「下町ロケット」のテレビドラマ化

 昨日10月18日(日)夜9時から「下町ロケット」というテレビドラマがTBS系で始まった。

 この原作の本を以前私がこのブログで紹介したが、読み返してみると、殆どそのままで問題ないため、再度池井戸さんの本のドラマ化を機に、このブログに載せる。

TBSのテレビドラマ「半沢直樹」が大ヒットした。ここで、この原作者池井戸潤氏が書いた直木賞受賞作品「下町ロケット」という本を紹介しておきたい。

 これは、ある人と半沢直樹の話をしていた時、「社長は池井戸さんの『下町ロケット』という本を読みましたか?あの本に書かれている会社は御社とそっくり、御社そのものですヨ」と言われ、基本的にフィクションモノは読まない私だったが、即、この本を買った。

 その内容は、言われる通り技術力を盾に大企業と渡り合っている当社を誇張して描いたようなストーリーであり面白くって一気に読んだ。

 主人公は東京大田区にある従業員200名位の小型エンジンを造る佃製作所という町工場の佃社長。この会社は、技術にこだわりを持ち、誇りを持って営業しているが、ある日、大手のメーカー、ナカシマ工業から90億円の特許侵害で訴えられる。

 世の中は、有名大手のナカシマ工業がちっぽけな町工場を訴えたとなると、どう見ても大きい方が“正統・有利”、小さい方は“不当・不利”という見方をする。

 案の定、メイン得意先の一社より内製化による発注打ち切りにあい、資金繰りに困りメインバンクに融資の相談に行くと、この訴訟問題が大きな障害となり、融資を断られてしまう。

 そこへまた、大手のロケットを手掛ける帝国重工より、別途にこの社長が手掛け開発したロケット用の水素エンジンの特許を売ってくれとのオファーが来る。

 当然、この帝国重工はこの佃製作所の苦境を知って、この隙に安く買い叩こう・・という魂胆である。

 ところが、色んな展開の末、結局この佃製作所はナカシマ工業に対し逆提訴、それに勝訴し逆に50億円を超す和解金を得ることになってしまった。

 それまで、融資を渋っていたメイン銀行の支店長が飛んできたが佃社長はこの銀行に対し「取引停止」を言い渡す。

 帝国重工はなかなか特許の売りも、特許の使用契約にも同意しない佃製作所に、結局この水素エンジンを造らせるべく監査をすることとなった。

その監査の当日の場面が面白い。

 この帝国重工の監査人は、最初からこの会社を監査で振り落とそうとの意向があるため、現行赤字状態を責めたり、様々な荒探しをしたりする中で、訴えて逆敗訴したナカシマ工業が造ったシリンダーと佃製作所製のシリンダーの性能比べをする場面がある。

 最初に試したシリンダーは完璧であり、もう一つの方は60点と監査員が点を付けた。

 当然、最初の製品がナカシマ工業で後が佃製作所のモノと思っていた監査員に佃の社員が言う。「最初のがウチのシリンダーで、次のモノはナカシマ工業製です」

 私が、今までに言ってきたことが、フィクションではあるが見事に書かれている。

 大企業は、よーいドンで同じものを造ったら、絶対的に自分の方のモノが優れていると思っているが、実は、機械設備も劣り、学歴も劣る中小零細のモノ造りの方が優れていることが多いのである。

また、大企業にとっては中小零細の技術、ノウハウは“只”。

 だからナカシマ工業のように、先を越された特許に対し、金と大企業の総合力で佃製作所を押しつぶしてやろうという考えが浮かぶ。

 この物語は小説だから逆提訴して逆に和解金をせしめたが、通常はそうはいかない。特許があろうが無かろうが、特殊技術があろうが無かろうが、自分の欲しい技術は、あらゆる手を尽くして手に入れるのが日本のメーカー。

 その際、金を払って話を付ける・・・という選択肢はよっぽどのことでなければ取らない。

 これはこの帝国重工の逸話を見ても分かるかと思う。

 社長命令で、全て自社の技術で賄うという大原則に立ちはだかったのが、この佃製作所の特許技術。この特許技術を避けて開発するとなると時間がかかり とても無理、①佃からの特許の購入、②特許の借り入れ、③当該部品の購入・・・という選択肢の中で結局は佃製作所の粘り勝ちで③の選択となった・・というストーリーであるが、このような大企業にとって”最悪の事態“となるまでの帝国重工内での葛藤は、”さもありなン”と思わせるような場面がふんだんに登場した。

