シン・ニホン・・・その3

日本に希望は無いのか?

確かに日本はイケてない。技術革新の新しい波は引き起こせず、乗ることすらできなかった。企業価値レベルは中韓にも大敗。大学も負け、人も作れず、データ×AIの視点での三大基本要素のいずれも勝負になっていない。
戦後の高度成長期から今までで最も残念な20年だったと云える。

産業革命における日本を振り返る
第一のフェーズ:電気の発見や蒸気機関車などが生まれてきた100年間。日本は江戸時代末期で鎖国時代、黒船がやってきてびっくりした時代。
第二のフェーズ:これらの技術がエンジンやモーターに応用され、車や家電が続々と生まれた。
第三のフェーズ:これらの新しい技術が更に機械や産業と繋がり、航空システムやより複雑な生態系というべきモノが次々と生まれた時代。通信回線、通信技術、端末が繋がり合うインターネットもこの段階で生まれている。
このように見ると、日本としてはフェーズ1は経験したことが無く、フェーズ2とフェーズ3の勝者であった。 今、確かにデータ×AI化の世界では日本は大幅に遅れを取ってしまったが、この新しいゲームのフェーズ1は既に終わりに近づいている。
このデータ×AIのインターネット業界を見てみると・・・・
Amazon、Yahoo創業から24年、日本のヤフー、楽天が生まれて20年以上、これらの取り組みの中で生まれた大量なデータトラフィックをリアルタイムでさばくデータエンジニアリング技術は相当に広まり、自然言語処理技術や機械学習技術は空気のように使われており、今や一般の人ですらディープラーニングを口にし始めていることから、この世界のフェーズ1が終わりに近づいていることを示している。

これからどうなるのか?
前述の例に見るように、産業革命同様にフェーズ2、フェーズ3が来ることはほぼ間違いがない。
すなわち、これからフェーズ1で生み出された技術が、あらゆる分野、空間、機能に広まって行く。全ての空間、機能、サービスが半ば感覚を持ち、スマート化するようになる。何でもセンシングされるようになり、それに基づいて色々なモノが見えないところで最適化される。正にフェーズ2だ。

これからはあらゆるものがデータ×AI化して行く
更にこれらのスマート化されたモノやサービスはことごとく繋がり合って行く。この新しいエコシステムはリアル空間に重なり合い、インテリジェンスネットというものが、様々なレイヤ(層)や目的ごとに重なり合って行くだろう。リアルな空間ではないので何層でも重なり合うことが可能だ。
あらゆるものや産業が繋がり合う。食もモニター可能となり、例えば身体の内部の様子も可視化されるようになる。

AI化には入り口と出口がある
問題解決のフロー
入口(入力)…情報の仕分け
位置情報、音声(指示)、ジェスチャー、周囲の画像、加速度等々
様々な情報から活動のコンテキストと必要な指示・活動を理解する。(文脈・意図の理解)
出口(出力)…実際の産業の用途
健康=診断、学習=トレーニング最適化、住居=デザイン、設計、車=自動運転、事故防止等々
個別課題で実際の課題解決を行う

現在起きている変化の殆どが、入り口側の変化であり、扱う対象がデジタル情報であるデジタルマーケティング分野か決済領域に集中している。
ただ産業は、それが生み出す付加価値から見て分かる通り、9割方出口側に存在している。
ここが一気にデジタル化、スマート化しようとしているのが我々の置かれている局面だ。応用のフェーズはこれから始まる
これが正に、前述のフェーズ2、フェーズ3だということだ
入り口側の機能は業界横断型、すなわち水平的であるが、出口側は業界、もしくは機能に特化しているという意味で垂直的と云える。
垂直領域は深いドメイン知識(その領域に関する専門知識、知見)に基づく作り込みと、汎用性だけでないセミカスタム力がカギになる。日本の持ち味の一つである現場、顧客に寄りそう力が生きる時でもある
また出口側で何らかのAI的なソリューションを産み出そうとすると、AIの定義式からもわかる通り、正にその出口特有のデータが必要になる。
この出口産業ということになると、日本はほぼすべてのオールドエコノミーをフルセットで、世界レベルで持つ数少ない国の一つだ
これほど出口系を抑えている国は米国、ドイツ位しかなく、これは主要大国の一つであることの強みだ。
日本には相当のプレゼンス領域があり、かなりのまとまったチャンスがある
この国の産業的に持っている技術的な強みは、車、家、重電、ファインケミカル、ロボット、鉄、建築、土木だけではなく、計算機化で世界の先頭を走っており、モバイルインターネットも日本から始まっている。
出口領域としては、ライフサイエンスとデータサイエンスの融合は急速に進み、生命科学は今でも世界トップ3(米英日)の一つだ。
中山伸弥先生、大村智先生、大隅良典先生、本庶佑先生と4人ものノーベル医学・生理学受賞者を産み出している。
またハードの世界でも、カーボンナノチューブ、原子レベルの撮影技術などは、日本は世界のトップレベルの基礎技術を持っている。

