書籍の出版

私は、今から4年半前に「立ち上がれ中小零細企業」という本をディスカヴァ・トゥエンティワンという出版社から出版しました。 この本は、出版社の思惑が外れ、あまり売れませんでしたが、読んだ方々からは、大変な評価を戴き、講演にも結構呼ばれ、その後も当社のこのブログて、私の考え方、思いを書き続けてきましたが、今、この時点において、これはどうしても言っておかなければ・・・と言う思いが募り、今回2冊目の本を書き上げました。

 意気揚々と、ディスカヴァさんに持ち込みましたが、何度かのやり取りの後、結局、前回の本が売れなかったこともあり、今回は不採用となってしまいました。

  そこで、友人の中河さんという方にお手伝い願い、”電子書籍”という方法で出版することにしました。

  それが下記のDLmarketという電子書籍の媒体です。

  皆さん是非、読んで戴きたいと思います。1冊税込500円です。

  どこかをクリックすると、飛んで行きます。

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【2020年 東京五輪の年に メイド・イン・ジャパンが復活する!!(上)】

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中国の経済発展と国民意識の変化

今月初めに中国大連工場の従業員の結婚式があり、大連に出張に行った。

ちょうど中国は国慶節に当たり、工場は休みであり結婚式が済んだ週末に観光地へ行った。

 これが、どこへ行こうが凄い混みようで、”日本人面”しておっとり構えていると、チケットも買えない。

 日本に戻ってからの情報で、中国のこの国慶節中の観光客は、何と4億2千8百万人だったということである。

 実に中国の人口の1/3、日本総人口の約4倍近い人がこの休み中に観光に繰り出した・・・と言うことだ。

 それまで、自分の街かその周辺しか行ったことのない人々が、経済発展の恩恵を受け、香港、上海、北京、万里の頂上等々の観光地を中心に、多くの人々が繰り出した。

最近、中国経済の失速、シャドウバンキングの関係でバブルがハジケルのでは?と盛んに言われているが、この観光客を見る限り、中国経済の失速はまずない!と思われる。

 確かに、各地区で滅茶苦茶な開発をし、ビルが建てかけたまま放置されたり、マンションが建っているにも拘らず、人が全く住んでしないような、ゴーストタウンが中国国内に沢山あるらしいが、私が大連に最初に行った10数年前にもそのような光景を見た。

 空港から大連へ向かう道すがら、このゴーストタウン的なマンションの連立状態を見た。

 勿論最初にマンションが建った状態で人が住んで居ないのは当然だが、これが1年、2年経ってもさっぱり人が入らない状態を見たら、これはどういうことか?と誰しも思うかと思う。

 私も、そう思った。きちっと計画され、需要と供給のバランスを考えながら、進むのが”経済”の原則であり、いくら行政がやることだからと言って、1年も2年も前に先行してマンション等を建ててしまうというようなやり方は無いだろう・・・と思った。

 それから、しばらくの間私は大連に行っていなかったが、2年ほど前から、また工場設立のため、行くようになった。

 これがまた驚きであった。

 このゴーストマンションが一杯に埋まり、逆にあっちでもこっちでもさらなる高層マンションが立ち並び、更に建設中のマンションが数知れなくあるのである。

”経済発展”と言う”お化け“の姿を目の当たりに見たのである。

 日本の経済成長期も全く同じで東京はもとより地方の開発もすさまじかったが、中国のようにマンションを建ててから数年誰も入らない・・・と言うようなことはなかったかと思う。

 自由経済圏の日本と社会主義国の中国との違いを感じさせる事例である。

 とにかく、多少のバブルでゴーストタウンがアチコチ立ち並ぶかもしれないが、中国の経済はまだまだ”発展途上”にあると感じた。

 あの観光地の賑わいを見ていると、そのパワーの凄さは、すさまじく、簡単にブレーキはかけられそうにない。

ただ、急速な経済発展は様々な社会の歪を生み出し、環境の破壊をもたらす。

 最近の大気汚染は車や工場の発展に伴い輪をかけてひどい状態になってしまっている。

 中国としては、ここは、やはり発展途上国の先般としての日本のノウハウを素直に学ぶべきであるし、日本も手を差し伸べるべきである。

尖閣諸島で国同士がにらみ合っても、何もいいものは生まれない。

 中国は、これから日本の一番のお客様である。

 中国は、環境汚染の問題もそうだが、今まで日本が歩んだ道を歩む。

 勿論、自分でできることはやるかと思うが、間違いなく日本でしかできないモノが沢山ある。

 日本の経済振興のためにも、これからは、隣の国同士で互いに助け合い、手を組みながら進むべきであり、軍備の強化とか、国力の増強だとか”は日本にとって害はあっても益はない。

