久しぶりに講演の依頼がかかり、県内須坂の商工会議所にて1時間半の講演をしてきた。 今回は、事例研究「セルコの47年間の軌跡」として、当社の47年間の売上高と経常利益をグラフ化し、企業の生き様をこのグラフの中に見ながら解説をした。
長野県須坂商工会議所工業部会講演会レジメ(平成29年1月27日) (株)セルコ 代表 小林延行 私が7年前に書いた「立ち上がれ中小零細企業」という本により、発刊当初は大体月一位で講演依頼が来たが、今回は、コンサル会社からの依頼で須坂の商工会議所工業会の定例講演会の講師として呼ばれた。
「立ち上がれ中小零細企業」
1、 NHKのビデオによる会社紹介
約8年前、「おやじバンド」でNHKに立て続けに3度出る。 会社紹介は、8年前におやじバンドで3回立て続けにNHKテレビに出た最初のビデオでどんな会社かを紹介した。
2、 事例研究=(株)セルコの47年の軌跡
① 気楽な下請け時代・・・何も考えない経営 セイコーエプソンのドットヘッドのプリンター用コイルの完全下請け しかし平均利益率は17年間で何と2.8%→「生かさず、殺さず」の下請け政策がアリアリと分かる。
② ラッキーだと思っていた海外取引が地獄の入り口 米国ウエスタン・デジタル社、韓国サムソン社のハードディスク用スイングアームを受注し6年間は良かったが、技術流出で一気にゼロへ。
③ 大リストラの末、社長就任・・・58名から17名へ 私が社長になったものの「何もしなくても仕事は来る」・・と思ってのほほんとしていた。
④ 2年の間にさらに売上低下 そのまま、2年間何の手も打たずにいたら、600万円/月迄落ちる。 父の残してくれた資金も底を突き、絶体絶命のピンチを迎えた。
⑤ 誘われた自己啓発セミナーにて”気づき“、社長としての役割を自覚し営業活動を開始。V字回復を目指すが簡単ではない。
⑥ 自社のPR=ホームページの充実、新聞記事、有効な展示会、有効な広告 営業関係の本、セミナー、講演会で猛勉強、お金がかからず、一番宣伝効果の高い方法は「新聞記事」・・・新聞記者は”良いネタ“を探している。良いネタを提供すれば必ず記事になる。
⑦ 「高密度コイル」の誕生、以降「高密度コイルのセルコ」としてPR ニコン半導体露光装置ステッパー用のコイルから高密度コイル(特許技術)が生まれる。
⑧ ボビンタイプのコイルも高密度コイル 抵抗やインダクタンスが通常±5%、厳しくても±3%のところ、当社は顧客規格±1%を実現している。
⑨ これからが、本格的高密度コイル時代、モータ製作に挑む。 車、医療、ロボット、航空宇宙等々、まずは性能、精密さが特に要求されるモータやセンサーから採用され、最終的には当たり前の技術となって行く。(大分大学の教授) もしかしたら、当社のもーたーによりドローンが今より2倍飛べるかもしれない。
3、日本の現状と問題点
① 日本の会社の99.7%は中小零細企業、労働者の69.9%は中小零細企業で働いている。→この人達が潤わない限り消費は上向かない。
日経1月14日の記事「企業の休廃業/解散最多」昨年2万9500件超越す ・・・倒産は減ったが閉める会社が増えている。加工費が安すぎる。 「生かさず、殺さず」の下請け仕事が、次の世代に仕事を引き継ぐことを阻んでいる。
② 金融緩和、円安、株高で大企業の業績は上がるが、中小零細にとっては必ずしもプラスにならない。
