大谷選手が、決勝戦前の円陣で「(相手)に憧れるのをやめましょう。憧れてしまったら超えられない。勝つことだけ考えていきましょう」と言った。
出場チームの年俸からするとアメリカ選手は日本選手とケタ違いであり、大リーガーは日本の野球選手にとっては間違いなく憧れの的だろう。
ちなみに今回の日本の出場選手の年俸合計はアメリカの選手の1人分にも満たない。
今後、大谷選手がそのクラスの年俸にはなるが、これまでは日本人では最高の6億円だ。
大谷選手は、そんな憧れの大リーグの選手達に対し、もし日本の選手が位負けしたり、気持ちで負けてしまっていては勝てないという思いからの発言だったかと思う。
試合はその言葉と通りだった。
誰一人として臆することなく、投げ、打ち、走り、打球を追った。
その結果のWBC優勝だった。
この話を聴いて、私はどこか我々中小零細企業と大企業との間にも同様な関係があるのではないかと思い、これをブログに書き留めておくことにした。
我々中小零細企業にとっては、大企業はとてつもなく大きく恐れ多い存在だ。
像と蟻、巨大タンカーと手漕ぎボートの違いであり、とても太刀打ちできるようないのだ。
しかし、我々はこのような大企業と取引するに当たり、この決定的な規模の違いに打ち勝つ必要がある。
これが大谷選手の言う「憧れの封印」に繋がる。
通常、我々中小は最初から大企業には勝てないと思っている。
野球と違い、大企業は「発注」という切り札を持っている。
ちょっと前までは、購買の担当者の一存で、ちょっとでも逆らったり、気に入らないと簡単に転注されてしまい、仕事が来なくなってしまうため、発注先の言うことには逆らうことはできなかった。
最近は、下請法のように中小企業を保護する法律が結構厳しくなってきているが、基本的にはその立場は何ら変わっていない。
だから、私が大企業に対して当然のこちらの権利を主張すると、「今までそんなことを言う会社は無かったです」とか言われたりするが、これは、大企業に対して多くの中小が泣き寝入りかそれに類する取引をしているのかと推測される。
小さい会社が自社の権利を主張するためには、何らかの武器が必要となる。
侍ジャパンがアメリカに勝つためには、それなりのパワーと技量が必要だったように、我々中小にも大企業と太刀打ちできる武器が必要なのだ。
太刀打ちできる武器・・・それは、「技術力」、「高品質」、「対応力」、「低コスト」などであるが、高品質とか対応力、特に低コストではなかなか存在感を示すことが難しい。何と言っても「技術力」だ。
他社ではやらない、他社ではできない特殊な技術、オンリーワン技術が無ければ、大谷選手やダルビッシュ選手無しでアメリカチームと戦うようなものだ。
私のことを言えば、私は常に意識して「大企業何するものぞ!」という気概を持って大企業に対応している。
だからと言って、別にけんか腰で対峙するわけではない。
極々普通で、きちっと相手をリスペクトしながら応対する。
ただもし、相手がただ規模の大きさを傘に着て発言したり、メールをよこした場合には、それ相応の対応をするということだ。
そのため過去には、理不尽な事項に対し、異議申し立てをし、取引が無くなった会社もある。
当社の最近は?というと、当社は顧客に恵まれ、余り私の出る幕もないが、新規顧客の中には、NDAを一方向で・・という会社があるため、これは双方向のNDAをお願いしている。
そんなことで、今回の大谷選手の「憧れ封印発言」は強く私の胸を打った。
ちょっと昨日のWBCの続きを書かせてもらうと・・・・。
昨日も言ったが、今回のWBCは、日本選手全員の総合力だと思う。
投手は、ダルビッシュ選手、大谷選手は別格として、山本由伸選手、佐々木朗希選手を初めとした若手投手が次々と出て来て、任されたイニングをピシャっと封じ込める。
そして打撃も大谷選手、不調だった村上選手はともかく、今回のムードメーカーとなったヌートバー選手、右手小指を骨折しながら確実な守備を見せ、打撃でも活躍した源田選手、そして、かならず塁に出てくれる近藤選手、ここぞという時にきちっと打ってくれる吉田選手、そして岡本選手、その他の下位打線やピンチヒッターの人達もヒット或いはフォアボールを選びとにかく塁に出たり、点を取り自分の役割をきちっと果たした。
この全員野球を演出したのは栗山監督であった。
大谷選手を呼べたのも栗山監督だからであろうし、ヌートバー選手に目を付けたのもこの監督。そして監督が言うには「全員、一流選手であり、色々細かい指示を出す必要が無く、それぞれがそれぞれその場その場の状況を自分で判断してやったため、私は何もしてない」と謙遜していた。
しかし、メンバーの決定からスタメンの組み合わせ、投手の起用、継投、ピンチヒッター、ピンチランナーの判断は監督の仕事であり、これがまた見事であった。
特に私が凄いと思ったのは、準決勝の時の村上選手に代打を出さずにそのまま「思い切りやれ!」とバッターボックスに立たせたことであった。
それまで不振にあえいでいた村上選手は、見事その期待に応えるサヨナラ打を放った。
また、ここぞというところでダルビッシュ選手とか大谷選手を使い、見事な見せ場を作ったのも栗山監督であった。
結局、素晴らしい一流選手が各球団から集まり、通常は「俺が、俺が」の世界になるところを、大谷選手のバントに象徴されるようにチームのため、日本のため、世界一になるために自分を抑え、それこそワンチームを作りあげたことは、後世に語り伝えられる素晴らしい功績となった。