会長の部屋:シン・ニホン・・・その2-

「第二の黒船」にどう挑むかー日本の現状と勝ち組

1人負けを続けた15年間
1、世界の企業ランキング・・・平成初期には上位の多くが日本企業は、現在では中国はおろか韓国にも大敗している。
日本企業は今でもスケールゲームにいそしみ、新しい技術をテコとした刷新、産業の創出に出遅れている事、仮に取り組んでいたとしても市場に上手く伝わってないことを指している。

2、GDP・・・世界的にアップグレードしている中、日本だけが伸ばせないという衝撃的な状態が25年くらい続いている。特に最近のトレンドが良くない。人口が日本の2/3のドイツに並ばれかねない状況。生産性が2/3になるという言うことでG7国としても由々しき状況。

3、一人当たりのGDP・・・30位で1960年頃の水準に戻っている。30年前は主要国の中では1位であった。

4、一人当たりの生産性・・・長らく全く伸びていない=半ば1人負け状態。バブルのせいではない。GDPが伸びないのは、人口問題以前に「生産性」が伸びていないからだ。

バブル以降15年余り、世界では一気に生産性が高まって来たが、日本だけが大きく伸ばせ無かったということだ。
我が国は半ば1人負け、もしくはゲームが始まったことに気付いていないと言っても良い状況にある。

5、産業別労働生産性

他国の生産性は、日本と比べてコマース分野などは2倍以上、今極めて大切な情報通信分野も3倍前後、農林水産分野に至っては米国が40倍以上、人口密度で比較的近い、ドイツ、英国、フランスも10倍以上と極端な開きがある。
日本の大半の産業は、やるべきことをやってないだけで、未だ着手出来ていない宿題が沢山あり、伸びしろだらけの国ということだ。

6、産業別のGDP比率
日本はインターネット、モバイル、クラウド等ICT(Information and Communication Technonogy=情報通信技術)で負けたんだ)という声が随分上がるが、日本と米国の600以上の項目をフェアに比較してみたが、ICTと呼ばれる産業セクタがGDPに締める割合は、日米でほぼ同じという意外な結果が出た。

7、産業別のGDP成長率(単位:日本=兆円、米国=10億ドル、日本:1995年~2015年、米国:1997年~2014年)

*米国のその他は不動産賃貸:70、金融・保険:45、医療・社会援助:39、専門的・科学的サービス:24、事務・廃棄物管理サービス:22、宿泊・飲食サービス:11、その他:71
この二つの比較からも、ICT分野以前に、先の指摘した通り、日本の大半の産業はやるべき宿題をやっていないだけで,厖大な伸びしろがあることが分る。

埋もれたままの三つの才能と情熱

1、2人以上世帯の貯蓄状況の推移
2017年段階で単身を除く世帯のほぼ3世帯に1つ(31%)が貯蓄(金融資産)を持っていない。
1963年(日本の発展途上期)の22%よりもはるかに高い、1950年代の戦後間もない頃の水準。
約30年前までは、ずっと1桁代、1987年は3%で実質ゼロに近い水準。
いかに、貧困層の拡大が起きてきているかが分る。

2、主要国最低賃金
①ドイツ、②フランス、③英国、④カナダ、⑤韓国、⑥日本、⑦米国
日本は、カナダ、韓国にも抜かれた。
このままの状態が続くと、2035年には貯蓄を持たない世帯が50%を超え、見事な途上国(或いは貧困国)状態に陥る。
「この状態は、少なくとも3分の1近い才能と情熱が単なる環境要因によってきちんと発揮される機会がなく、埋もれている」可能性が高い。

3、国別男女別 労働時間内訳
「家事・育児」と「給与労働」の時間を国別男女別に比べた表で男性の「家事、育児」の時間は41分/日で11ヶ国中、最も少ない。
女性の「給与時間」は、272分/日で、こちらは他の国とほぼ同じ水準。
また、男女共に労働時間の一番短いイタリアと比べると倍以上働いており、11ヶ国中、最も長い。ちなみにG7の中で、一人当たりのGDPはイタリアは半分の時間で日本の9割くらいであり、イタリアの人達の方が、人生としてみれば豊かなのだ。
日本の男性の労働時間はイタリアの2倍、ドイツの1.5倍、中国やインドと加良部手も一日当たり60分以上も給与労働時間が長い。
明らかに労働のしすぎ、言い換えると非効率なのだ
1900年代後半、米国ハーバードの女性入学者が半分以上を占めた。プリストン大学は2020年の女性比率は50.8%。
方や日本の東大の女性比率は2019年でも17.4%に過ぎない。

