「新老人の会」のニンニク作り

「新老人の会」・・・・昨年105歳で亡くなった聖路加病院名誉院長の日野原重明先生の会である。
 先生が没後もこの会はそのまま継続はしているが、やはり求心力は急速に落ちている。
 しかしここ信州支部東信ブランチの活動は一向に衰えない。
 4月には日光へ一日バス旅行をし、先週は長野の先の飯山の戸狩温泉スキー場にワラビ取りに一泊旅行、昨日は一昨年から始めたニンニク作りで収穫作業。勿論その後は食べて飲んで、よもやまの話題には事欠かない。
 そのニンニクっ作りであるが、去年はいい調子で結構なニンニクが取れたが、今年はちょっとばかり不作で去年の半分くらいしか取れなかった。
「連作障害」、「深く埋め過ぎ」、「草に栄養分を取られた」、「種が悪かった」等々、なにせ手はあまり動かないが、口だけは百戦錬磨の人達ばかりで、色んな見解が飛び交う。
 代表の私としては、「収穫云々・・と云うよりも、こうしてみんなで楽しく作業し、仲よく過ごす時間そのものが大事なんです!」と強調するが、内心は面白くない。

 4年ほど前に日野原先生を東信ブランチの主催で上田市の市民会館にお呼びし、1400名という参加者を集め、その時に得た収益金が当会の活動資金となっているが、あれから4年、食事会やバス旅行、ニンニク栽培等への補助金を結構気前よく出していたら、だんだん懐が寂しくなり、日野原先生もいない今、収益源はニンニクの栽培・販売事業にかかってきたからだ。
 一昨年は、未だチョロチョロやっていたが、昨年からは大々的にやろうということで、種も結構高くて立派なモノを買い、1年目はそこそこの収穫だったため、2年目からは道の駅等に卸し、本格的に事業化しようと思っていた。
 その夢が残念ながら今回、がっくりの結果となってしまった。
 
また父から受け継いだセルコの敷地は5200坪あり、この敷地や工場建屋を管理する(有)同延舎という会社であるが、こちらの管理もしている。
 今同延舎の建物の中に、かれこれ20年近く前にホンの遊び心で結果、結構な改装費を費やして倉庫を改装した音楽スタジオがある。
これは長年女房から、事ある毎に「あんなものを作って!」と責められ続けている私の最大の弱点である。
 こちらは苦節20年、東京の区役所で勤めていて、50歳そこそこで早期退職、こちらに移住し、自給自足農業をやりながら残りの人生を自分の好きな音楽をやって過ごしたい・・・と云う人が現れ、カビ臭かったスタジオ内を隅から隅まで掃除し、快適な空間にすると共に、設備はそれほど増やさずに音響を見事に生まれ変わらせたのである。
 私は早速「小規模事業者持続化助成金」という補助金を申請し、この資金を基にこのスタジオのリニューアルを計り、どうにか多少でも利益を確保できるように・・・と考えている。

 ・・・・・このように、私の場合は、「仕事」という概念はあまりない。
 私の前に現れる全てのことが仕事であり、趣味であり、結局私の人生そのものだということだ。
 そしてその対象に向かって全力でぶつかって行くことが、私が生きている証であり、
 私は「ああここまでやったから自分のやるべき事は終わった」・・・と云うことはまずないか?と思う。
 生きている限り、何かを考え、何かをやり続け、その途中で人生を終わるのか?と思う。
 私にとってコイルで大きな仕事を受注することも、「新老人の会」でニンニクを作ることも、その直面している時は、その対象事項が私の全て・・・と云うことなのである。

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高密度コイル

「高密度コイル」

・・・これは私が今から14年前にN社の半導体、露光装置リニア―モーター用として考えられ、造られ、採用されたコイルに私が命名したものであり、その後特許も取得した。

 最近ネット上では、「高密度コイル」という言葉が飛び交っている。

 いわゆる、コイルをきちっと巻くことの総称ということになる。

 しかし、私が命名したこのコイルは、この一般的に言われているモノとはちょっと違っている。

 私が高密度コイルと命名したのは、丸線をまず他社の一般的な整列巻よりも10%以上きちっと巻き、その上で、更に圧縮して密度を上げ占積率が90%以上のモノだった。

 その後、これも前述の露光装置用として、平角線をα巻きしたコイルを積層し、占積率が100%(被膜込み)に近い巻線ができ上がった。

 しかし、これらのコイルはそれから10年あまり他社に採用されることは殆どなく、前段階のきちっと巻いた状態のコイルの採用にとどまっていた。

 当社は一時広告に「巻いただけでも高密度」と謳って、世の中のニーズに合わせながら来た。

 ところが最近EV車のモーターを中心とした「占積率獲得合戦」が始まり、車メーカーとその周辺メーカーによる当社のアプローチは格段に増えて来て、当社も「高密度圧縮成型コイル」として太線やパラ線をきちっとある程度の形に巻いたものを圧縮成型する製造法を考え、新たに特許出願した。