 本日の日経に下記のような記事が載っていた。

 中国からの観光客が戻ってきたという記事である。

  日銀の高田恭介札幌支店長は5日、北海道への観光旅行者について「中国や台湾、韓国を中心に東日本大震災の前の水準に戻ってきた」との認識を示した。国内の観光客も「格安航空会社(LCC)の定期便就航による効果もあって震災前の水準に戻りつつある」と語った。今後は「LCCが台湾やタイなどから定期便の乗り入れを予定しているほか、中国からチャーター便が就航する予定で、(観光客数の増加を)期待できる」とした。

 北海道への観光客数は震災直後に急減した。昨年7月ごろから少しずつ持ち直し、『今年の春節(中国の旧正月)休みには中国の観光客が増えた』。国内の観光客は「LCCの就航による効果がかなり大きい」と指摘。当初は既存の航空会社の旅客減につながるとの懸念があったものの、「これまで北海道に来ていなかった層が来るようになった」という。

 今まで来なかった“層”が来るようになったということは注意すべき点である。

 中国の経済は、”片寄り“はあるかと思われるが、裾野まで広がり始め、中間層の拡大が進んでいる。

 様々な報道では、中国全体が日本を”悪者扱い“しているように見えるが、そのまま鵜呑みにしてはいけない。

 報道というのは、”正確さ“、”公平さ“が最も大事であるが、私が見聞きする範囲においては、その新聞社、そのテレビ局の意向に沿った報道になりがちになるかと思う。

 テレビなどは、一番は”視聴率”であり、色んな事件もできるだけ大げさに報道し、世間の同調を鼓舞すれば、ドンドンエスカレートして行ってしまう危険性がある。

 以前もお話したかと思うが、マスコミを信じるか否かということに関して、イギリスでは10%以下、アメリカでは20%位で、日本は70数%という数字だったかと思うが、先進国の中で、日本人ほど、マスコミ(マスコミを操る権力)による誘導に弱い国民は無いだろうと思う。

 まぁ!これが日本人のいい面でもあり、問題になる部分でもあるということだが・・・。

 事実、尖閣諸島問題が勃発した直後に私が大連へ行き、ローカルのテレビを見ていたら、韓国の竹島問題については結構詳しく報道していたが、肝心の“尖閣諸島問題”は全く報道してなかった。

 大連は、あの件でストもデモも何も起きなかった。

 行政も日本企業に対し、気を使っているのだと思う。

 あれが、過酷な報道を毎日流していたら、大連でもどうなったか分からない。

 ついでに、大連で面白い光景を見てきたので、お話しておきたい。

 夜な夜な町のあちこちの広場で、若い人は若い人達、年寄りは年寄りで集まり、あまり明るくないどちらかと言えば、暗い場所で踊りを踊っているのだ。

 その踊りというのが、盆踊りのような昔ながらの踊りではなく、ジャズダンスとかエアロビクスのような最近の音楽のリズムに合わせて、一定の決まった“振り”に合わせて踊っているのである。

 若者たちは、結構速いリズムに乗せて踊っていて、私はそちらはちょっと無理だったが、年寄りのダンスに参加して踊ってきた。

 辺りが暗いため、私が日本人かどうかということも分からないかと思うが、結構色んな曲が、途切れずにドンドン流れてきて、私もちゃんとその輪の中に入って、最後まで踊り通した。

 大体毎日7時ごろから9時ごろまでがダンスタイムのようだ。

 お金もかからないし、若者もいい発散場所になり、年寄りは毎日やったら、日本のカーブスなんかにも負けない健康運動の代わりになりそうで、とてもいい習慣だと思った。

 何か、中国も裕福になり始め、国民の生活にゆとりが生まれ、これまでの個人主義、拝金主義から人との繋がりとか、仲間意識とかへの変遷が始まりつつあるのかな?と思った。 

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これからのモーター・センサー業界をリードする株式会社セルコの「高密度コイル」

1)常識を覆すコイル

これまで、コイル巻線というと、ただただ「安く」・・・というだけで、その巻線の密度に気を使うことがあまり無かったかと思います。

私自身は商科の出身であり、事務畑、管理畑の人間ですので、詳細なコイルの技術的な面は良く分かりませんが、10数年前当社の技術者が、このコイルの常識に反し、巻く時間よりも巻線の精度に焦点を合わせる様を見て、正直焦りました。

コイル屋としては、3秒でも、1秒でも、0.5秒でもタクトを縮めることが、最も重要でなことであり、コイルの精度は二の次、三の次だったからであります。

しかし結果的には、当社はこの精度重視の「高密度コイル」技術によって会社が救われることになったのです。

皮肉にもコイル屋の”非常識“が、今後の”常識“となって行く可能性すら出てきたということです。

「高密度コイルの断面写真(電線間の隙間が無い)」

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下町ロケット・・・池井戸 潤

 TBSのテレビドラマ「半沢直樹」が大ヒットした。ここで、この原作者池井戸潤氏が書いた直木賞受賞作品「下町ロケット」という本を紹介しておきたい。

 これは、ある人と半沢直樹の話をしていた時、「社長は池井戸さんの『下町ロケット』という本を読みましたか?あの本に書かれている会社は御社とそっくり、御社そのものですヨ」と言われ、基本的にフィクションモノは読まない私だったが、即、この本を買った。