まず目指すべきはAI-readyな社会
この数年、国と財界はSociety5.0に取り組んでいるが、これはフェーズ2論そのものだ
これまで狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会と発展してきた人類が、今起きているデジタル革新の力と我々の妄想力を掛け合わせた向こうに未来、(価値)創造社会があるというのがSociety5.0の掲げる絵だ。

Society5.0における価値創造
デジタル革新 × 多様な人々の想像/創造力
“AI-ready化”     多様性の内包
成功のプラットフォームとしての日本


「単にデジタル化を行うわけではなく、我々の多様な創造力、妄想力をテコにこのデジタル革新の力で世の中をことごとく刷新し、新しい価値を生み出すべき」ということをここでは掲げている。

Al-ready化
その答えは“AI-ready化”だ。
2018年 内閣府「人間中心のAI社会原則検討会議」、経団連「未来社会協創TF」、「AI活用原則TF」の集中検討が行われたが、ここでのAIと言っているモノは全て”データ+AI“の意味合いで使われている。
著者はこのすべての委員会に出席したが、ここで分ってきたことは『AI戦略などを語る以前の課題が極めて深刻であり、そこがボトルネックになっている』ということだった。そのボトルネックを解決さえできれば、日本の底力からすると明るい未来は充分に招き得るという見立てだ

AI-readyな状態にするための10のポイント
(1)目的・目指す姿
ただ単に人間の仕事を機械に置き換えて行くという想像力のない利活用ではなく、夢を実現するためにAIとデータの力をどう融合させ、自動化できるものは当然し、これまではできなかった新しい価値を生み出しているか?このような志を持っているか?
(2)扱える人材
必要な理数・データ素養を持つ人が限られ、トップレベルの研究開発能力をもつ大学や企業の専門家がいないと何もできない状況ではなく、理文を問わず高等教育を受けたすべての人が理数・データ素養を基礎教養として使うことが出来ているか?最先端を行う人の層も十分に厚い状態か?ちょっとしたチューニングは、中高生が新しい技術・家庭や工業科のクラスで学ぶことが出来るか?工業科、高専、専門学校などで多くの人が理数・データ素養を学び、街の電気屋さんのようにそこら中に応用エンジニアリングがいる状態か?
大半の会社にアーキテクト的な人財がいてベンダーに丸投げすることなく、事業の刷新,創造、運営の要を狙っているのか?

(3)対象となる分野、領域
既存のICT的な業界だけではなく、全ての業界がデータ×AI化し、あらゆるところで恩恵を受けているか?旧来のICTプレーヤーからしかデータやAIを使う試みが出てこないのではなく、データやAIを使う新しい試みが社会のあらゆるところから雨後の筍のように日々生まれてくるのか?
(4)作り込みのあり方
データやAIの力を使いたい人や会社が、何もかも自力で造ったり、特定のベンダーに丸投げしたりしなければならないのではなく、様々なAIをマッシュアップ的に使えると共に、コアエンジンについては各ステークホルダーが自分たちなりの磨き込みで競い合えているか?
ある程度の技術的な知恵は、ブラックボックス化せずに共有され学び合う状況が産み出せているか?
(5)データの利活用状況
人間の活動や環境、リアル空間がデータ化されていないのではなく、ウェブもリアル空間も含めてことごとくデータ化しているか?もしくはいつでもデータ化できる状況にあるのか?大体のデータがリアルタイムに使うことが出来るか?情報基盤がベンダー依存でなく、きちんとセイブされているか?
(6)市民/利害関係者のリテラシー
プライバシーとか市民の無理解が邪魔をしているのか?逆にリテラシーが高い市民が多く、プライバシー課題も整理され、個人が便宜を受けつつ、データが提供される関係が成り立っているのか?それをきちっと世の中に説明できているのか?
大会社だけではなく、小さなスタートアップでも現実的な対応が出来るか?データやAIは繋ぎ込まないと価値を生みだせないことを正しく理解できるか?
(7)データ処理力
処理コストが米国の5倍以上を解決できるか?大量データ処理が国内で出来るか?AI技術を十分に使いこなせる状態になっているか?ユーザを守りつつ、API含め繋ぎ込む整備や安全な流通のシステムが構築出来ているか?
(8)革新の主体と推進状況
AI推進層と保守層が完全に分かれ、AI推進会社と、旧来の会社に分かれてしまっているのではなく、AI推進層があらゆる分野の刷新の中心かつリードになって分野、業界を超えた再編、革新が進んでいるのか?旧来派が規制と既得権益を超えた再編、革新が進んでいるか?
新しい取り組みを行う場合は、建物どころか街も、マネジメントのあり方、評価、給与システムも変えてしまった方が現実的だ。
(9)教育システム
旧態依然の人材育成モデルではなく、理数・デザイン×AI、デザイン素養をベースに持つ境界・応用型の人材育成モデルになっているか?
学部学科制で才能の選抜、育成を行うのではなく、専門分野を横断し、経験を柔軟にミックスすることが可能な人材育成システムとなっているか?
(10)社会全体としてのリソース投下
未来を信じず、社会福祉、これまで通りの社会インフラばかりに目を向けるのではなく、未来を信じ、米中に対応し得る国力に見合ったレベルで、十二分にAI-readyになるようリソースを投下し続けているか?