4、死亡年齢分布
平均寿命
男:81.25年  女:87.25年 最も死ぬ人の多い年齢では、男:88歳、女:92歳。日本は世界屈指の長寿国であり、「人生100年時代」を迎えている
しかし定年は65歳、つまり最も経験値を積んだ熟練労働者は能力と関係のない理由でいきなり退場させられる。 日本は、20歳から80歳まで範囲を広げるだけで、3割以上の経験豊かな労働力が増える。
人それぞれ、元気な人はトコトン働くことが健康年齢をアップさせることにもつながる。
<著者の解決策>
①採用の際に年齢性別を問わない。
②給与水準は、労働時間ではなく、産み出す価値ベースとする。
③週5日に捉われず、週1日でも2日でも、1日Ⅰ~2時間でもOK。
④入社直後だけでなく、担当や役割が変わる毎に、本人の意欲があり道理にかなっていれば、十二分なトレーニングを行いプロフェッショナルとして育成する。
⑤ダイナミックな配置転換。一つの会社に縛り付けず、違う会社間の移動を認める。
⑥生産性を下げる要因は徹底的に排除し快適な職場を目指す。

5、GDPに占める人材育成投資比率の国際比較(OJTを含まず)

最大のリソースである「人」に投資することなしに、どうやって未来を産み出すことが出来るだろうか?シニア層に限らず、あらゆる世代、属性の人に対して、人の育成、再生にまとまった伸びしろがあることは確かだ。

国力を支える科学技術の急激な衰退

1、主要国の論文数シェアの推移
2016年、中国は化学及び技術関連の論文数で米国を抜き去り、世界一になった。それに控え、日本はインドにも抜き去られた
15年ほど前、東京大学は世界の名だたる大学の次辺りに位置していたが、2019年夏現在、世界大学ランキングでアジア6位、世界42位となっている。

2、計算機科学分野で際立つ遅れ
物理分野では、東大は世界第8位に入っている。トップ10で、米国が7校入っている。
しかし、今の世の中を変えている分野のプレゼンスは驚くほど低く、計算科学分野を見ると東大135位、東北大180位という惨憺たる状態。1位は精華大学で、中国がトップ10に4校入っており、米国、シンガポール2校づつを抜いてダントツだ。
同ランキングで他の分野を見ると、化学=京大22位、生物/生物化学=東大32位、数学=東大32位、宇宙科学=東大21位であり、計算機科学に対する日本の力の入れようが低いのが良く分る。
何故、日本は「データ×AI分野」で立ち遅れたのか?
≪その理由≫
①様々な所から多様なビッグデータが取れ、色々な用途に使えること。
②圧倒的なデータ処理力を持っている事。データ処理力とは技術でありコスト競争力だ。
③これらの利活用の仕組みを作り、回す世界トップレベルの情報科学サイエンティスト、そしてデータエンジニアリングがいるということだ。
まず①のデータについて
スマホ上のインターネットの世界は大きなデータを生んでいる。しかし日本最大級のインターネット事業会社のヤフーは日本では最大級のインターネット事業会社であるが、米国Googleや中国Baiduは一桁多い10億人前後にサービスを提供している
コマースの場合、楽天は国内最大のプレーヤーだが、同じくAmazon,Alibabaグループと比べればやはり一桁少ない。 ソーシャルの場合、LINEは国内では断トツでも、WhatsAppやWeChatなどと比べれば一桁少ない
またこれ等以外の領域でデータを利活用しようとすると、この国ではUber,Aribnbのような個人資産を活用するタイプのシェアリングビジネスはことごとく制限がかかっている。
既存業態を保護する目的で、いまだに国内での圧倒的なユーザ指示が無視されている状態だ
2015年当たりに米国の大学生の間でデファクトとなったvenmoという送金・割り勘サービスも、銀行業法の壁に遮られた。
このように日本は、ユーザ保護ではなく、既存業態保護行政のために、幅広くデータの力を解き放つことが出来ていない。
自動走行車も、日本の道は狭い道が多く、且つ双方向可能な道路が多く、すれ違いが難しいような道路が多く、実際に走るとなると難しいし、ドローンも高層ビルの間に平屋の家が有ったりして、極めて飛ばしにくい。
このように日本はそもそもAIに適したまちづくりをしてないために、データ取り込みと保護規制が仮に問題無くなったとしても利活用の壁は高い。

