要もないため、正に「マイ・ペース」なのだ。

神原さんは、元々はクラシックから始まっているが、これまで軽井沢星野リゾート、ブレストンコートでの2000回以上の演奏で、新郎、新婦を魅了しながら様々な曲を弾き演奏テクニックを鍛え上げて来ており、加えて、ポップス、歌謡曲、その他の様々なジャンルに挑戦、そして、ソロ、デュオ、バンドと演奏形態もこだわらずに何でもこなしてきて、自分なりの音楽を作り上げてきた人、そして近藤さんは、4歳からヴァイオリンを習い始め、信州大学交響楽団の学生指揮者と依頼演奏のコンサートマスターを歴任し、コロナ前までは、長野県内のみならず、札幌、大阪と全国を飛び回り、過去には、ウィーン学友協会やブタペスト宮殿、イタリア会館等海外での演奏も経験してきていて、トークの軽快さとは裏腹に、凄いヴァイオリンの奏者、そして彼の口笛はアメリカの大会にも出たほどの腕前=口前?であり、ヴァイオリン演奏と共にこの口笛も聴きものだ。
大阪の出身で今は東御市に住み、予備校の数学教師をしている。
私もスタジオをやっている関係から、色んなセミプロ演奏家と会ってきたが、彼のような演奏、口笛抜群、口八丁のトーク最高の人は見たことが無い。

この音楽的に、人間的に確立された二人の個性がそれぞれ輝いて、ぶつかり合い、協調しあいする様は、見ている人達を完全に魅了する。
これが普通の演奏会であったら、会場はいつもの普通に良かった演奏会になったと思うが、この静寂さとハチャメチャ感溢れるトークのコラボは、その”落差“が生み出す、不思議なハーモニーによって見ている人を魅了したのだった。
“笑う”、“泣く”という人間だけに与えられた感情・・・
これを操れる人が、映画で言えば大監督であり、小説家で言えば、大作家であり人の心を大きく揺さぶるのである。近藤さんのトークで大笑いした後、お2人の素晴らしい演奏が始まると、その揺さぶられた感情が、そのままストレートにその音楽に移入され、ピアノとヴァイオリンの調べに酔いしれてしまうのである。
だから、あの会場に来た人は、皆さん、この演奏会に酔いしれたのだ。


・・・ということで、私のこのコンサートについてのコメントを終わりますが、今回のお二人の演奏についての私の分析は如何だったでしょうか?

このコラボ演奏会は、途中から時節柄、ハロウィンの衣装替えもあり、曲は葉加瀬太郎の「ワイルド・スタリオンズ」、ジョージ・ウインストンの「あこがれ/愛」、鬼滅の刃の「紅蓮華」、「この道」、「千の風になって」等々…どれもそれぞれ素晴らしく、ピアノとヴァイオリンの音が、秋の東御市の青空に吸い込まれて行くような演奏会でした。

2021年10月31日
                         

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超特性のセンサー用コイル巻線技術(量産対応)

ボビン巻完全整列コイル

コイルの電気特性は通常、抵抗値は±5%、かなり頑張って±3%の交差ですが、当社は抵抗値±1%を実現しております。(MAX150万個/月の実績)

同一製品内に入る2つのインダクタンス公差が±0.5%というこれまでにはとても考えられないような実績があります。(MAX100万個/月の実績)

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