会長の部屋:脱デフレで勝つ-

日経ビジネスの2014年4月7日号は「脱デフレで勝つ」というテーマであり、これはこれまでのいかに安く大量に売るか?という方向に対して、いかに高く付加価値を付けて売るか?というテーマの特集で、発想の転換のヒントとなる7つの企業を取り上げている。

①ダイソンのサイクロン掃除機 

 ダイソンは、一台平均2万円~3万円の高機能掃除機を9万円とか7万円のラインナップで売り、国内シェア10%を超えている。

ダイソンのコイルはタイの工場で当社が請負い、約1年間結構な数量を納入した。

自動化が出来る前まで・・・ということだったが、最初に見せられたサンプルコイルはいわゆるガラ巻といって、乱れた巻線でしたが、当社がきれいに巻いて見せ結局ダイソンでは、相当の金額をかけて整列巻きにしたようである。

それは別として、ダイソンは、これまでの「安く、安く!」の方向から、一転して革新的な技術を高く売ることに見事に成功している企業の代表と言える。

②米バイタミックスの7万9000円の家庭用ミキサー

普通のミキサーが1万回転のところ、このミキサーは3万7000回転し、パワーも2馬力と、日本製の3倍ある。

使っている材料も高速、高馬力に耐えうるような丈夫な特殊樹脂を用いている。

「とにかく高速かつ強力に回転し硬いモノも粉砕できるミキサー」というコンセプトで、価格のことは2の次にした戦略で、販売は好調ということである。

③米ゼネラル・エレクトリック社(GE)・・・アフターサービスの充実で高く売る戦略を考えている。

GEは製品が壊れてから直す一般的なアフターサービスではなく、製品が壊れる前に感知して直してしまう・・・というアフターサービスを目指している。

これはコマツのイントラネットサービスのパクリかと思われるサービスですが、やはり機器に通信機能やセンサー機能を付け、機器の稼働状況を収集し、故障の可能性を予測し対応するというモノです。

CEOのジェフリー・イメルト氏は「人件費の安い国を探し求める時代は終わった。これからは製造業の高度化が必要だ」と社内外に宣言し、人件費の削減だけを目的に新興国に拠点を移す方針を改める意思を示した。

この話は天下のGE社の話だけに、未だに「安さ」を求めて東南アジアをさ迷い歩く日本の多くのメーカーにとって大変重要にして貴重な話かと思う。

そうなると、これからの先進国のメーカーはとにかく革新に次ぐ革新が必要となる。

GE社は全社員にシリコンバレー精神を移植し、画期的な新製品を素早く実用化し、顧客の反応を見ながら完成度を高めるべく、社内研修を今年から始めているとの。

④オランダ フィリップス社の油を使わない調理家電「ノンフライヤー」

1台3万円という価格にもかかわらず、発売から予想の4倍となる20万台の販売が見込まれているとのこと。

フィリップス社もGE社と同じような戦略であり、通常の調理器に比べれば高いこの製品を、事前に市場調査をし、間違いなく売れると読んで投入しているとのことです。

フィリップス社も2001年、2002年と2期連続の赤字に陥ったとのこと。原因はAV機器や半導体、部品など、好不況の波が激しく価格競争に陥りやすい事業の低迷だった。

そこでジェラルド・クライスラーCEO(当時)が下した対策が、不採算分野からの撤退と、高収益事業への集中だった。

2006年に半導体事業、2012年にはテレビやオーディオ事業を売却し、医療、照明、家電の3分野に特化した。

そして「儲かりにくい事業を売却して得た資金を内部留保として溜めこまず、儲かる事業を買う原資に活用する。この好循環こそ高付加価値化できた最大の要因だ」と分析しています。

これも220兆円と云う内部留保金を溜めこむ、日本の大手企業の経営者の方々に是非、お聞かせしたい言葉である。

日本のメーカーこそ、有り余る資金は、不況の備えというような後ろ向きの用途ではなく、これまでに誰も考え付かなかったようなアイデアを出し合い、全く新しいアイデア家電製品を次々と売り出すようにすれば、日本は海外などに絶対負けない製品が出揃うはずである。

GE社は壊れる前に発見して直すと言っていますが、日本は「壊れない」モノ造りを目指したら如何かと思う。

⑤米 アイロボットのロボット掃除機「ルンバ」

シャープもロボット掃除機を発売しましたが、半年で17.3%の値崩れをしているそうです。しかしアイロボットの掃除機は4.6%しか値崩れしていないとのこと。

ロボット掃除機は日本の多くのメーカーも開発をしていましたが、結局はアイロボットのルンバに先行され、多くの市場を奪われてしまったようである。

その大きな違いは両者の研究開発への取組の違いにあったようである。

ちなみにこのアイロボットの研究開発費は売上高の13%に相当する6000万ドル(60億円)であり、トヨタ自動車の4%、パナソニックの7%などの日本の主要メーカーを大きく引き離しているとのこと。

イギリスとかアメリカとかオランダとかの大手メーカーは、既にこれから先を読んだ戦略を持って進みつつあるが、日本のメーカーはどうなっちゃってるのかな?

