これからのモーター・センサー業界をリードする株式会社セルコの「高密度コイル」

1)常識を覆すコイル

これまで、コイル巻線というと、ただただ「安く」・・・というだけで、その巻線の密度に気を使うことがあまり無かったかと思います。

私自身は商科の出身であり、事務畑、管理畑の人間ですので、詳細なコイルの技術的な面は良く分かりませんが、10数年前当社の技術者が、このコイルの常識に反し、巻く時間よりも巻線の精度に焦点を合わせる様を見て、正直焦りました。

コイル屋としては、3秒でも、1秒でも、0.5秒でもタクトを縮めることが、最も重要でなことであり、コイルの精度は二の次、三の次だったからであります。

しかし結果的には、当社はこの精度重視の「高密度コイル」技術によって会社が救われることになったのです。

皮肉にもコイル屋の”非常識“が、今後の”常識“となって行く可能性すら出てきたということです。

「高密度コイルの断面写真(電線間の隙間が無い)」

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下町ロケット・・・池井戸 潤

 TBSのテレビドラマ「半沢直樹」が大ヒットした。ここで、この原作者池井戸潤氏が書いた直木賞受賞作品「下町ロケット」という本を紹介しておきたい。

 これは、ある人と半沢直樹の話をしていた時、「社長は池井戸さんの『下町ロケット』という本を読みましたか?あの本に書かれている会社は御社とそっくり、御社そのものですヨ」と言われ、基本的にフィクションモノは読まない私だったが、即、この本を買った。

 その内容は、言われる通り技術力を盾に大企業と渡り合っている当社を誇張して描いたようなストーリーであり面白くって一気に読んだ。

 主人公は東京大田区にある従業員200名位の小型エンジンを造る佃製作所という町工場の佃社長。この会社は、技術にこだわりを持ち、誇りを持って営業しているが、ある日、大手のメーカー、ナカシマ工業から90億円の特許侵害で訴えられる。

 世の中は、有名大手のナカシマ工業がちっぽけな町工場を訴えたとなると、どう見ても大きい方が“正統・有利”、小さい方は“不当・不利”という見方をする。

 案の定、メイン得意先の一社より内製化による発注打ち切りにあい、資金繰りに困りメインバンクに融資の相談に行くと、この訴訟問題が大きな障害となり、融資を断られてしまう。

 そこへまた、大手のロケットを手掛ける帝国重工より、別途にこの社長が手掛け開発したロケット用の水素エンジンの特許を売ってくれとのオファーが来る。

 当然、この帝国重工はこの佃製作所の苦境を知って、この隙に安く買い叩こう・・という魂胆である。

 ところが、色んな展開の末、結局この佃製作所はナカシマ工業に対し逆提訴、それに勝訴し逆に50億円を超す和解金を得ることになってしまった。

 それまで、融資を渋っていたメイン銀行の支店長が飛んできたが佃社長はこの銀行に対し「取引停止」を言い渡す。

 帝国重工はなかなか特許の売りも、特許の使用契約にも同意しない佃製作所に、結局この水素エンジンを造らせるべく監査をすることとなった。

その監査の当日の場面が面白い。

 この帝国重工の監査人は、最初からこの会社を監査で振り落とそうとの意向があるため、現行赤字状態を責めたり、様々な荒探しをする中で、訴えて逆敗訴したナカシマ工業が造ったシリンダーと佃製作所製のシリンダーの性能比べをする場面がある。

 最初に試したシリンダーは完璧であり、もう一つの方は60点と監査員が点を付けた。

 当然、最初の製品がナカシマ工業で後が佃製作所のモノと思っていた監査員に佃の社員が言う。「最初のがウチのシリンダーで、次のモノはナカシマ工業製です」

 私が、今までに言ってきたことが、フィクションではあるが見事に書かれている。

 大企業は、よーいドンで同じものを造ったら、絶対的に自分の方のモノが優れていると思っているが、実は、機械設備も劣り、学歴も劣る中小零細のモノ造りの方が優れていることが多いのである。