 モノ造りは、一般的に大きい会社は全てにおいて上・・・ましてや製品の品質に関しては会社の“大きさに比例する”と思っている向きもあろうかと思うが、現実は異なり、この物語の通りなのだ。

 総合力ではとてもかなわないが、その部分、部分、製品の部品一点一点であれば、間違いなく町工場=中小零細のモノ造りが勝るかと思う。

 だから大企業は、素直にこれを認め、中小零細をきちっと一個の企業と見做し、対価を払い、強力なパートナーとして部品を発注すべきなのだ。

 コマツ製作所のように、協力工場との固い絆が構築されていれば、それこそ湯水のような様々なアイデアが出てきて、カイゼン、改革がドンドン進み、たちまち製品毎に”最高品質“を目指すことも可能となること請け合いである。

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VWの問題から・・・

VWが大変な問題を引き起こした。

「米環境保護局(EPA)によると、VWグループは08年以降に米国内で販売したディーゼルエンジンの乗用車約48万台に違法ソフトを搭載し、大気浄化法違反の疑いがある。違法ソフトは「試験」状態を検知すると、排ガス浄化機能がフル稼働して基準を満たすが、実際の走行時には同機能が大幅に低下する仕組みになっている。不正対象車が実際に走行した際の窒素酸化物(NOx)の量は基準の最大40倍になるという。」
 
 今年、VWは販売台数を伸ばし、トヨタを抜き1位に踊り出た。
 トヨタは、むやみに台数は追わず、現状の生産拠点の強化をしていた。
 VWは中国の販売が落ち込む中、販売台数を維持し、伸ばすには弱いアメリカ市場を伸ばす必要がある。しかしアメリカの排ガス規制はかなり厳しく、これをジーゼルでクリアーするのは大変だったかと思われるが、まさか”インチキ“でクリアーしていたということはちょっとビックリだ!
 少し前に韓国が同様の問題で追及されたが、ドイツのナンバーワン企業が”まさか!”である。

 中国へ行くと、VWは圧倒的に強い。
 タクシーもVW社が多い。
 まさか中国と付き合いが濃く、長くなったため、感覚も中国になったということはなかろう!?
 
 私はいつも言う。
 モノ造りは”小手先の技術”は効かない。
 〝コツコツコツコツ”しかない。
 裸一貫、相撲の“ガチンコ勝負”と同じだ。
欧州はジーゼル大国で、世界のジーゼル車の3/4が欧州であり、約半分がジーゼル車ということである。
 これがNGということになれば、欧州の車は大きく変わって行く。
 トヨタのHV車か?あるいは低燃費ジーゼル車にこだわって2020年までにリッター50kmを目指すというマツダ車か?この際、100歩譲って軽自動車導入に踏み切るか?
 いずれも日本車が断然有利ということになりそう。
 今回の事件は、まじめでコツコツやっている所が最後には必ず勝つという私の”モノ造り論”の証明が、10年位経てば・・・と思っていたのが、意外と早く証明されてしまう可能性がある。
 
 先般ドイツの議会制民主主義の報道番組を見た。
 ドイツでは、先の大戦の反省を基に、完全な議会制民主主義を貫いている。時の政府がどんなことをやるにも議会での十分な議論が不可欠となる。
 先般の日本のケースを見ると、議員の数が上回っていれば、政府が決めたことは憲法違反であろうが、国民の多くが反対しようがなんでも通ってしまう国になってしまっている。
 同じ敗戦国でありながら、ドイツは今やEUにおけるリーダー的存在となって、様々な問題のオピニオンリーダーとなっているのに対し、日本は、隣国の韓国や中国、ロシアとの領土問題で揉めていて、とても“リーダー”の風格はない。
 その前にいまだにアメリカの属国から抜け出していない。
 
 政治家の人たちは、”外遊”で遊んでいないで、ドイツの政治を勉強しに行って来たらよいかと思う。 
 そう思っていた矢先のVWの失態は、私にとってはショックだった。 
“製高政低”というべきか、モノ造りは日本の方が上だが、政治は日本がはるかに下ということである。