以上、この革新期においては、新しい技術の利活用に対する心構え、人づくり、人の活用、データ環境の整備、市民の意識、データ処理能力に至るまで質的に刷新して行く必要がある。
国・企業レベルで言えばともかくにもまずは正しい市場に乗ることが大切だ。

AI-ready化された企業とは
これを企業や組織側にどのように適用し、どのような状況を目指していくべきかの目安についても、経団連AI活用戦略の中のAI-ready化ガイドラインで5段階に整理した。
レベル1
AI-ready化以前の状態。AI革新に着手してない。
レベル2
先端的な旧来の大企業のレベル/初期のネット系スタートアップのレベル
レベル3
中~大規模なインターネット企業の多く、AI×データの利活用に着手、取り組みは既存の人間の仕事を機械化することが大半。
レベル4
先端利活用企業。AI×データの力を使うことにより、コア事業でこれまで不可能だった夢や課題を解決している企業。未来を信じ、AI-readyになるまでリソースを投下し続けている。
レベル5
Alibaba group,Alphabet,Amazonなど、全ての事業、機能がデータ×AI化し、業界そのものの本質的な刷新を心がけ、変容を引き起こしている。国内外の競争に対抗できるレベルでAI-ready化に向けて資源を投下できている。
新しい試みが、あらゆるところから日々沸き起こってきており、常に世界の最先端をリードしている。

2019年2月の状態では、日本の企業は大半が「レベル1であり、その後1年経っても、未だに未着手の企業が多い。

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シン・ニホン・・・その2

「第二の黒船」にどう挑むかー日本の現状と勝ち組

1人負けを続けた15年間
1、世界の企業ランキング・・・平成初期には上位の多くが日本企業は、現在では中国はおろか韓国にも大敗している。
日本企業は今でもスケールゲームにいそしみ、新しい技術をテコとした刷新、産業の創出に出遅れている事、仮に取り組んでいたとしても市場に上手く伝わってないことを指している。

2、GDP・・・世界的にアップグレードしている中、日本だけが伸ばせないという衝撃的な状態が25年くらい続いている。特に最近のトレンドが良くない。人口が日本の2/3のドイツに並ばれかねない状況。生産性が2/3になるという言うことでG7国としても由々しき状況。

3、一人当たりのGDP・・・30位で1960年頃の水準に戻っている。30年前は主要国の中では1位であった。

4、一人当たりの生産性・・・長らく全く伸びていない=半ば1人負け状態。バブルのせいではない。GDPが伸びないのは、人口問題以前に「生産性」が伸びていないからだ。

バブル以降15年余り、世界では一気に生産性が高まって来たが、日本だけが大きく伸ばせ無かったということだ。
我が国は半ば1人負け、もしくはゲームが始まったことに気付いていないと言っても良い状況にある。

5、産業別労働生産性

他国の生産性は、日本と比べてコマース分野などは2倍以上、今極めて大切な情報通信分野も3倍前後、農林水産分野に至っては米国が40倍以上、人口密度で比較的近い、ドイツ、英国、フランスも10倍以上と極端な開きがある。
日本の大半の産業は、やるべきことをやってないだけで、未だ着手出来ていない宿題が沢山あり、伸びしろだらけの国ということだ。

6、産業別のGDP比率
日本はインターネット、モバイル、クラウド等ICT(Information and Communication Technonogy=情報通信技術)で負けたんだ)という声が随分上がるが、日本と米国の600以上の項目をフェアに比較してみたが、ICTと呼ばれる産業セクタがGDPに締める割合は、日米でほぼ同じという意外な結果が出た。

7、産業別のGDP成長率(単位:日本=兆円、米国=10億ドル、日本:1995年~2015年、米国:1997年~2014年)

*米国のその他は不動産賃貸:70、金融・保険:45、医療・社会援助:39、専門的・科学的サービス:24、事務・廃棄物管理サービス:22、宿泊・飲食サービス:11、その他:71
この二つの比較からも、ICT分野以前に、先の指摘した通り、日本の大半の産業はやるべき宿題をやっていないだけで,厖大な伸びしろがあることが分る。

埋もれたままの三つの才能と情熱

1、2人以上世帯の貯蓄状況の推移
2017年段階で単身を除く世帯のほぼ3世帯に1つ(31%)が貯蓄(金融資産)を持っていない。
1963年(日本の発展途上期)の22%よりもはるかに高い、1950年代の戦後間もない頃の水準。
約30年前までは、ずっと1桁代、1987年は3%で実質ゼロに近い水準。
いかに、貧困層の拡大が起きてきているかが分る。

2、主要国最低賃金
①ドイツ、②フランス、③英国、④カナダ、⑤韓国、⑥日本、⑦米国
日本は、カナダ、韓国にも抜かれた。
このままの状態が続くと、2035年には貯蓄を持たない世帯が50%を超え、見事な途上国(或いは貧困国)状態に陥る。
「この状態は、少なくとも3分の1近い才能と情熱が単なる環境要因によってきちんと発揮される機会がなく、埋もれている」可能性が高い。