また、大企業にとっては中小零細の技術、ノウハウは“只”。

 だからナカシマ工業のように、先を越された特許に対し、金と大企業の総合力で佃製作所を押しつぶしてやろうという考えが浮かぶ。

 この物語は小説だから逆提訴して逆に和解金をせしめたが、通常はそうはいかない。特許があろうが無かろうが、特殊技術があろうが無かろうが、自分の欲しい技術は、あらゆる手を尽くして手に入れるのが日本のメーカー。

 その際、金を払って話を付ける・・・という選択肢はよっぽどのことでなければ取らない。

 これはこの帝国重工の逸話を見ても分かるかと思う。

 社長命令で、全て自社の技術で賄うという大原則に立ちはだかったのが、この佃製作所の特許技術。この特許技術を避けて開発するとなると時間がかかり とても無理、①佃からの特許の購入、②特許の借り入れ、③当該部品の購入・・・という選択肢の中で結局は佃製作所の粘り勝ちで③の選択となった・・というストーリーであるが、このような大企業にとって”最悪の事態“となるまでの帝国重工内での葛藤は、”さもありなン”と思わせるような場面がふんだんに登場した。

 モノ造りは、一般的に大きい会社は全てにおいて上・・・ましてや製品の品質に関しては会社の“大きさに比例する”と思っている向きもあろうかと思うが、現実は異なり、この物語の通りなのだ。

 総合力ではとてもかなわないが、その部分、部分、製品の部品一点一点であれば、間違いなく町工場=中小零細のモノ造りが勝るかと思う。

 だから大企業は、素直にこれを認め、中小零細をきちっと一個の企業と見做し、対価を払い、強力なパートナーとして部品を発注すべきなのだ。

 コマツ製作所のように、協力工場との固い絆が構築されていれば、それこそ湯水のような様々なアイデアが出てきて、カイゼン、改革がドンドン進み、たちまち製品毎に”最高品質“を目指すことも可能となること請け合いである。

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イプシロン打ち上げ成功!

以前は、毎回失敗していた日本製のH2ロケットは最近20回連続、打ち上げに成功している。

これらの部品も、結構中小零細が請け負っているが、以前は、この部分はこうしないと良くない・・と指摘しても、「設計図通りやればよい!」と一喝され、全く聴く耳を持たなかったと聞く。

 最近は、当社でも、ロケットや衛星のコイルを請け負っており、結構我々の意見も通るようにはなっているかと思うが、基本は依然“これまで実績のある造り方”が基本となっており、結構がんじがらめの部分もある。

 もっと安くて、いいものを造るのであれば、もっと我々の意見を取り入れるべきであると思う。 

9月14日、JAXAはイプシロンロケットの打ち上げに成功した。

 このロケットには当社の高密度コイルが使われており、もう何年も前から、いつかいつか?と心待ちにしていたのが、ようやく私もブログに書き込めるようになった。

 先月末に打ち上げられる予定が伸びたため、なおさら今回はうれしい! 

日本経済新聞社の記事より見てみよう。 

宇宙産業、海外開拓へ イプシロン打ち上げ ~新興国向け「安さ」競う
    国産小型ロケット「イプシロン」の打ち上げが14日成功し、惑星観測衛星を予定の軌道に乗せた。小型衛星を安く打ち上げられる新型ロケットの実績を手にし、国内宇宙関連メーカーの目は本格的に海外市場の開拓に向く。新興国の衛星打ち上げ需要を取り込み、官需依存からの脱却をめざす。「独り立ち」に向け、スタート点に立った。  

IHIエアロスペースはイプシロンの生産を担う(群馬県富岡市)=JAXA/JOE NISHIZAWA提供

     イプシロンは宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発し、IHIエアロスペース(東京・江東)が生産。先端部で衛星を覆う「フェアリング」は川崎重工業、計測通信系機器はNEC、ガスジェット装置を三菱重工業が納入するなど、ほぼ純国産といっていい。

     日本の宇宙関連産業の2012年度の売上高は2800億円規模とみられ、世界シェアは数%。売り上げのほとんどを政府が支える構造だ。政府は今年1月に決定した今後5年の「宇宙基本計画」で民間需要と海外需要の取り込みを明記し、イプシロンをその主力ロケットと位置付けている。

     ロケットの競争力を左右する大きな要素は打ち上げコストだ。イプシロンの場合、今回の初号機こそ53億円だが、2号機以降は38億円、量産に入る17年以降は30億円以下をめざす。