③ 政府のやるべき施策:大企業には日本でモノ造りをするように仕向ける。また部品は日本の中小零細企業を使うように働きかける。(アメリカトランプ氏のように・・)➡詳しくは小林著の電子図書「2020年 東京五輪の年にメイド・イン・ジャパンが復活する。(中小零細企業の活用でメイド・イン・ジャパンが大復活する)」を参照。 「日本のモノ造りの凄さ」 日本は“島国で農耕民族” ポイントは“一つ所でコツコツコツコツ”と“協調性”“助け合いの精神”“思いやりの心”“以心伝心”“人類皆兄弟”の精神。 中国も、アメリカも、ヨーロッパも“大陸で遊牧民族” ポイントは“自分にスキルを付け高く売り込む、会社を移れば移るほどハクが付く”“人より先に自分がでる”“自分が中心”“イエスかノーか”“人を見たら泥棒と思え”が彼らの常識。 何千年、或いは何万年育まれたこれらの精神は、良くも悪くもこの100年位の変化では変わらない。 先年の大震災で証明された助け合いの精神、我慢の精神・・・「子供たちが老人の面倒を見る」「自分より困っている人を先に・・・」「略奪したりしない」 ・・・・・・この心、精神こそが、「日本のモノ造りを支える精神」・・職人の精神。 新幹線の掃除の人達。7分で全て完了。これは日本人だけしか出来ない。 それに比べ、タイ、中国の特に船便の荷扱いの悪さ。 基本は、同じ事を、同じ所でコツコツコツコツ、頭の良さではない。 そして、協調性。⇒小さな島国、土着型農耕民族のDNA,文化であり、他の国には殆んどない特性。⇒本には詳しく書いてある。
特に、日本のモノ造りは中小零細製造業の生産技術に負うところが大きい。 日本の中小零細の社長は生命をかけて仕事をしている。 ・日本の自動機とかロボット技術は世界一。これを駆使する。中小零細も考える。
・自動化、ロボット化はお菓子とか食品業界のお家芸ではない。我々の会社に何百万、何千万という安定した部品の受注があれば、間違いなく自動化し、安くて高品質な部品を作り出せる。スマホの4割の主要部品は日本の部品メーカーが造っている。ムラタ、アルプス、TDK、日本電産等々、すべて自動化して国内で十分採算が取れている。
・少子高齢化は全く問題がない。
④ 大企業のサラリーマン化が進み、斬新的な新しい製品がなかなか出てこない。海外のバカ高い家電製品が売れている。ダイソンの掃除機、扇風機、ドライヤー等、アイロボットのロボット掃除機等 日本は”安い”モノを造れば売れると思って、韓国、中国と競争の末に見事破れ去った。
トヨタ、マツダ、富士重工、コマツ、東レ等、日本を中心とした「モノ造り」をしているメーカーは強い。
4、今後の日本の製造業の方向性 <バルミューダ>
ベンチャー企業 独特な家電製品:蒸気トースター、蒸気炊飯器、ポット、空気清浄機、ヒーター等を製造・販売している。 ・・・・国内生産であれば、かけたコスト以上に“質”という製品価値を生み出すことができる。「人件費以外のトータルコストを1つずつ見直して圧縮していけば、たとえ日本国内で生産しても海外で生産した場合と同じぐらいにコストが引き下げられると寺尾自身が判断しました」(阿部氏)。・・・・ ・・・という社長の言葉に集約される。
5、セルフコントロール=セルコの経営
① 上司や他人から言われてやるのではなく、まずは、自分が発起人となってやる・・と云う自主性、自発性を重んじる。
② 中小零細企業の従業員は「寄せ集め」・・・殆どが中途採用者で、様々な環境で育ってきた人達で構成されている。 ➡研修に数百万かけ社内に講師を呼び、3日間缶詰研修。 社員の誕生日月には誕生食事会 朝は全員で握手会をして、気合いを入れてから仕事をする。 ➡「家族経営」の奨め。
③ 5年後75歳で社長を息子(現36歳)に譲る。現在、息子以下の30代の部長、課長に実際の業務運営は全て任せている。 責任感、自発性が増し、社内が活性化し始めている。 以上