3、国別男女別 労働時間内訳
「家事・育児」と「給与労働」の時間を国別男女別に比べた表で男性の「家事、育児」の時間は41分/日で11ヶ国中、最も少ない。
女性の「給与時間」は、272分/日で、こちらは他の国とほぼ同じ水準。
また、男女共に労働時間の一番短いイタリアと比べると倍以上働いており、11ヶ国中、最も長い。ちなみにG7の中で、一人当たりのGDPはイタリアは半分の時間で日本の9割くらいであり、イタリアの人達の方が、人生としてみれば豊かなのだ。
日本の男性の労働時間はイタリアの2倍、ドイツの1.5倍、中国やインドと加良部手も一日当たり60分以上も給与労働時間が長い。
明らかに労働のしすぎ、言い換えると非効率なのだ
1900年代後半、米国ハーバードの女性入学者が半分以上を占めた。プリストン大学は2020年の女性比率は50.8%。
方や日本の東大の女性比率は2019年でも17.4%に過ぎない。

4、死亡年齢分布
平均寿命
男:81.25年  女:87.25年 最も死ぬ人の多い年齢では、男:88歳、女:92歳。日本は世界屈指の長寿国であり、「人生100年時代」を迎えている
しかし定年は65歳、つまり最も経験値を積んだ熟練労働者は能力と関係のない理由でいきなり退場させられる。 日本は、20歳から80歳まで範囲を広げるだけで、3割以上の経験豊かな労働力が増える。
人それぞれ、元気な人はトコトン働くことが健康年齢をアップさせることにもつながる。
<著者の解決策>
①採用の際に年齢性別を問わない。
②給与水準は、労働時間ではなく、産み出す価値ベースとする。
③週5日に捉われず、週1日でも2日でも、1日Ⅰ~2時間でもOK。
④入社直後だけでなく、担当や役割が変わる毎に、本人の意欲があり道理にかなっていれば、十二分なトレーニングを行いプロフェッショナルとして育成する。
⑤ダイナミックな配置転換。一つの会社に縛り付けず、違う会社間の移動を認める。
⑥生産性を下げる要因は徹底的に排除し快適な職場を目指す。

5、GDPに占める人材育成投資比率の国際比較(OJTを含まず)

最大のリソースである「人」に投資することなしに、どうやって未来を産み出すことが出来るだろうか?シニア層に限らず、あらゆる世代、属性の人に対して、人の育成、再生にまとまった伸びしろがあることは確かだ。

国力を支える科学技術の急激な衰退

1、主要国の論文数シェアの推移
2016年、中国は化学及び技術関連の論文数で米国を抜き去り、世界一になった。それに控え、日本はインドにも抜き去られた
15年ほど前、東京大学は世界の名だたる大学の次辺りに位置していたが、2019年夏現在、世界大学ランキングでアジア6位、世界42位となっている。

2、計算機科学分野で際立つ遅れ
物理分野では、東大は世界第8位に入っている。トップ10で、米国が7校入っている。
しかし、今の世の中を変えている分野のプレゼンスは驚くほど低く、計算科学分野を見ると東大135位、東北大180位という惨憺たる状態。1位は精華大学で、中国がトップ10に4校入っており、米国、シンガポール2校づつを抜いてダントツだ。
同ランキングで他の分野を見ると、化学=京大22位、生物/生物化学=東大32位、数学=東大32位、宇宙科学=東大21位であり、計算機科学に対する日本の力の入れようが低いのが良く分る。
何故、日本は「データ×AI分野」で立ち遅れたのか?
≪その理由≫
①様々な所から多様なビッグデータが取れ、色々な用途に使えること。
②圧倒的なデータ処理力を持っている事。データ処理力とは技術でありコスト競争力だ。
③これらの利活用の仕組みを作り、回す世界トップレベルの情報科学サイエンティスト、そしてデータエンジニアリングがいるということだ。
まず①のデータについて
スマホ上のインターネットの世界は大きなデータを生んでいる。しかし日本最大級のインターネット事業会社のヤフーは日本では最大級のインターネット事業会社であるが、米国Googleや中国Baiduは一桁多い10億人前後にサービスを提供している
コマースの場合、楽天は国内最大のプレーヤーだが、同じくAmazon,Alibabaグループと比べればやはり一桁少ない。 ソーシャルの場合、LINEは国内では断トツでも、WhatsAppやWeChatなどと比べれば一桁少ない
またこれ等以外の領域でデータを利活用しようとすると、この国ではUber,Aribnbのような個人資産を活用するタイプのシェアリングビジネスはことごとく制限がかかっている。
既存業態を保護する目的で、いまだに国内での圧倒的なユーザ指示が無視されている状態だ
2015年当たりに米国の大学生の間でデファクトとなったvenmoという送金・割り勘サービスも、銀行業法の壁に遮られた。
このように日本は、ユーザ保護ではなく、既存業態保護行政のために、幅広くデータの力を解き放つことが出来ていない。
自動走行車も、日本の道は狭い道が多く、且つ双方向可能な道路が多く、すれ違いが難しいような道路が多く、実際に走るとなると難しいし、ドローンも高層ビルの間に平屋の家が有ったりして、極めて飛ばしにくい。
このように日本はそもそもAIに適したまちづくりをしてないために、データ取り込みと保護規制が仮に問題無くなったとしても利活用の壁は高い。