 しかし、車メーカー関連の会社は試作はするものの、このコイルを圧縮成型するという一見無謀に思える方法は、なかなか採用するまでには至らない。

 高電圧による被膜の損傷を懸念している。

 確かにこの技術は無暗に圧縮成型すると危ない技術には違いないが、これは欲しい占積率の「程度」を考えれば済む問題である。

 例えば97%圧縮は確かに怖いが、94%だったら高電圧クリアーするとか、もっと安全を重視して90%にとどめる・・とかである。

 当社も各社の巻線仕様によって圧縮できる程度が異なるため、一般論は言えないが、丸線で90%以上は間違いない。

 車以外の電圧もそれ程かからないコイルに、あるメーカーがこの圧縮成型技術を取り入れたところ、小型高効率のモーターとなり、未だ市場に出したばっかりであるが、好評で増産の話が出てきている。

 結局、これまでには考えられなかったような仕様のコイル設計が可能になる・・・と云うことだ。

 一方殆どの関係技術者は、平角線の方が丸線より占積率が高いと思っている節があるが、必ずしもそうではない。

 平角線の最も有効な占積率アップは間違いなく「α巻き」である。但しα巻きは2層しか巻けないため、多層にするためには「積層連結工程」が必要となるため、どうやってもコストの点では不利になる。

 しかし私は敢えて言っておきたい。

「最高のコイルの占積率を狙いたければ、平角α積層巻きである」・・・と。

 現在車のEV化の花盛りの技術はセグメント方式である。

 これは我々コイル屋、巻線屋にとっては全くの「邪道」である。

 太い平角線をUの字にフォーミング・組合せ、端末を溶接によって連結しコイル化すると云う技術である。

 最近、この業界の動向に合わせ当社もこの「まがい技術のセルコ版」を研究しており、その内に発表することになろう。乞う、ご期待!!

 平角線を普通に積層すると、コーナーがある分クロスポイント(乗り上げ部分)が丸線より不利となるが、ある巻線機メーカーはその部分を上手く逃がして高密度巻線を実現しているので、高密度平角積層巻線は、このような巻線がお奨めです。

 しかし、占積率を100%に近づけたければ、平角α積層巻きしかないということはここで明言しておきたい。

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前号に続く・・・アインシュタインの言葉

《ネットより見つけました》

アインシュタインは一八七九年生まれ。一九二二年日本を訪問。
・われわれは静かに生活し、熱心に学び、親しげに微笑してくる多くの日本人を目にします.誰も己を出さず、その微笑の背後に隠されている感情を見抜くことはできません。そしてわれわれと違った心がその微笑にあることがわかります。
・私のような異国の人間にとって、日本人の心に深く立ち入るには容易ではありません。けれども人間同士の直接の体験が欠けたことを芸術の印象が補ってくれました。日本では他のどの国よりも豊潤にまた多様に印象付けてくれるのです。ここで「芸術」というのは人間の手で創作しているありとあらゆるものを意味します。
この点、私はとうてい驚きと感嘆を隠せません。日本では自然と人間は一体化しているように見えます。この国に由来するすべてのものは、愛らしく、朗らかであり、自然を通じて与えられたものと密接にむすびついています。
かわいらしいのは、小さな緑の島々や、丘陵の景色、樹木、入念に分けられた小さな一区画、そしてもっとも入念に耕された田畑、とくにそのそばに建っている小さな家屋、そして最後に日本人みずからの言葉、その動作、その衣服、そして人びとが使用しているあらゆる家具等々。とりわけ私はいろいろと分けられた滑らかな壁や、やわらかい畳で敷きつめられたたくさんの小さな部屋があるのをみて、日本の家が気に入りました。どの小さな個々の物にも、そこには意味と役割とがあります。そのうえ、礼儀正しい人びとの絵のように美しい笑顔、お辞儀、座っている姿にはただただ驚くばかりです。

・日本の芸術における最も輝かしいものは絵画及び木彫の領域にあると私は考えております。それらの作品から、日本人がいかに形あるものに対し歓喜する目をもった人間であるか起こった出来事をたゆまず芸術的に描いていくかが本当によくわかります。鮮明で単純な線を日本人は何よりも愛好します。
・日本では個人主義は欧米ほど確固たるものではありません。

・たしかに日本人は、西洋の知的業績に感嘆し、成功と大きな理想主義を掲げて、科学に飛び込んでいます。けれどもそういう場合に、西洋と出会う以前に日本人が本来もっていて、つまり生活の芸術化、個人に必要な謙虚さと質素さ、日本人の純粋で静かな心、それらのすべてを純粋に保って忘れずにいて欲しいものです。