次に②のデータの処理力について
日本の産業用電気代は、ヤフーの実績値で米国よりも5~10倍高い。更に中国は米国よりも格段に安いと言われており、日本と数十倍のコスト差がある可能性が高い。だから、膨大な情報処理が必要なビットコインのマイニングは大半が中国で行われるのだ
また、日本にはビッグデータ系でグローバルに使われるような「技術プラットフォーム」が無い
…と云うことで、日本はグローバルに戦えるような商業的技術基盤がないうえ、データ処理を行うためのコスト競争力がないという状況で、勝負になっていない。

③のエンジニア、専門家のこと
この国には、大量データを処理するデータエンジニアリングに熟達した人材が足りていない。
実際、ICT業界の海外の大手プラットフォーマ―からは、「もっともデータ×AI人材が手に入らない国」、「日本だけ基準を下げないと人が採れない」などと言われている。


3、理工系の学生の数
人材が少ない理由の一つに、日本では大学進学者のうち理工系(医学、薬学を除く)が2割しかいないことになる。その結果、韓国と比べても10万人以上も大卒者で理工系の人の数が少ない。ちなみに韓国の人口は日本の半分以下である。
韓国やドイツは技術立国という意識が強く、大卒の3分の2近くが理工系で、日本とは真逆。米国の3分の1、ポーランドやルーマニアなどの数学大国から比べると1桁少ない
また日本では、2017年にようやく一つデータサイエンスに関する学位取得プログラムが滋賀大学に出来、この1~2年で横浜大学他で急速に立ち上がりつつあるが、米国では同2017年には既に500以上のデータサイエンスに関する学位取得プログラムが立ち上がり、既に人財供給問題にはケリがついている。
データエンジニアリングの基礎と云うべき計算機科学についても、米国トップクラスでは半ば学ぶことが常識となりつつあるが、日本は東工大ですら定員が年間100名ほどに過ぎない。
このような状態では、「日本の若者達は持つべき武器を持たずに戦場に出ている」ようなものだ
米国や中国ではこういうテックギーク(ネットオタク)達がMBAやロースクール出身の連中と一緒になって数多くの世の中を変えるスタートアップを産み出している。
Yahooのジェリー・ヤン、Googleを産み出したラリー・ペイジ、Facebookのマーク・ザッカ―バーグ、Teslaのイーロン・マスク…皆テックギークだ。日本には現れない。
日本の500万~1000万人いる実験を握るミドル・マネジメント層は、残念ながら、このチャンスと聴き、現代の挑戦の幅と深さを理解していない人が大半だ
またこの層にこそ、ビジネス課題とサイエンス・エンジニアリングを繋ぐアーキテクト(計画立案者)的な人財が必要だが、殆どの会社で枯渇している。
逆にこの人達が、日本のあらゆる産業の刷新を止め、AIネイティブな世代を引き上げるでもなく、この国を更に衰退に繫いでしまう。
ジャマおじ」、「ジャマおば」だらけの社会になってしまっている。


現在の状況は黒船来航時と同じ状況に

以上見てきた通り、今の日本は、データ、利活用、処理力、人…いずれの視点でも勝負になっていない。これは1853年の黒船来航時の時の状況そのものであり、当時の旗本(今で言えば霞が関の局長のような人達)と思われる侍たちが、外国人が乗り込んでくる姿を唖然と見ているような光景だ。
10年ほど前、マッキンゼーの戦略研究グループが、主要企業3000社に「事業の成長を決める本当の要因は何か」という話であった。そこで選ばれた要因は4つ。
①戦略、②実行力、③リーダー、④市場 だった。
そしてこの検討の結果「事業の7割以上が単一のファクター=『市場』によって説明できる」というものだった。
すなわち、どれほど優れた戦略、偉大なリーダー、そして実行力があろうとも、市場を間違えると、どうしようもないということだ。時代に逆行したことをすれば、どんな偉大な企業も沈んでしまうということだ
逆に言えば、時代の潮流に乗れば、ほぼ確実に成長できるということだ。これは前述の世界企業ランキングを見れば一目瞭然だ。
孫正義氏が、いつも言われるように「どこの山に登るか」が大事だ。
これほど、データ×AI化、テクノロジーとデザイン力をテコにした事業や領域の刷新という強い変化が世界的に起きている現在、この流れに乗らない手はない。自分たちはちゃんと大きなトレンドに反した動きをしていないだろうか?正しいスピードで進んでいるだろうか?
国も事業も常にこれらを確認することが重要だ。
「これからも日本が、ある程度以上に豊かな国で居られるか」という問いについていえば、ほぼNOという答えがでてくる。ここまで見てきたとおりの現状で、このまま経済的な推進力を失ってしまえば、この国はそれ程遠くない未来に半ば中進国になることが見えているからだ。」

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