会長の部屋:シン・二ホン…その一-

安宅和人著

この本は昨年2月に発刊されているが、私は最近この本を読み、衝撃を受けた。
当社では、毎日勉強会を開催しているが、その一環としてこの本をとりあげた
私はいままで日本は、世界に誇るべき「最新技術」を持つ国、「先端技術」の国と思っていたのだが、全く違っていた。
この大変な技術革新の時代、とりわけ情報革新の時代の20年間、日本はこの科学技術分野において、そして他の産業においても、かなり遅れを取ってきていることを知らされたのだった。
安宅氏は「これからも日本が、ある程度以上に豊かな国で居られるか」という問いについていえば、ほぼNOという答えがでてくる。ここまで見てきたとおりの現状で、このまま経済的な推進力を失ってしまえば、この国はそれ程遠くない未来に半ば中進国になることが見えているからだ。」…と云っている。
また、「自分を取り巻く現実を直視できないのは人の常だが、それにしても、この世の中の変化と意味合いをファクト(事実)に基づき、全体観を持って語る建設的な議論はとても少ない」…とも云っている。

 一章
 データ×Aiが人類を再び解き放つ - 時代の全体観と変化の本質

  誰もが、あえて出る釘になる
  決意をしなければ、
  時代はひらかれない。
           ― 岡本太郎

Ai×データ時代における日本の再生と人材育成
1、人対AI
  囲碁での勝負・・・AIの完全勝利
  AIは3週間で3000万回の対局が出来る
  方や、人間は一日一局30年で1万1,000局
  圧倒的な訓練量の違い

2、AIの能力
<識別>
  町中のセンサーで、即時に発砲地点を通報する
  顔画像だけで双子まで明確に判別する
  一筆見ただけで贋作を見破る
  世界最高レベルで皮膚がんの識別を行う
  動画を読唇する
  200mは離れていても心臓の鼓動で人を判別する
  歩き方から人物が誰か、認知症に羅患しているかを判別
<予測>
  電車の現在の状態を自動で察知し、問題がある場合は、事前に代替え路線を提案する
  人の購買欲の高さを予見する
  成功するスタートアップ会社を判別し予測する
  機械が壊れることを1ケ月前に予測する
<実行>
  複数言語の翻訳を瞬時に行う
  モノクロ写真に色を付ける
  モネやビートルズのような特定のアーティストの作品の芸風を学習し、酷似したスタイルで新たな作品を作る
  リアルタイムで表情と声を他の人物像に移し替える
  様々な物体のピッキング作業試行錯誤を通じ学習する
  乗車中360°を常時モニターし、周囲の交通事故に巻き込まれることを防ぐ

3、生産性
人類は2000年間で約二倍の効率になった。その後の100年で50~100倍に、これから数十年後にはもう一段跳ね上がるだろう➡指数関数的な驚異的な曲線を描く
・ディープラーニングは多用途には使えない➡用途に沿った大量データ/経験が必要
AIは、データが増えれば増えるほどその能力を発揮する。(上記の例)

4、AIとは、「速い計算環境、もしくは計算機(コンピュータ)に、情報を処理したりパターン学習したりするための情報科学技術(アルゴリズム群)を実装し、最終目的に即した膨大な訓練を与えたものだ
 早くいえば、「膨大なデータにより膨大なシュミレーションを繰り返した超高速計算機」…と云うことだ。
 マシンには人間のように経験から類推する力がないため、データがないモノ、少ないモノには使えない。

データ×AIテクノロジーの身近な例
 ①米国で100年以上同じ服を作っているリーバイスが、導電繊維を織り込んだジージャンをGooGleと共同で開発し、袖口をなでたり、タップしたリスルだけで音楽を聴けたり、ナビの機能が働くようなスマホ連動型のジージャンを2017年9月に売り出した。
 ②中国、アメリカの無人の店舗。➡お客は買いたいものを自分のバックに入れて店を出れば、スマホで自動的に支払いがされるシステム。
 ③中国のスーパーで、タグが紙ではなく電子インクで、商品の情報が記されており、スマホで読み取ると、更にその商品の詳しい情報が解る。
 ④米国のスタートアップの会社は、垂直な壁に野菜を植え、横からのLED照射により最小の農薬、肥料で野菜を育成している。季節性も、気候も超越し、都会のビルの中でも栽培が可能。
 その多くの仕事が機械に置き換わるため、私達は、より難しい問題に集中できるようになる。また、情報が素早く可視化されるため、意思決定が正確でスピーディーになる。

