会長の部屋:東レのモノ造り-

たまたま商工中金経済研究所の小冊子に、「2014年経営者夏季セミナー」」の講演録として東レ株式会社 代表取締役社長の日覺昭廣氏の記事があり、目を通したらびっくりした。

 特に国内でのモノ造りの部分に関し、私が盛んに唱えることと殆ど同じだったからである。
 同じことを私がいくら唱えてみても、世の中に対してさほど影響はないが、ヒートテック、炭素繊維等で今を時めく東レの現役社長、日本経団連の会長が言った言葉であれば、その重み、その価値観がガラッと変わって聞こえることは間違いない。
 以下にその言葉の一つ一つを見て行こう。

・日本の産業構造の中で基幹をなす製造業
 社会の高度化に伴って、サービス産業を中心とする第三時産業で外貨を稼ぐことは、殆どできていません。すなわち製造業に依存する貿易立国こそが日本の基本構造であり、この構造は当分の間変わりようがないと思います。
 ご承知の様に米英などの世界の主要国も製造業の復活を国の経済活性化の中核に位置付けて政策を推進しています。
 ・・・日本の場合は、間違いなく「製造業」=広い意味で「モノを造る力」しかないかと思います。後は今後、「おもてなしの心」とか「気配り、心配り」等のサービスに関する分野での可能性はあるかもしれないが・・・。

・製造業の国際競争力が急速に落ち込んだ背景
 一つは、「六重苦」=円高、高い法人税、貿易の自由化の遅れ、労働規制、温暖化対策、電力不足。
 ・・・円高は今は円安、高い法人税は法人税の引き下げ政策、貿易の自由化はTPPで現在対応中、労働規制は残業代無し政策や、派遣労働者の扱い、海外労働者の規制緩和等で諸規制を緩和、後の温暖化対策と云うのはちょっと良く分からないし、電力不足も今現在は余り関係がない。
 今、阿部政権は、この日覺氏の言葉を全て実行しようとしているかに見える。
 ただ、温暖化対策と電力不足を即、原発再可動20%超の利用に結び付けている点が大きく間違っている。ここは再生可能エネルギーへの大きな転換がこの国には最も必要なことである。
 直近では、各新エネルギー産業が動くことによる製造業の活性化、長期的にはエネルギーの完全自給化と温暖化ガスの全くゼロ化である。同時に30兆円のエネルギー輸入費用の限りなくゼロ化でもある。

 もう一つは、すり合わせのデジタル化→製造装置を一式買えばどこでも誰でもある程度の性能のものを造れるようになってしまったこと。
 ・・・これも考えてみれば、どこでやってもできるのであれば、何も他国でやる必要な無く、自国で売るものは自国で造れば良いかと思う。一番の理由は「海外=安い」、「国内=高い」という単純な思い込みであり、ベストは「地消地産」で、ニーズのある場所で造ることであろう。

・素材産業の国際競争力を維持・強化するために
 素材産業については、その開発と事業化には、高度なすり合わせ、したがって長期の研究、技術開発、ノウハウの蓄積が必要です。デジタル化は容易ではなく、振興勢力の
参入、追撃には時間がかかるかと予想されます。
 ・・・炭素繊維は40年以上も前から研究を重ねてきた結果ということで、簡単には真似してできるようなものではなさそうです。
 
 製造業。特に素材産業が国際的な競争力を維持・強化して行くためには、日本に於いて研究開発とものづくりの現場を維持して行くことが特に重要です。 
 日本での研究開発により、技術、技能を蓄積し、付加価値を生み出す能力の高度化を進めること、またものづくりの現場にて高付加価値製品を生産する能力の向上と効率的な生産技術の構築は必須です。
 このような考えに基づいてグローバル経営を実践して行くことが、日本の製造業、素材産業に必要とされています。
 ・・・国際的な競争力は、日本における研究開発と、「モノ造り」の現場を維持して行くことが特に重要!
 このような。考え方に基づいてグローバル経営を実践して行くことが必要ということで、安いからと言ってもろ手を上げて出て行って、「もう帰れない」などと思っている日本の企業は先がある訳がない。

・東レのグローバル経営の考え方
 まず国内で最先端、革新的な研究・技術開発を行い、先端材料の創出、高負荷価値製品の事業化を行います。
 また革新的なプロセスの開発にも取り組み、生産技術まで確立することで抜本的なコストダウンを図ります。
 時間の経過と共に製品のコモディティ(汎用品)化が進んできた場合には、需要、コスト競争力などの観点での検討を踏まえ、最適な海外拠点で生産することにより、さらなる事業拡大を図って行きます。
 またグローバルで得た利益は国内マザー工場における次なる先端材料、革新プロセスの研究、技術開発に再投資します。このサイクルを回すことで、国内と海外でのものづくりの両立が図られ、かつ長期的視点に立った経営、持続的な成長が実現できると考えています。
 ・・・この辺は、私がこれまで主張してきたことを更に具体的な形で示されており、私としては読んでいて「その通り!」と声を上げたくなるほどです。
 グローバル化を図るにも、まずは国内でのモノ造りが基本となるというこの考え方を日本の家電メーカーが持っていたら、今のような高付加価値製品はほとんど海外メーカーという非常に情けない状態は無かったかと思います。

 まだまだ続くのですが、東レの企業理念は「私たちは、新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」ということで、「最先端の東レ」をめざし、斜陽産業と云われていた繊維も、グローバルに見れば繊維は成長産業と考え、結果、炭素繊維、ヒートテックと云った最先端繊維の開発を成し遂げている。
 ちなみに。東レの研究開発要員は3千5百名強、そのうち73%が日本、残りの27%が海外、日本の東レ本体ではおよそ三人に一人が研究開発要員だとのこと。
 また、研究開発費は、景気に左右されず着実に維持・増加させており、2013年度で5百55億円を投入、2014年度以降、三年間で1千8百億円以上を投入する予定だとのことである。景気によって、即開発を止めてしまう多くの日本の大企業に聴かせたい言葉だ。

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