会長の部屋:シン・ニホン・・・その3-

日本に希望は無いのか?

確かに日本はイケてない。技術革新の新しい波は引き起こせず、乗ることすらできなかった。企業価値レベルは中韓にも大敗。大学も負け、人も作れず、データ×AIの視点での三大基本要素のいずれも勝負になっていない。
戦後の高度成長期から今までで最も残念な20年だったと云える。

産業革命における日本を振り返る
第一のフェーズ:電気の発見や蒸気機関車などが生まれてきた100年間。日本は江戸時代末期で鎖国時代、黒船がやってきてびっくりした時代。
第二のフェーズ:これらの技術がエンジンやモーターに応用され、車や家電が続々と生まれた。
第三のフェーズ:これらの新しい技術が更に機械や産業と繋がり、航空システムやより複雑な生態系というべきモノが次々と生まれた時代。通信回線、通信技術、端末が繋がり合うインターネットもこの段階で生まれている。
このように見ると、日本としてはフェーズ1は経験したことが無く、フェーズ2とフェーズ3の勝者であった。 今、確かにデータ×AI化の世界では日本は大幅に遅れを取ってしまったが、この新しいゲームのフェーズ1は既に終わりに近づいている。
このデータ×AIのインターネット業界を見てみると・・・・
Amazon、Yahoo創業から24年、日本のヤフー、楽天が生まれて20年以上、これらの取り組みの中で生まれた大量なデータトラフィックをリアルタイムでさばくデータエンジニアリング技術は相当に広まり、自然言語処理技術や機械学習技術は空気のように使われており、今や一般の人ですらディープラーニングを口にし始めていることから、この世界のフェーズ1が終わりに近づいていることを示している。

これからどうなるのか?
前述の例に見るように、産業革命同様にフェーズ2、フェーズ3が来ることはほぼ間違いがない。
すなわち、これからフェーズ1で生み出された技術が、あらゆる分野、空間、機能に広まって行く。全ての空間、機能、サービスが半ば感覚を持ち、スマート化するようになる。何でもセンシングされるようになり、それに基づいて色々なモノが見えないところで最適化される。正にフェーズ2だ。

これからはあらゆるものがデータ×AI化して行く
更にこれらのスマート化されたモノやサービスはことごとく繋がり合って行く。この新しいエコシステムはリアル空間に重なり合い、インテリジェンスネットというものが、様々なレイヤ(層)や目的ごとに重なり合って行くだろう。リアルな空間ではないので何層でも重なり合うことが可能だ。
あらゆるものや産業が繋がり合う。食もモニター可能となり、例えば身体の内部の様子も可視化されるようになる。

AI化には入り口と出口がある
問題解決のフロー
入口(入力)…情報の仕分け
位置情報、音声(指示)、ジェスチャー、周囲の画像、加速度等々
様々な情報から活動のコンテキストと必要な指示・活動を理解する。(文脈・意図の理解)
出口(出力)…実際の産業の用途
健康=診断、学習=トレーニング最適化、住居=デザイン、設計、車=自動運転、事故防止等々
個別課題で実際の課題解決を行う