     初号機はいわば「安全運転のロケット」(木内重基IHIエアロ社長)で、既にロケットに搭載実績がある素材や部品を多く使った。これらを機能性が高い先端素材に置き換えていけば「性能と価格の両方を改善できる」(木内氏)という。

     科学観測や防災などに使う小型衛星の需要はアジアの新興国を中心に伸びると予想される。だが米国や欧州、ロシア、中国、インドがしのぎを削る世界の商業衛星打ち上げ市場で勝ち抜くのは容易でない。

     商業ロケット最大手の欧州アリアンスペースが昨年、打ち上げ能力を小型衛星向けに1.5トンに抑えたロケット「ベガ」を投入するなど、既に顧客獲得競争は始まっている。ロシアは弾道ミサイルを転用したロケットで打ち上げコストを大幅に抑えている。

     ロケットだけでなく、搭載する小型衛星も新興国に売り込みたいというのが日本勢の思惑だ。イプシロンが今回運んだ衛星はNEC製。惑星を観測するための宇宙望遠鏡は住友重機械工業が生産した。IHIは昨年、超小型衛星や衛星搭載カメラなどを生産する明星電気を買収。ロケットと衛星の両方を手掛ける「総合メーカー」をめざす。

     日本の宇宙産業は今回のイプシロンの打ち上げ成功で、名実ともに国際競争に参加する切符を手に入れた。新興国が宇宙利用を本格化させる初期の段階で新興国に食い込めば、三菱重工や三菱電機が手がける大型のロケット・衛星でも案件を獲得しやすくなる効果が見込める。

     イプシロンの打ち上げを現地で見守ったIHIの斎藤保社長は「日本の航空宇宙事業の『産業化』に力を尽くす」と語った。日本の宇宙ビジネスが思い描く「成長軌道」に乗れるかどうか、正念場はこれからだ。

このロケットは、「日本の宇宙開発の父」と呼ばれ、小惑星探査機「はやぶさ」が行った惑星「イトカワ」の名前となった糸川英夫博士が1955年に発射したペンシルロケットの流れを汲む日本独自の固体燃料ロケットとのこと。

このロケットは、最新のIT技術を駆使し、コストを大幅に削減し「ロケットの世界に革命をもたらす」と言われ、将来の世界標準になる可能性があると注目されている。

このロケットは人工知能を備え、打ち上げ前の点検を自ら全自動でし、準備完了を知らせるため、従来は100名程の作業員が必要だったのが、ノートパソコンでたったの数人でできる等、小型軽量、大きさもコストも従来のロケットの半分。

コストは、これまでの100億円に対し、今回は53億円、次は38億円と約1/3になり、更にコストダウンが可能。

宇宙関連の産業もこのイプシロン打ち上げ成功により、これからの日本は世界をリードする可能性がある。

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ホームページのリニューアル

当社のホームページがリニューアルしている。
出来るだけ、ページの追加や修正ができるように・・・との機能的な面と、これからの当社の方向付けを示したホームページとなっている。
このホームページ最大のコンセㇷ゚トとは、「高密度コイルの量産化」だ。
高密度コイルは、ここに来て、様々なメーカーが注目し始めてきている。
各メーカーが、モーターの追求をして、結局最後に辿りつくのが、コイルの“巻き”の問題なのだ。
これまで、コイルは決められた径の電線を決められた数巻けば、それでいい・・ということで、巻きについては、「乱巻よりは順整列巻き、できれば整列巻き」という位で、それほど重要視されず、とにかく安く造ることに多くの関心があった。
私は、この高密度コイルについては、当社が特許を出した8年前から、必ずや最終的には、コイルは高密度か、それに準じた巻線が必要な時代が来る・・・と思った。
それ以降、広告やブログでは、ずーっと言い続けてきたが、なかなか世の中の”安さ“追求の波には勝てずに、数社の理解を得ただけで、ここまで来てしまった。
しかし、ここに来てようやく有力メーカーさん数社から、同時多発的にこの高密度コイルを使って究極のモーターを狙いたい・・・というようなオファーが来ている。

今回のホームページでは、この高密度コイルはタイでも中国でも造りますヨ、そして国内は自動化を考えますヨ!というコンセプトです。

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