 その内容は、言われる通り技術力を盾に大企業と渡り合っている当社を誇張して描いたようなストーリーであり面白くって一気に読んだ。

 主人公は東京大田区にある従業員200名位の小型エンジンを造る佃製作所という町工場の佃社長。この会社は、技術にこだわりを持ち、誇りを持って営業しているが、ある日、大手のメーカー、ナカシマ工業から90億円の特許侵害で訴えられる。

 世の中は、有名大手のナカシマ工業がちっぽけな町工場を訴えたとなると、どう見ても大きい方が“正統・有利”、小さい方は“不当・不利”という見方をする。

 案の定、メイン得意先の一社より内製化による発注打ち切りにあい、資金繰りに困りメインバンクに融資の相談に行くと、この訴訟問題が大きな障害となり、融資を断られてしまう。

 そこへまた、大手のロケットを手掛ける帝国重工より、別途にこの社長が手掛け開発したロケット用の水素エンジンの特許を売ってくれとのオファーが来る。

 当然、この帝国重工はこの佃製作所の苦境を知って、この隙に安く買い叩こう・・という魂胆である。

 ところが、色んな展開の末、結局この佃製作所はナカシマ工業に対し逆提訴、それに勝訴し逆に50億円を超す和解金を得ることになってしまった。

 それまで、融資を渋っていたメイン銀行の支店長が飛んできたが佃社長はこの銀行に対し「取引停止」を言い渡す。

 帝国重工はなかなか特許の売りも、特許の使用契約にも同意しない佃製作所に、結局この水素エンジンを造らせるべく監査をすることとなった。

その監査の当日の場面が面白い。

 この帝国重工の監査人は、最初からこの会社を監査で振り落とそうとの意向があるため、現行赤字状態を責めたり、様々な荒探しをする中で、訴えて逆敗訴したナカシマ工業が造ったシリンダーと佃製作所製のシリンダーの性能比べをする場面がある。

 最初に試したシリンダーは完璧であり、もう一つの方は60点と監査員が点を付けた。

 当然、最初の製品がナカシマ工業で後が佃製作所のモノと思っていた監査員に佃の社員が言う。「最初のがウチのシリンダーで、次のモノはナカシマ工業製です」

 私が、今までに言ってきたことが、フィクションではあるが見事に書かれている。

 大企業は、よーいドンで同じものを造ったら、絶対的に自分の方のモノが優れていると思っているが、実は、機械設備も劣り、学歴も劣る中小零細のモノ造りの方が優れていることが多いのである。

また、大企業にとっては中小零細の技術、ノウハウは“只”。

 だからナカシマ工業のように、先を越された特許に対し、金と大企業の総合力で佃製作所を押しつぶしてやろうという考えが浮かぶ。

 この物語は小説だから逆提訴して逆に和解金をせしめたが、通常はそうはいかない。特許があろうが無かろうが、特殊技術があろうが無かろうが、自分の欲しい技術は、あらゆる手を尽くして手に入れるのが日本のメーカー。

 その際、金を払って話を付ける・・・という選択肢はよっぽどのことでなければ取らない。

 これはこの帝国重工の逸話を見ても分かるかと思う。

 社長命令で、全て自社の技術で賄うという大原則に立ちはだかったのが、この佃製作所の特許技術。この特許技術を避けて開発するとなると時間がかかり とても無理、①佃からの特許の購入、②特許の借り入れ、③当該部品の購入・・・という選択肢の中で結局は佃製作所の粘り勝ちで③の選択となった・・というストーリーであるが、このような大企業にとって”最悪の事態“となるまでの帝国重工内での葛藤は、”さもありなン”と思わせるような場面がふんだんに登場した。

 モノ造りは、一般的に大きい会社は全てにおいて上・・・ましてや製品の品質に関しては会社の“大きさに比例する”と思っている向きもあろうかと思うが、現実は異なり、この物語の通りなのだ。

 総合力ではとてもかなわないが、その部分、部分、製品の部品一点一点であれば、間違いなく町工場=中小零細のモノ造りが勝るかと思う。

 だから大企業は、素直にこれを認め、中小零細をきちっと一個の企業と見做し、対価を払い、強力なパートナーとして部品を発注すべきなのだ。

 コマツ製作所のように、協力工場との固い絆が構築されていれば、それこそ湯水のような様々なアイデアが出てきて、カイゼン、改革がドンドン進み、たちまち製品毎に”最高品質“を目指すことも可能となること請け合いである。

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