次に②のデータの処理力について
日本の産業用電気代は、ヤフーの実績値で米国よりも5~10倍高い。更に中国は米国よりも格段に安いと言われており、日本と数十倍のコスト差がある可能性が高い。だから、膨大な情報処理が必要なビットコインのマイニングは大半が中国で行われるのだ
また、日本にはビッグデータ系でグローバルに使われるような「技術プラットフォーム」が無い
…と云うことで、日本はグローバルに戦えるような商業的技術基盤がないうえ、データ処理を行うためのコスト競争力がないという状況で、勝負になっていない。

③のエンジニア、専門家のこと
この国には、大量データを処理するデータエンジニアリングに熟達した人材が足りていない。
実際、ICT業界の海外の大手プラットフォーマ―からは、「もっともデータ×AI人材が手に入らない国」、「日本だけ基準を下げないと人が採れない」などと言われている。


3、理工系の学生の数
人材が少ない理由の一つに、日本では大学進学者のうち理工系(医学、薬学を除く)が2割しかいないことになる。その結果、韓国と比べても10万人以上も大卒者で理工系の人の数が少ない。ちなみに韓国の人口は日本の半分以下である。
韓国やドイツは技術立国という意識が強く、大卒の3分の2近くが理工系で、日本とは真逆。米国の3分の1、ポーランドやルーマニアなどの数学大国から比べると1桁少ない
また日本では、2017年にようやく一つデータサイエンスに関する学位取得プログラムが滋賀大学に出来、この1~2年で横浜大学他で急速に立ち上がりつつあるが、米国では同2017年には既に500以上のデータサイエンスに関する学位取得プログラムが立ち上がり、既に人財供給問題にはケリがついている。
データエンジニアリングの基礎と云うべき計算機科学についても、米国トップクラスでは半ば学ぶことが常識となりつつあるが、日本は東工大ですら定員が年間100名ほどに過ぎない。
このような状態では、「日本の若者達は持つべき武器を持たずに戦場に出ている」ようなものだ
米国や中国ではこういうテックギーク(ネットオタク)達がMBAやロースクール出身の連中と一緒になって数多くの世の中を変えるスタートアップを産み出している。
Yahooのジェリー・ヤン、Googleを産み出したラリー・ペイジ、Facebookのマーク・ザッカ―バーグ、Teslaのイーロン・マスク…皆テックギークだ。日本には現れない。
日本の500万~1000万人いる実験を握るミドル・マネジメント層は、残念ながら、このチャンスと聴き、現代の挑戦の幅と深さを理解していない人が大半だ
またこの層にこそ、ビジネス課題とサイエンス・エンジニアリングを繋ぐアーキテクト(計画立案者)的な人財が必要だが、殆どの会社で枯渇している。
逆にこの人達が、日本のあらゆる産業の刷新を止め、AIネイティブな世代を引き上げるでもなく、この国を更に衰退に繫いでしまう。
ジャマおじ」、「ジャマおば」だらけの社会になってしまっている。


現在の状況は黒船来航時と同じ状況に

以上見てきた通り、今の日本は、データ、利活用、処理力、人…いずれの視点でも勝負になっていない。これは1853年の黒船来航時の時の状況そのものであり、当時の旗本(今で言えば霞が関の局長のような人達)と思われる侍たちが、外国人が乗り込んでくる姿を唖然と見ているような光景だ。
10年ほど前、マッキンゼーの戦略研究グループが、主要企業3000社に「事業の成長を決める本当の要因は何か」という話であった。そこで選ばれた要因は4つ。
①戦略、②実行力、③リーダー、④市場 だった。
そしてこの検討の結果「事業の7割以上が単一のファクター=『市場』によって説明できる」というものだった。
すなわち、どれほど優れた戦略、偉大なリーダー、そして実行力があろうとも、市場を間違えると、どうしようもないということだ。時代に逆行したことをすれば、どんな偉大な企業も沈んでしまうということだ
逆に言えば、時代の潮流に乗れば、ほぼ確実に成長できるということだ。これは前述の世界企業ランキングを見れば一目瞭然だ。
孫正義氏が、いつも言われるように「どこの山に登るか」が大事だ。
これほど、データ×AI化、テクノロジーとデザイン力をテコにした事業や領域の刷新という強い変化が世界的に起きている現在、この流れに乗らない手はない。自分たちはちゃんと大きなトレンドに反した動きをしていないだろうか?正しいスピードで進んでいるだろうか?
国も事業も常にこれらを確認することが重要だ。
「これからも日本が、ある程度以上に豊かな国で居られるか」という問いについていえば、ほぼNOという答えがでてくる。ここまで見てきたとおりの現状で、このまま経済的な推進力を失ってしまえば、この国はそれ程遠くない未来に半ば中進国になることが見えているからだ。」