データ×AI活用の基本ループ
 1、サービス価値
 2、ユーザ数・ユーザ利用
 3、データ・状況把握
 4、アルゴリズムの性能が上がる
 5、打ち手の質の向上
このサイクルがぐるぐる回ることにより、学習が高まり、サ-ビスが飛躍的に向上する
・各分野では早い者勝ち。TQC等も本質的な影響を受けるであろう。
・データは持っている人と、それを必要とする人が繋がらなければ価値を生まない。
・個人情報漏えい防止ということで、データの拡散を規制する方向があるが、これは自社で様々なデータを持ち、それを1社で使えるメガプラットフォーマーのGAFAとかBATJとかが圧倒的な力を握る世の中となる。
・どこでもデータを繋がりやすくし、データの利活用をオープンに出来る国や市場が、人類の未来を産み出す“場”となる可能性が高い。
・またこの世界では、パーツの何もかもを自分で作り込む必要が無い
Uberは地図はGoogleに決済システムはBraintreeに、通話・SNS機能はTwilioに任せることでサービスを迅速に立ち上げた。これを”マッシュアップ”という。
何もかもブラックボックスにして競争優位にする時代は終わりつつある
・ソニーの新型aiboは,月々2980円取られるが、この各aiboのデータは毎日クラウドに送りこまれ、これをベースにアルゴリズムが進化し、またそれが各個体にフィードバックされるため、飼い主から見ると、aiboが日々進化しチャーミングな存在になって行く。
このaiboと同じことが、これから多くの商品やサービスに起こって来る。その商品やサービスは学習し、変化し続ける。つまり半ば生きている状態になる
テスラの車は「走るスマホ」と呼ばれる。
このようにあらゆるものがIOT化し、リアルタイムででメンテナンス、そして顧客対応が可能になる。これからは産業の多くのモノが複合機のようになり、各事業者はこれまでとは比較にならないほど顧客と長い取引をすることになる

5、キカイは分子レベルでデザインする時代
 分子レベルのキカイになると当然ながら、エンジンもモーターも不要。化学的なエネルギーで動く。(2016年にノーベル賞受賞=15,6年前から研究していたということ
 人間すらデザイン可能な時代になった。2018年11月に遺伝子改変した胚から本物の人間の子供が誕生した
 世界の重心が急速にアジアに戻りつつある。
 中国は遅くとも2030年までに米国を追い越して世界経済、情報科学のトップになる。
 インドも中国に続く。
 マイクロソフトのCEO,グーグルのCEOは共にインド系だ。
このような地政学的な重心の変化は日本にとっては千歳一隅のチャンスと云える。現在トップの米国と同盟関係にあり、次のトップとなる中国の隣国

6、未来の方程式
1900年のニューヨークの写真…馬車が沢山走っている。
1913年     〃    …車で溢れかえっている。馬の代わりに車の世話をする産業が一気に花開いた。
                たったの13年!
2007年にi-Phoneが生まれてから12年、世界のPCの出荷の7割がスマホになり、インターネット利用の半分を超している。(2019年)
アマゾン、アップル、アルファベット、フェイスブック、テンセント、アリババと世界の時価総額トップ10の企業の半分以上がスマホ関連業務を本業とするのは当然といえる。

質的に変わる富を生む方程式
テスラが企業価値でGMを抜いた。(今はトヨタも抜いた)…売上はGM、トヨタ、VWの1/30以下。
特に留意すべきは、これらのスタートアップ企業は、それまでのIBM,GE,ウォルマート等の巨大企業から生まれたのではないという事実だ。
全く見えないところから新しいゲームが始まり、そこに参加しなかったために、今じり貧となってきているのだ。
これは、極限的な下剋上の時代に突入している。オールドエコノミーのど真ん中にあった自動車産業で起きたようなことが、これからあらゆる産業で起きる可能性が高い。
これまでは「スケール」をとり。大きな売上、付加価値、そして利益を生めば企業価値に繋がることが、富を生む方程式だった。しかし、これからは、「未来を変えている感」が企業価値になり、これをテコに投資し、最終的に付加価値、そして利益に繋がるという真逆の流れになった