現在起きている変化の殆どが、入り口側の変化であり、扱う対象がデジタル情報であるデジタルマーケティング分野か決済領域に集中している。
ただ産業は、それが生み出す付加価値から見て分かる通り、9割方出口側に存在している。
ここが一気にデジタル化、スマート化しようとしているのが我々の置かれている局面だ。応用のフェーズはこれから始まる
これが正に、前述のフェーズ2、フェーズ3だということだ
入り口側の機能は業界横断型、すなわち水平的であるが、出口側は業界、もしくは機能に特化しているという意味で垂直的と云える。
垂直領域は深いドメイン知識(その領域に関する専門知識、知見)に基づく作り込みと、汎用性だけでないセミカスタム力がカギになる。日本の持ち味の一つである現場、顧客に寄りそう力が生きる時でもある
また出口側で何らかのAI的なソリューションを産み出そうとすると、AIの定義式からもわかる通り、正にその出口特有のデータが必要になる。
この出口産業ということになると、日本はほぼすべてのオールドエコノミーをフルセットで、世界レベルで持つ数少ない国の一つだ
これほど出口系を抑えている国は米国、ドイツ位しかなく、これは主要大国の一つであることの強みだ。
日本には相当のプレゼンス領域があり、かなりのまとまったチャンスがある
この国の産業的に持っている技術的な強みは、車、家、重電、ファインケミカル、ロボット、鉄、建築、土木だけではなく、計算機化で世界の先頭を走っており、モバイルインターネットも日本から始まっている。
出口領域としては、ライフサイエンスとデータサイエンスの融合は急速に進み、生命科学は今でも世界トップ3(米英日)の一つだ。
中山伸弥先生、大村智先生、大隅良典先生、本庶佑先生と4人ものノーベル医学・生理学受賞者を産み出している。
またハードの世界でも、カーボンナノチューブ、原子レベルの撮影技術などは、日本は世界のトップレベルの基礎技術を持っている。

まず目指すべきはAI-readyな社会
この数年、国と財界はSociety5.0に取り組んでいるが、これはフェーズ2論そのものだ
これまで狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会と発展してきた人類が、今起きているデジタル革新の力と我々の妄想力を掛け合わせた向こうに未来、(価値)創造社会があるというのがSociety5.0の掲げる絵だ。

Society5.0における価値創造
デジタル革新 × 多様な人々の想像/創造力
“AI-ready化”     多様性の内包
成功のプラットフォームとしての日本


「単にデジタル化を行うわけではなく、我々の多様な創造力、妄想力をテコにこのデジタル革新の力で世の中をことごとく刷新し、新しい価値を生み出すべき」ということをここでは掲げている。

Al-ready化
その答えは“AI-ready化”だ。
2018年 内閣府「人間中心のAI社会原則検討会議」、経団連「未来社会協創TF」、「AI活用原則TF」の集中検討が行われたが、ここでのAIと言っているモノは全て”データ+AI“の意味合いで使われている。
著者はこのすべての委員会に出席したが、ここで分ってきたことは『AI戦略などを語る以前の課題が極めて深刻であり、そこがボトルネックになっている』ということだった。そのボトルネックを解決さえできれば、日本の底力からすると明るい未来は充分に招き得るという見立てだ

AI-readyな状態にするための10のポイント
(1)目的・目指す姿
ただ単に人間の仕事を機械に置き換えて行くという想像力のない利活用ではなく、夢を実現するためにAIとデータの力をどう融合させ、自動化できるものは当然し、これまではできなかった新しい価値を生み出しているか?このような志を持っているか?
(2)扱える人材
必要な理数・データ素養を持つ人が限られ、トップレベルの研究開発能力をもつ大学や企業の専門家がいないと何もできない状況ではなく、理文を問わず高等教育を受けたすべての人が理数・データ素養を基礎教養として使うことが出来ているか?最先端を行う人の層も十分に厚い状態か?ちょっとしたチューニングは、中高生が新しい技術・家庭や工業科のクラスで学ぶことが出来るか?工業科、高専、専門学校などで多くの人が理数・データ素養を学び、街の電気屋さんのようにそこら中に応用エンジニアリングがいる状態か?
大半の会社にアーキテクト的な人財がいてベンダーに丸投げすることなく、事業の刷新,創造、運営の要を狙っているのか?

