会長の部屋:最近学んだこと-

ここのところ、色んなセミナー、工場見学、講演に参加して、新しい情報を得たため、ここに皆さんに披露したい。

まずは、3月3日上田東急インで行われた、長野県中小企業振興センター主催、ジェトロ共催の」「中小企業グローバル展開戦略セミナー」である。

第一部の方で「ラオス・カンボジア経済視察団」に参加された振興センターの下條専務から報告があった。

1、国際関係

2015年には、「AEAN経済共同体」が発足し、同時にメコン流域の国をまたぐ道路整備が着々と進み、物流の効率化が図られるため、これからどこで造り、どこで売るかの選択肢が益々増加してくるであろう・・とのことであった。

2、政治・制度

政府による税制面での外資奨励が盛んであり、輸入依存から自国内生産へ二次産業へのシフトのスタート地点であり、日系企業も年々増加してきている。

しかし、行政や法運用の不透明性は、他の新興国が辿ってきた道のりと同様様々な問題が横たわり、政情は比較的安定と言われるが、最近のカンボジアは、インドネシア同様、賃上げ闘争があり、少し不安が残る。

3、市場、需要

両国とも、人口規模が小さく、労働市場、消費市場もベトナム、タイとは違う。

少しずつ、富裕層が形成され、若年層の多さもあり、今後の市場の伸びに期待。

4、コスト

 労働力や土地が安い。ワーカーの賃金は、10数年前の中国程度。

 原材料や部品、製造機械の殆どが現地調達できず輸入品頼りでコストが高い。

 特にラオスは海が無く、他国の港湾と陸路を使わざるを得ない。

 電力

 ラオス:水力発電で、周辺国と比べ、安価で供給も安定している。

 カンボジア:60%以上を輸入であり、割高で供給不安定。

 結果的には、日本とあまり変わらない。

5、人的資源

 労働スキルは、未だ低く熟練労働力が不足している。ラオスは加えて高い離職率の問題がある。

言われたことはキチンとやるが、日本人の様に厳しくすると、叱られたと思い、辞めてしまう。

 労働力は、農村部には未だ潜在労働力があるが、その数には自から限界がある。大きな工場が出来ると、途端に労働力が不足する。

仏教国で、親日的である。

このセミナーの話を聴く限り、私の主張する“チャイナプラスワン”“新・新興国”への進出は容易ではないことが解る。

賃金が安いというメリットも、絶対的な労働力が不足しているため、賃金は驚異的な勢いで高騰する可能性が高い。

また土地は安いかもしれないが、インフラ的には、殆ど自力で整備する必要があり、トータル的に見た場合、それ程メリットがあるようには思えない。

また、労働争議は、これらの国は遅かれ早かれ発生し、カンボジアのみならず、タイからラオスへ進出した日本企業がこの労働争議でどうにもならず、ホウホウノテイで、逃げ帰ったという話もある。

“離職率の高さ”と云う問題は、結局、いつまでたっても品質が安定しない・・と言うジレンマに陥る可能性が高い。

次に愛知淑徳大学の学部長、真田幸光氏の「中小企業グローバル展開戦略セミナー」という講演であった。

この先生は、かなりはっきりモノをいうタイプであり、聴き方によっては、非常に分かり易い。

結論から言って、中小零細がこれからグローバル化で、新・新興国途に出て行くことは、お薦めできない・・・とはっきり言っている。

これは、大企業とて全くの同じことであり、言葉、通貨、法律、製造基準、会計基準・・それぞれが異なり、これらが、非常に大きなリスクになることが多い。

特に、為替の問題は、全く予測がつかないリスクである。マネー経済は実体経済の20倍規模であり、いつ何時、円高になったり、円安になったりするか誰も予想がつかない。

先生のグローバル化の定義というのが面白い!

先生は、「自社の強みの製品を、一番高く評価してくれる国、企業をと取引することが、グローバル化だと言うことで、何もリスクの高い海外に出て行って、他のコストの安い企業とローコスト競争をするのがグローバル化ではない・・・と言うことだ。

自社の強みで、他社にまねができなければ、値決めも自分のペースで決められ、取引も有利に展開できる。

日本に居ながらにして=雇用を守りながら、世界に売って(打って)出、外貨を稼ぐのが、また、あまり大量品を狙わず、少量多品種、高付加価値の製品を売ることが、これからの日本の中堅・中小企業にとって一番良い方向ではないか?としている。

日本が特に強いモノは

「インフラ輸出、核心部品、高度素材、製造装置、世界富裕層に対する高度耐久消費財の生産・販売、各地進出による各地耐久消費財の生産・販売、メンテナンス・アフタ―ケア」の分野とのことである。

先生のプリント中で、赤字で書かれた部分に大変良い“お言葉”があったので、紹介しておく。

「キーワードは、とにかく自力再生!」

「人にはできない力量、=無形資産=に究極の価値を見出し、人に頼りにされながら、社会のお役に立ちながら、胸を張って生きて行こう!」

「日本の製品や技術は今までのままで十分に凄い!世界に通用する。だからこそ、当面は技術輸出や人材の海外派遣による外貨獲得の可能性も模索すべき。」

海外展示会参加のコツ

「その業界で世界最大の展示会に参加すること」

「参加企業のリストアップをし、行く前にパワーポイントを作り、その企業に送り込んでおいてから、参加する、勿論、ミーティングのセットアップを事前にしておく→先手必勝!」