ld  Game             New Game

市場でのプレゼンス・寡占      未来への期待感・寄与

既存の枠組みの中での規模と     既存の枠組みを超えICT、技術革新を

効率の追求             テコに世の中をアップデート

既存のルールでのサバイバル     ジャングルを切り開きサバイバル

スタートアップには大企業のような信用はないが、逆に重荷になるような資産や組織が無い。必要な人員だけで成り立ち、お荷物になる人が居ない。
自由奔放に人や金を集めることが出来る

主要先進国は人口調整局面に突入
 これらの既に大きなシェアを持つ大企業は、この人口減少のマクロトレンドは負の方向に働くが、伸びしろの大きなスタートアップには、全く影響しない。企業価値の下剋上が起こりやすい理由の一つはここにある。
 アジア、アフリカも遠からず人口調整局面に陥って行く
 単にリアル空間でのスケールメリットの時代は終了した。技術をテコに世の中を刷新、アップデートできるような企業に事業価値が生まれるようになったのだ。
 電話、計算機、PDA(携帯情報端末)、iPodを全て統合し、iPhoneを産み出したスティーブ・ジョブズ、そして持続可能なエネルギーの世界を創るというイーロン・マスクのように、「妄想し、カタチにする」ことが冨に直結する時代だ。
 企業価値はハード軸・実数軸を中心とした規模間の世界から、データ、AI,ロボティスクのような情報・新技術をベースにした虚数軸を掛け合わせた世界、すなわち“複素数平面ゲーム」へと移行したということだ。
 モノ・カネ(実数)…トヨタ、GM,ExxonMobik等
 データ&AI/Robot(虚数)…Apple,Microsoft,Alphbet,Facebook,Amazon,Tencent,Alibaba等

 ウェブ上でも、昨今の新聞、雑誌等は、『新しい技術』の話ばかりしているが、本当に技術だけを身に付けたら未来は生み出せるだろうか?
 答えは否だ。
 未来は我々の課題意識、或いは夢を何らかの技・技術で解き、それをデザイン、パッケージしたもの、すなわち「未来(商品・サービス=課題・夢×技術(Tech)×デザイン(Art)」なのだ。
 こんな課題を解きたい、こんな世界を産み出したい、そういう気持ち無しで、“手なり”以外の未来など生まれる理由がない。
 ここでは技術軸そのものの発展については棚上げしている。様々なAIの利活用のベースとなる「システム×データ×ハード」の進化の方向性はある程度見える。
 しかしどんな未来が創られるかは、我々がどのような課題にどう技術を適用するか、そしてどんな未来を描くかによって全く違うものになって行く。

デザインの新しい定義
 ソニーのウォークマンとアップルのiPodの違い
 機能的にはほとんど変わらないが、iPodは明らかに「描いた絵の大きさ」、「デザイン、それも画期的なクリックホィールによる操作性、iTunesに代表されるソフトウエアとの完全なる融合、デジタル音源の版権処理、それを流通させるためのビジネスモデルなど、全てが一体となったデザインだ。
 これからの未来を変えようと思うのであれば、デザインという言葉の意味を幅広く捉え直し、鍛え上げる必要がある。日本語の「デザイン」は意匠にとどまった意味になりがちだが、英語本来の意味合いに立ち返る時が来ている。
 技術の実装だけで未来を変えることは難しい。単なる技術オタクではダメなのだ。大切なのは、目に見えない特別な価値を生み出せるかどうかだ。素晴らしい世界を描き、領域を超えたものをデザインする力が。これまで以上に重要な時代となった
 この観点からも、習ったことをきっちりやる”マシン”的な人では、新しい価値を生み出しようがないということが分る。
 従来型の喫茶店とスターバックスの違いは何か
 人がいいなと思うことを先んじて感じ、それを自分なりに表現できる人が重要になる。言葉でもえでもいい、両方あるとさらに良い。そういう「目に見えない価値を創造し生み出せる人を育てたり、自分もなれるようにする必要がある。
 新たな価値観(夢)とそれを形にする力(デザイン)が我々の未来の価値を生み出して行くもう一つの力になる

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