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シン・二ホン…その一

安宅和人著

この本は昨年2月に発刊されているが、私は最近この本を読み、衝撃を受けた。
当社では、毎日勉強会を開催しているが、その一環としてこの本をとりあげた
私はいままで日本は、世界に誇るべき「最新技術」を持つ国、「先端技術」の国と思っていたのだが、全く違っていた。
この大変な技術革新の時代、とりわけ情報革新の時代の20年間、日本はこの科学技術分野において、そして他の産業においても、かなり遅れを取ってきていることを知らされたのだった。
安宅氏は「これからも日本が、ある程度以上に豊かな国で居られるか」という問いについていえば、ほぼNOという答えがでてくる。ここまで見てきたとおりの現状で、このまま経済的な推進力を失ってしまえば、この国はそれ程遠くない未来に半ば中進国になることが見えているからだ。」…と云っている。
また、「自分を取り巻く現実を直視できないのは人の常だが、それにしても、この世の中の変化と意味合いをファクト(事実)に基づき、全体観を持って語る建設的な議論はとても少ない」…とも云っている。

 一章
 データ×Aiが人類を再び解き放つ - 時代の全体観と変化の本質

  誰もが、あえて出る釘になる
  決意をしなければ、
  時代はひらかれない。
           ― 岡本太郎

Ai×データ時代における日本の再生と人材育成
1、人対AI
  囲碁での勝負・・・AIの完全勝利
  AIは3週間で3000万回の対局が出来る
  方や、人間は一日一局30年で1万1,000局
  圧倒的な訓練量の違い

2、AIの能力
<識別>
  町中のセンサーで、即時に発砲地点を通報する
  顔画像だけで双子まで明確に判別する
  一筆見ただけで贋作を見破る
  世界最高レベルで皮膚がんの識別を行う
  動画を読唇する
  200mは離れていても心臓の鼓動で人を判別する
  歩き方から人物が誰か、認知症に羅患しているかを判別
<予測>
  電車の現在の状態を自動で察知し、問題がある場合は、事前に代替え路線を提案する
  人の購買欲の高さを予見する
  成功するスタートアップ会社を判別し予測する
  機械が壊れることを1ケ月前に予測する
<実行>
  複数言語の翻訳を瞬時に行う
  モノクロ写真に色を付ける
  モネやビートルズのような特定のアーティストの作品の芸風を学習し、酷似したスタイルで新たな作品を作る
  リアルタイムで表情と声を他の人物像に移し替える
  様々な物体のピッキング作業試行錯誤を通じ学習する
  乗車中360°を常時モニターし、周囲の交通事故に巻き込まれることを防ぐ

3、生産性
人類は2000年間で約二倍の効率になった。その後の100年で50~100倍に、これから数十年後にはもう一段跳ね上がるだろう➡指数関数的な驚異的な曲線を描く
・ディープラーニングは多用途には使えない➡用途に沿った大量データ/経験が必要
AIは、データが増えれば増えるほどその能力を発揮する。(上記の例)

4、AIとは、「速い計算環境、もしくは計算機(コンピュータ)に、情報を処理したりパターン学習したりするための情報科学技術(アルゴリズム群)を実装し、最終目的に即した膨大な訓練を与えたものだ
 早くいえば、「膨大なデータにより膨大なシュミレーションを繰り返した超高速計算機」…と云うことだ。
 マシンには人間のように経験から類推する力がないため、データがないモノ、少ないモノには使えない。

データ×AIテクノロジーの身近な例
 ①米国で100年以上同じ服を作っているリーバイスが、導電繊維を織り込んだジージャンをGooGleと共同で開発し、袖口をなでたり、タップしたリスルだけで音楽を聴けたり、ナビの機能が働くようなスマホ連動型のジージャンを2017年9月に売り出した。
 ②中国、アメリカの無人の店舗。➡お客は買いたいものを自分のバックに入れて店を出れば、スマホで自動的に支払いがされるシステム。
 ③中国のスーパーで、タグが紙ではなく電子インクで、商品の情報が記されており、スマホで読み取ると、更にその商品の詳しい情報が解る。
 ④米国のスタートアップの会社は、垂直な壁に野菜を植え、横からのLED照射により最小の農薬、肥料で野菜を育成している。季節性も、気候も超越し、都会のビルの中でも栽培が可能。
 その多くの仕事が機械に置き換わるため、私達は、より難しい問題に集中できるようになる。また、情報が素早く可視化されるため、意思決定が正確でスピーディーになる。