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北朝鮮と中小零細企業

北朝鮮の金正恩委員長とアメリカのトランプ大統領が6月12日にシンガポールで首脳会談を開催することになった。
 考えてみれば、この小さな国が大国アメリカと対等に渡り合い会談を行うということになった訳で、これは大変なことだ。
 それもこれまた大国中国を上手く後ろ盾にしたり、韓国との関係を急速に親密にしたり・・とよくよく冷静に考えると、なかなかの手腕か?と思う。
 これは我々中小零細企業が大企業と立ち向かう時の戦略と同じかも知れない。
 ただその手段の違いはある。北朝鮮は核兵器とか長距離ミサイルいう武器であり、我々は「技術力」という武器である。
 私の場合は、当社の高いコイルの技術力を背景に、大きな会社と渡り合うことになる。
 もともと会社の規模から言うと、象とアリとか良くてもいぬかネコ位の違いがあり、通常では我々が何の技術を持たなかったら、ただの弱小町工場であり、大企業の言うがままになるしか生きる術がない。
 ちょうど10年ほど前に私が書いた曲「中小零細Q.C.D.」の冒頭の部分となる。

仕事が欲しけりゃQ.C.D
倒産いやならQ.C.D.
生きていたけりゃQ.C.D.
QQQQ  CCCC  QQQQ  CCCC  QQQQ  CCCC  D

中小零細は大変 チェック チェック
 品質いいのは当たり前 安く安くコストを優先 
早く早く納期は厳守

・・・・と云うことです。
しかしこの歌は
だけど俺らにゃ技がある
誰にも負けないテクがある 
匠の技だよミクロンオーダー!
 ・・・と続く。
 そして
中小零細は大変 
昼もない 夜もない 休めない
危険 きつい 汚い 3K
オンボロ機械のオンパレード
だけど俺には 夢がある 誰にも負けない意地がある 
目指す技術は世界ナンバーワン!
日本のモノ造りは 中小零細の底力
決して大企業の 力なんかじゃないぜ 
オイラの技術は本物 誰にも絶対マネできない
何がタイだ中国だ インド ベトナムもいいけど 
そんなの そんなの関係ねぇ
 全然全然関係ねぇー
・・・と来るのである。

 この曲は我ながら中小零細製造業の立場、状況、そして向かうべき道を示していると思う。
 金正恩委員長が核やミサイルを必死で開発したように、我々中小零細は必至で「他ではできない・やらない」仕事を受け、どこにもないような技術を確立して行かなければ、生き残れないということだ。

 私はやはり10年前に刊行した本「立ち上がれ中小零細企業」にて力説したように、世界の中で日本ほど「モノ造り」に適した国民はいないと信じている。
 よく世の中の趨勢で、もはや日本はモノ造りをする国ではない・・・などと語られることがあるが、私の考え方はそんな50年、100年の時代の変遷からくる話ではなく、1万年、2万年前の縄文時代から培われてきた「日本人の特性」からの話だ。

 縄文時代の我々の祖先は、狩猟民族であり、自然の中でなっている木の実や海や川の魚や貝類、そして時々はイノシシのような動物をみんなで協力して捕らえて食べたりしていたようだ。
 驚くことに、その1万5千年以上もの長い間、全く争いの跡が見つからないということだ。
 その後弥生人が入ってきて争うようになったリ、稲作が始まったりしたようであるが、稲作でも、「結いの精神」というものがあり、大変な田植えや稲刈りをみんなで助け合いながら共生してきたようだ。
 確かに時代の変遷というものはあるか?と思う。
 私の子供の頃は、隣近所は皆助け合って生きていたが、今はそれほど親密では無くなってきている。
 東京のマンションなどは、隣の人はまだしも、2軒先位になると全く他人になってしまうことが当たり前だ。
 しかし、以前にNHKのEテレの「サイエンスZERO」で、現在の日本人でも縄文人のDNAが10~20%位入っている。そしてこの縄文人のDNAはアフリカに端を発する人種を辿ってみても、大変特殊で一体どこから来たものか解明できない・・・と聴いてから、わたしの考えは益々固まって来た。
 東日本大震災時に世界を驚かせた日本人の助け合いのシーンとか外国人が日本に来て感動する「おもてなし」とか「おもいやり」の精神は2万年も前から培われてきたものであり、50年、100年のスパンの変遷で壊滅してしまうものでは無い。
そして「モノ造り」の原点は、コツコツコツコツである。
そして「人の和」である。
これからいくらIT化が進み、ロボット時代が来ようとも、それを考えたり動かしたり、モノ造りの原点であるコツコツ精神が、それらを進化させるためには必要だということである。
私は何度でも言うが、農業を含め、日本はモノ造りを中心とした方向を取らない限り、世界の中でその存在感を示し続けることはできない。
ただ安いモノだけを造るのであれば、これから北朝鮮と一緒になってしまうかも知れない韓国に負けてしまうだろうし、金融だ、観光だ、インターネットだ・・・といくら頑張ってみても、とても世界の強豪には太刀打ちできない。
ただ、「モノ造り」・・・それも本物の「モノ造り」であれば、日本にかなう国はまずない。

 そんなモノ造りの国日本にあって、我々中小零細は今日も地を這いながらそれこそアリのように働き続けている、

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