せっかく円安になっても、日本で造るモノが少なくなってしまっているため、海外への輸出は進まず、逆に輸入額が割高となって、貿易赤字が増大する一方である。

日本が、もっと早くからメイド・イン・ジャパンを意識し、国内にて多少高くてもホンモノのモノ造りに徹していたら、今頃、中国、ロシア、インドの富裕層から中間層までが、こぞって日本製品に群がっていたかもしれない。

 〈日本企業の事例〉 

 勿論、この特集には日本の企業も登場している。

① 安売り合戦で疲弊し赤字経営を余儀なくしていた長崎ちゃんぽんのリンガーハットが食材を国内野菜に切り替え、「餃子と共に食べると大人の一日の野菜の目標摂取量をほぼ賄える」とのうたい文句の下に価格を490円~500円に切り替え、集客を伸ばし黒字に復帰した。

 海外の食材(安いが不安あり)から、国内野菜に切り替え、安心・安全、栄養面をピーアールすることにより値上げをしても、お客が付いてきたという事例だ。

② スーパーの食品トレーメーカーの日本最大手メーカーのエフピコは、それまで増収増益を続けてきたが、昨年来の原材料の高騰により、急速に業績が悪化した。

 小松会長は、これからは高く買ってもらえるトレーを開発するため、内部留保を溜めこむのではなく、新素材研究などに資金を積極的に詰め込むとし、今まで20%程度だった独自製品比率を2016年度までに70%まで高めるとしている。

これまでの日本の経営者の殆どが、不況になるとただただお金を溜めこむというスタイルから研究開発にお金をつぎ込み、従来の経営戦略から大きく抜け出す経営者の例だ。

③ 山梨県で4店舗を展開する高級スーパーのアマノは、「安売りせず良い商品を提供し、他社と差別化することこそ、地場スーパーが生き残る道だ」と夕方4時からは、有名レストランやホテル出身のシェフ総勢70人が腕を振って最大45品目の本格的な高級総菜を惣菜バイキングとして、ずらっと並べ、多くのお客が喜んで買い求める。

 調味料も品数が豊富で高価格のモノをそろえ、全体の品目数も平均的な1店舗当たりの2万品目よりも30%多いン、2万5千品目が常時陳列されている。

 スーパーといえば、「安売り合戦」がすぐ目に浮かぶが、このスーパーは「差別化戦略」を取り70名の優秀なシェフが腕を振るって高級食材を作るということ。(立ち食い本格レストラン「俺のフレンチ」、「俺のイタリアン」を彷彿(ほうふつ)させる手法だ。)

今の日本には正にこのような戦略が求められているのかも知れない。

恐らく、この店に来るお客はこの高級総菜だけを買って帰るわけではなく、普通の食料品もついでに買って帰ることだろう。

必要なのは「ブランド」。ブランドになりうる製品を造りだすことが必要かと思う。

④ 山口県岩国市の純米大吟醸「獺祭(だっさい)」・・・旭酒造

このお酒は、米を最大77%磨いた芯の部分だけを使用し、極限まで雑味を取り除き、日本酒らしくないフルーティーな香りがするすっきりとした飲み口が受け、一本3万円でも飛ぶように売れているとのこと。

それも売れているのは日本だけではなく海外のワイン通をもうならせており、富裕層を中心に、タイ、インドネシア、エジプトの3ケ国で新たな販売を開始し現在は20ケ国で販売しているとのことである。

2014年中にはワインの本場フランスに直営店を出すようであるが、正に本物の「ブランド」になって行く。

この事例が、私が主張するメイド・イン・ジャパンのブランド戦略に最も近い戦略かと思われる。

まず、日本できちっとした他社との差別化製品を造り上げ、これを海外に売り出す。やはり新興国の富裕層がこの高いお酒を買うという構図である。

⑤ 東京世田谷で1斤3000円の高給食パン・・・イコールコンディション

これは毎日100本限定の完全予約制の食パンで、この他シナモンパン1斤3143円、バニラパン1斤4096円などと常識では考えられない値付けをし、受付開始すると、数日から1週間で予約が埋まってしまうとのこと。

このパンは小麦や水、天然酵母などの素材にこだわるのは勿論、通常の5倍近い時間をかけて発酵させているとのこと。

また工房にはモーツァルトを流し、空気清浄機を回して清潔な空気を保ち、酵母菌の済みやすい環境を整えているとのこと。

この日経ビジネスのテーマは「脱デフレで勝つ」というテーマだが、これらの事例は正に私が唱える「メイド・イン・ジャパンの復活」そのモノである。

この今回の事例で問題なのは、家電メーカーは全て海外メーカーの事例であり、いかに日本のメーカーの考え方や戦略が先進国としての方向を向かず、未だにただただ「安さ」を追い求めて、彷徨っているという事実である。

そして逆に日本のスーパーや食品関係の会社が、多少高くても、それなりの品質と魅力があれば、十分に国内でも売れ、また海外でも十分に商機があるということを示している。

日本こそ、この日本のモノ造りインフラを最大限に活かし、とにかく「良いモノ」、「壊れないモノ」、「便利快適・省エネ製品」を造り、きちっと世界一厳しい国内消費者の支持を得た上で、海外に打って出る・・・という明確な戦略を打ち出すときかと思う。

もたもたしていると、海外のメーカーが日本の中小零細の技術を使い、私の言う「メイド・イン・ジャパン」を実現し、利益を持って行かれてしまうかも知れまない。

当社もそう長くは待てない、他の優秀な中小零細企業も、恐らく独自の展開で、海外企業と始める可能性が大である。

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