3月10日には長野テクノ財団、ア様テクノポリス地域センター主催で、「コマツ 小山工場 見学会」に参加した。

この会社は、世界中に売っている会社であるが、この販売比率は、見事である。

日本、北米が筆頭で各17%、中南米15%、アジア13%、オセアニア12%、中国7%、欧州、アフリカ各6%、その他7%と、世界中に万遍なく売っている。

売る地域で、車体は造り、社員の58%が外国人ということで、まぎれもないグローバル企業である。

しかし、この会社の“モノ造り”の基本は全くブレていない。

日本をマザー工場と位置づけ、開発と生産化の一体化を図り、日本での生産を非常に重要視している。

工場長が、「協力工場の実力の高さによる日本一極調達」・・・ということを仰ったが、日本国内に於けるモノ造りを中心として、各国の工場の面倒を見るとのことである。

改善活動が盛んで、1991年に200件そこそこであった提案件数は、今年は3265件に昇り、累計で約16万件となっているとのこと。

1月300件近く出される提案のうち、工場長審査に残るのは20件位とのこと。

但し、各提案には、きちっと回答を出すようなシステムが構築されているとのこと。最近は、特に”安全“に関する提案を奨励し、効果が出ているとのこと。

「海外の提案活動はどうか?」と私が質問したところ、「海外もやっているが、レベルはそれぞれです」との答え。

海外では、日本の様に従業員からの提案は、あまり望めないのではないか?というのが私の見解である。

この小山工場は、エンジンと、油圧機器の工場であり、この双方の工場を見せて貰ったが、4000名弱とのことだが、日本で久しぶりに、モノをガンガン造っている工場を見た。

1日に平均でも2組は来るという見学ツアーの担当の女性の慣れた説明を聴きながら、工場を見て回ったが、大体の概要は分かるが、詳しくは分からない。

とにかく、大型から小型の建機のエンジンや、シリンダーが、次々に完成品に向かって動いている様は圧巻であった。

生産技術は100名、外部指導は、以前にトヨタの改善を指導されたが、今現在は自社で独自でやっているとのこと。

“ダントツ品質”を目指し、工程にも、様々な工夫を凝らして品質を守り、安全を守る姿勢が随所に見られた。

技能検定があり、全員ではないが、かなりの人が技能検定者としちぇ名前が貼り出されていた。

その中に、指導員、世話人の資格を持つ人がおり、この人達が、新人や外国人の指導に当たるとのこと。

また、社内で年一の「技能オリンピック」があり、「ビギナー技能」、「一般技能」、「熟練技能」、「高度熟練技能」の4つのレベル技能を競う。

建機は、原則として2.5屯以下は電動、それ以上は油圧方式となる。

コムテックスという、独自の通信システムを使い、自動運転トラック等を動かし、24時間稼働とかも可能にし、稼働率の向上に強力なツールとなっている。

私も、今回の「2020年 東京五輪の年にメイド・イン・ジャパンが復活する(下巻)」で、このコマツを取り上げているが、トヨタを始め日本で強い会社は、日本での”モノ造り“を中心として、世界に展開しているというこの重要なポイントの確認をしたくて、今回このツアーに参加したが、間違いなく、この会社も”本物のモノ造り“を熟知し、実行している会社であった。

次の日は、先般のセミナーと同じく、上田市の東急インでキヤノン電子の坂巻久社長の講演があり、こちらも参加した。

坂巻社長の声が、非常に聞き取りにくく、耳を澄ましていたが、半分以上は聞き取れなかった。

プリントがあったので、こちらを中心に展開する。

今後の製造業にとって世界で勝ち抜くには

① すり合わせの技術を持つ→デキタルとアナログ技術のすり合わせ。

② 高度な機械的な機構を持つ→自動化、半自動化の推進。

③ 製造ノウハウを外部流出させない→製造装置は」出さない、見せない。

④ 高付加価値製品(製造コストが見えないようにする)。

⑤ 自社のコア技術力を発揮できる成長市場へ。

その他、

選択と集中→選択したら、長く持続して集中させる。

目標の明確化→小泉元首相の様に短い単語で周知徹底する。

経常利益は15%を目標とする。

物流コストの低減 現在は売り上げの0.75%。

モノ造りは決して学歴ではない キヤノン電子では、中卒、高卒の人が活躍。

社員には、自主的に自分自身で考えさせる

提案を出させ、やらせる→提案は決して拒否しないこと。

1/2のルール→コストは半分にすることを目標とする。無駄をなくす。

日本回帰をする場合は、早くやる→円安(103円~106円)が6年位は続きそう。

新規事業を始めた時が会社の危機となり易い。

キヤノンが50%国内回帰をし、国内調達を増やす。→長野県を中心に調査中。

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