データ×AI活用の基本ループ
 1、サービス価値
 2、ユーザ数・ユーザ利用
 3、データ・状況把握
 4、アルゴリズムの性能が上がる
 5、打ち手の質の向上
このサイクルがぐるぐる回ることにより、学習が高まり、サ-ビスが飛躍的に向上する
・各分野では早い者勝ち。TQC等も本質的な影響を受けるであろう。
・データは持っている人と、それを必要とする人が繋がらなければ価値を生まない。
・個人情報漏えい防止ということで、データの拡散を規制する方向があるが、これは自社で様々なデータを持ち、それを1社で使えるメガプラットフォーマーのGAFAとかBATJとかが圧倒的な力を握る世の中となる。
・どこでもデータを繋がりやすくし、データの利活用をオープンに出来る国や市場が、人類の未来を産み出す“場”となる可能性が高い。
・またこの世界では、パーツの何もかもを自分で作り込む必要が無い
Uberは地図はGoogleに決済システムはBraintreeに、通話・SNS機能はTwilioに任せることでサービスを迅速に立ち上げた。これを”マッシュアップ”という。
何もかもブラックボックスにして競争優位にする時代は終わりつつある
・ソニーの新型aiboは,月々2980円取られるが、この各aiboのデータは毎日クラウドに送りこまれ、これをベースにアルゴリズムが進化し、またそれが各個体にフィードバックされるため、飼い主から見ると、aiboが日々進化しチャーミングな存在になって行く。
このaiboと同じことが、これから多くの商品やサービスに起こって来る。その商品やサービスは学習し、変化し続ける。つまり半ば生きている状態になる
テスラの車は「走るスマホ」と呼ばれる。
このようにあらゆるものがIOT化し、リアルタイムででメンテナンス、そして顧客対応が可能になる。これからは産業の多くのモノが複合機のようになり、各事業者はこれまでとは比較にならないほど顧客と長い取引をすることになる

5、キカイは分子レベルでデザインする時代
 分子レベルのキカイになると当然ながら、エンジンもモーターも不要。化学的なエネルギーで動く。(2016年にノーベル賞受賞=15,6年前から研究していたということ
 人間すらデザイン可能な時代になった。2018年11月に遺伝子改変した胚から本物の人間の子供が誕生した
 世界の重心が急速にアジアに戻りつつある。
 中国は遅くとも2030年までに米国を追い越して世界経済、情報科学のトップになる。
 インドも中国に続く。
 マイクロソフトのCEO,グーグルのCEOは共にインド系だ。
このような地政学的な重心の変化は日本にとっては千歳一隅のチャンスと云える。現在トップの米国と同盟関係にあり、次のトップとなる中国の隣国

6、未来の方程式
1900年のニューヨークの写真…馬車が沢山走っている。
1913年     〃    …車で溢れかえっている。馬の代わりに車の世話をする産業が一気に花開いた。
                たったの13年!
2007年にi-Phoneが生まれてから12年、世界のPCの出荷の7割がスマホになり、インターネット利用の半分を超している。(2019年)
アマゾン、アップル、アルファベット、フェイスブック、テンセント、アリババと世界の時価総額トップ10の企業の半分以上がスマホ関連業務を本業とするのは当然といえる。

質的に変わる富を生む方程式
テスラが企業価値でGMを抜いた。(今はトヨタも抜いた)…売上はGM、トヨタ、VWの1/30以下。
特に留意すべきは、これらのスタートアップ企業は、それまでのIBM,GE,ウォルマート等の巨大企業から生まれたのではないという事実だ。
全く見えないところから新しいゲームが始まり、そこに参加しなかったために、今じり貧となってきているのだ。
これは、極限的な下剋上の時代に突入している。オールドエコノミーのど真ん中にあった自動車産業で起きたようなことが、これからあらゆる産業で起きる可能性が高い。
これまでは「スケール」をとり。大きな売上、付加価値、そして利益を生めば企業価値に繋がることが、富を生む方程式だった。しかし、これからは、「未来を変えている感」が企業価値になり、これをテコに投資し、最終的に付加価値、そして利益に繋がるという真逆の流れになった

ld  Game             New Game

市場でのプレゼンス・寡占      未来への期待感・寄与

既存の枠組みの中での規模と     既存の枠組みを超えICT、技術革新を

効率の追求             テコに世の中をアップデート

既存のルールでのサバイバル     ジャングルを切り開きサバイバル

スタートアップには大企業のような信用はないが、逆に重荷になるような資産や組織が無い。必要な人員だけで成り立ち、お荷物になる人が居ない。
自由奔放に人や金を集めることが出来る

主要先進国は人口調整局面に突入
 これらの既に大きなシェアを持つ大企業は、この人口減少のマクロトレンドは負の方向に働くが、伸びしろの大きなスタートアップには、全く影響しない。企業価値の下剋上が起こりやすい理由の一つはここにある。
 アジア、アフリカも遠からず人口調整局面に陥って行く
 単にリアル空間でのスケールメリットの時代は終了した。技術をテコに世の中を刷新、アップデートできるような企業に事業価値が生まれるようになったのだ。
 電話、計算機、PDA(携帯情報端末)、iPodを全て統合し、iPhoneを産み出したスティーブ・ジョブズ、そして持続可能なエネルギーの世界を創るというイーロン・マスクのように、「妄想し、カタチにする」ことが冨に直結する時代だ。
 企業価値はハード軸・実数軸を中心とした規模間の世界から、データ、AI,ロボティスクのような情報・新技術をベースにした虚数軸を掛け合わせた世界、すなわち“複素数平面ゲーム」へと移行したということだ。
 モノ・カネ(実数)…トヨタ、GM,ExxonMobik等
 データ&AI/Robot(虚数)…Apple,Microsoft,Alphbet,Facebook,Amazon,Tencent,Alibaba等