(3)対象となる分野、領域
既存のICT的な業界だけではなく、全ての業界がデータ×AI化し、あらゆるところで恩恵を受けているか?旧来のICTプレーヤーからしかデータやAIを使う試みが出てこないのではなく、データやAIを使う新しい試みが社会のあらゆるところから雨後の筍のように日々生まれてくるのか?
(4)作り込みのあり方
データやAIの力を使いたい人や会社が、何もかも自力で造ったり、特定のベンダーに丸投げしたりしなければならないのではなく、様々なAIをマッシュアップ的に使えると共に、コアエンジンについては各ステークホルダーが自分たちなりの磨き込みで競い合えているか?
ある程度の技術的な知恵は、ブラックボックス化せずに共有され学び合う状況が産み出せているか?
(5)データの利活用状況
人間の活動や環境、リアル空間がデータ化されていないのではなく、ウェブもリアル空間も含めてことごとくデータ化しているか?もしくはいつでもデータ化できる状況にあるのか?大体のデータがリアルタイムに使うことが出来るか?情報基盤がベンダー依存でなく、きちんとセイブされているか?
(6)市民/利害関係者のリテラシー
プライバシーとか市民の無理解が邪魔をしているのか?逆にリテラシーが高い市民が多く、プライバシー課題も整理され、個人が便宜を受けつつ、データが提供される関係が成り立っているのか?それをきちっと世の中に説明できているのか?
大会社だけではなく、小さなスタートアップでも現実的な対応が出来るか?データやAIは繋ぎ込まないと価値を生みだせないことを正しく理解できるか?
(7)データ処理力
処理コストが米国の5倍以上を解決できるか?大量データ処理が国内で出来るか?AI技術を十分に使いこなせる状態になっているか?ユーザを守りつつ、API含め繋ぎ込む整備や安全な流通のシステムが構築出来ているか?
(8)革新の主体と推進状況
AI推進層と保守層が完全に分かれ、AI推進会社と、旧来の会社に分かれてしまっているのではなく、AI推進層があらゆる分野の刷新の中心かつリードになって分野、業界を超えた再編、革新が進んでいるのか?旧来派が規制と既得権益を超えた再編、革新が進んでいるか?
新しい取り組みを行う場合は、建物どころか街も、マネジメントのあり方、評価、給与システムも変えてしまった方が現実的だ。
(9)教育システム
旧態依然の人材育成モデルではなく、理数・デザイン×AI、デザイン素養をベースに持つ境界・応用型の人材育成モデルになっているか?
学部学科制で才能の選抜、育成を行うのではなく、専門分野を横断し、経験を柔軟にミックスすることが可能な人材育成システムとなっているか?
(10)社会全体としてのリソース投下
未来を信じず、社会福祉、これまで通りの社会インフラばかりに目を向けるのではなく、未来を信じ、米中に対応し得る国力に見合ったレベルで、十二分にAI-readyになるようリソースを投下し続けているか?

以上、この革新期においては、新しい技術の利活用に対する心構え、人づくり、人の活用、データ環境の整備、市民の意識、データ処理能力に至るまで質的に刷新して行く必要がある。
国・企業レベルで言えばともかくにもまずは正しい市場に乗ることが大切だ。

AI-ready化された企業とは
これを企業や組織側にどのように適用し、どのような状況を目指していくべきかの目安についても、経団連AI活用戦略の中のAI-ready化ガイドラインで5段階に整理した。
レベル1
AI-ready化以前の状態。AI革新に着手してない。
レベル2
先端的な旧来の大企業のレベル/初期のネット系スタートアップのレベル
レベル3
中~大規模なインターネット企業の多く、AI×データの利活用に着手、取り組みは既存の人間の仕事を機械化することが大半。
レベル4
先端利活用企業。AI×データの力を使うことにより、コア事業でこれまで不可能だった夢や課題を解決している企業。未来を信じ、AI-readyになるまでリソースを投下し続けている。
レベル5
Alibaba group,Alphabet,Amazonなど、全ての事業、機能がデータ×AI化し、業界そのものの本質的な刷新を心がけ、変容を引き起こしている。国内外の競争に対抗できるレベルでAI-ready化に向けて資源を投下できている。
新しい試みが、あらゆるところから日々沸き起こってきており、常に世界の最先端をリードしている。

2019年2月の状態では、日本の企業は大半が「レベル1であり、その後1年経っても、未だに未着手の企業が多い。

株式会社セルコ

〒384-0808 長野県小諸市大字御影新田2130-1


TEL (0267)23-3322 FAX (0267)23-2233

株式会社セルコへのお問い合わせはお気軽に

お問い合わせ