 ウェブ上でも、昨今の新聞、雑誌等は、『新しい技術』の話ばかりしているが、本当に技術だけを身に付けたら未来は生み出せるだろうか?
 答えは否だ。
 未来は我々の課題意識、或いは夢を何らかの技・技術で解き、それをデザイン、パッケージしたもの、すなわち「未来(商品・サービス=課題・夢×技術(Tech)×デザイン(Art)」なのだ。
 こんな課題を解きたい、こんな世界を産み出したい、そういう気持ち無しで、“手なり”以外の未来など生まれる理由がない。
 ここでは技術軸そのものの発展については棚上げしている。様々なAIの利活用のベースとなる「システム×データ×ハード」の進化の方向性はある程度見える。
 しかしどんな未来が創られるかは、我々がどのような課題にどう技術を適用するか、そしてどんな未来を描くかによって全く違うものになって行く。

デザインの新しい定義
 ソニーのウォークマンとアップルのiPodの違い
 機能的にはほとんど変わらないが、iPodは明らかに「描いた絵の大きさ」、「デザイン、それも画期的なクリックホィールによる操作性、iTunesに代表されるソフトウエアとの完全なる融合、デジタル音源の版権処理、それを流通させるためのビジネスモデルなど、全てが一体となったデザインだ。
 これからの未来を変えようと思うのであれば、デザインという言葉の意味を幅広く捉え直し、鍛え上げる必要がある。日本語の「デザイン」は意匠にとどまった意味になりがちだが、英語本来の意味合いに立ち返る時が来ている。
 技術の実装だけで未来を変えることは難しい。単なる技術オタクではダメなのだ。大切なのは、目に見えない特別な価値を生み出せるかどうかだ。素晴らしい世界を描き、領域を超えたものをデザインする力が。これまで以上に重要な時代となった
 この観点からも、習ったことをきっちりやる”マシン”的な人では、新しい価値を生み出しようがないということが分る。
 従来型の喫茶店とスターバックスの違いは何か
 人がいいなと思うことを先んじて感じ、それを自分なりに表現できる人が重要になる。言葉でもえでもいい、両方あるとさらに良い。そういう「目に見えない価値を創造し生み出せる人を育てたり、自分もなれるようにする必要がある。
 新たな価値観(夢)とそれを形にする力(デザイン)が我々の未来の価値を生み出して行くもう一つの力になる

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ホームページリニューアル

大分長らくお待たせいたしました。
ようやくホームページのリニューアルとなりました。
その代わり、今回のホームページは、当社の最新情報が入っており、きっと皆さまのお役に立てることと確信しております。
この数ヶ月間、コロナでどこへも行けず、来るお客様も少なく、頼みの綱のホームページも「工事中」で、心もとない状態だったが、私が唯一手掛ける「高密度圧縮・成型コイル」の営業は、結構ロングランのものが多く、そこへ確実に1件、また1件と増えつつあり、今や開発は手一杯状態だ。
今迄の当社の新規技術は、殆ど開発の室長一人でこなしていたが、ここに来て彼の甥っ子と当社の新社長がその技術を引き継ぎつつあり、体制も整いつつある。
今後は社長が後塵に、その技術を伝授できれば、更に分厚い開発・試作部隊が整ってくるかと思う。
このコロナ禍で変わってきたことと云えば、「渦電流損」の話が、同時多発的に増えた…と云うことだ。それまでは銅損対策で、とにかく占積率を上げることに特化していたのが、急にパラ線、リッツ線、集合線…と云った、太線を分割する巻線技術が求められ、これも占積率を上げる高密度巻線を求められるようになってきたということだ。
そこへ行くと当社は、パラ線巻きの高密度化は、これまでやってきていることだし、リッツ線はIH関係で20年以上前から手掛けており、パナソニックさんの立ち上げ当初は当社が電線会社の下請けで巻いてアッセンブリーしていたことから、様々なノウハウ、技術はその当時から身に付いている。
また撚らなくてよい「集合線」は、これこそ当社の高密度巻線が生きてくるし、更に占積率の問題になれば、圧縮技術も使える。
やはりこういう状態になると、コイルに関しては様々な事をやり続けてきた当社の強みが発揮される。
リッツ線と云えば、無接点充電の関係も当社は強い。
今は、AGV(無人運送車)の関係が多いが、最終的にはやはり車載用となる。
こちらも様々な試作をやりながら技術を集約しつつある。

とにかく、ホームページが復活したことからその辺の技術も紹介しているが、なかなか秘密保持の関係でオープンに出来ない技術も多い。
私は、2025年からと云われる車関係もいいが、もっと足の速い家電とか、産業機械とかの分野でこれらの技術を使い他社との差別化を図って戴きたいと思っている。

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