 日本食のブームが世界中で広がっている。
 日本食レストランの数が2013年1月時点で約5万5千店が1.6倍増え、15年7月時点で約8万9000店になったとのことである。
 この調子で増えてゆくと、10年後には世界中で日本食が当たり前になってしまいそうだ。
 私が以前から唱えていることは、日本の”モノ造り“はこれまでの”コツコツ精神”を忘れずにきちっと対応していれば間違えなく世界に通用する。
 たとえそれが、僅かずつであったとしてもそのPRの度合いに応じて世界で増えて行くのは間違いないということだ。
 特に中国を含め東南アジアの人々は、多少の差はあるが、日本の”モノ造り“には一種のあこがれがある。
 それが、電気製品に始まり食や様々な文化に至るまで日本のものは結構もてはやされるのだ。
 日本は政治のレベルが低いため、アジアのリーダー的な存在にはなっていないが、間違いなく日本の文化やモノ造りでは、他の国を圧倒している。
 軍事力で相手を圧倒する時代はもう古い。
 安全、安心、平和(戦争の放棄、武器の廃絶)を旗印に、今は、日本の”おもてなしの心”、”思いやりの心“、”いたわりの心“、”もったいないの精神“等の日本固有の文化、そして間違いのない”モノ造り“を前面に出して”平和外交”、〝友好外交”を繰り広げていれば、間違いなく日本はアジアにおけるリーダーになっていたかと思う、
 具体的な戦いに巻き込まれる前に、どうにかしないと、日本は取り返しのつかない方向にむかってしまいそうだ。
 VWのことを心配している場合ではない。

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コイルの常識が変わってきた!?

  これまで当社はこの日本を中心に「多品種小ロット」、「試作」、「開発品」を中心に少しずつ売り上げを伸ばしてきた。

  しかしここにきてちょっとばかり様子が変わってきた。
 当社の「高密度コイル」技術が必要となる製品が結構な量で出るようになってきた。
 また、そのようなコイルの引き合いが非常に多くなってきた。
 現在当社はその大量なコイルをタイで生産しているが、こちらは”ボビンタイプ”、そして今、引き合いが来ているのは”空芯タイプ”である。
 ・・・と云うことは、”ボビン”、”空芯”を問わず、世の中が当社で巻くようなコイルの高密度化=完全整列巻きを求め初めている…と云う事かと思う。
 私はこのコイルの高密度化の技術が確立した時に、世の中、最終的にはこのコイル技術は必ず世の中に広まると確信し、「この会社は将来間違いなくブレイクし、小さな高収益会社になる」と宣言し、それから10年以上経ってしまった。
 その間、リーマンショックあり、大震災ありで、何度も振りだしに戻され、私の言うことが信じられずに、辞めて行った従業員も結構居た。
 この技術は、医療、ロボットを始めとして、精度が必要な製品、各製品間のバラつきがない製品には間違いなく必要となるであろう。
 ただ、担当の技術者がこの「高密度コイルの威力に気付くか否か?」ということかと思う。
 これはあくまでも私の感だが、ハイブリット、EVが進む車のモーター開発は、未だ各社色んなトライをしているようだが、最終的にはこの技術に集約されて行くような気がする。

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平和憲法こそ日本の誇り

 MIT名誉教授 歴史学者ンジョン・ダワー氏の言葉は胸に沁みる。

 「以前、外務省の高官から『日本はソフトパワーを重視している』と聞かされたことがあります。日本車、和食、漫画やアニメ、ポップカルチャー。世界が賛美するものは確かに多い。しかし、例えばハロー・キティーが外交上の力になるかといえば、違うでしょう。世界中が知っている日本の本当のソフトパワーは、現憲法下で反軍事的な政策を守り続けてきたことです」
 「1946年に日本国憲法の草案を作ったのは米国です。しかし、現在まで憲法が変えられなかったのは、日本人が反軍事の理念を尊重してきたからであり、決して米国の意向ではなかった。これは称賛に値するソフトパワーです。変えたいというのなら変えられたのだから、米国に押しつけられたと考えるのは間違っている。憲法は、日本をどんな国とも違う国にしました」
 「このソフトパワー、反軍事の精神は、政府の主導ではなく、国民の側から生まれ育ったものです。敗戦直後は極めて苦しい時代でしたが、多くの理想主義と根源的な問いがありました。平和と民主主義という言葉は、疲れ果て、困窮した多くの日本人にとって、とても大きな意味を持った。これは、戦争に勝った米国が持ち得なかった経験です」
 「幅広い民衆による平和と民主主義への共感は、高度成長を経ても続きました。敗戦直後に加えて、もう一つの重要な時期は、60年代の市民運動の盛り上がりでしょう。反公害運動やベトナム反戦、沖縄返還など、この時期、日本国民は民主主義を自らの手につかみとり、声を上げなければならないと考えました。女性たちも発言を始め、戦後の歴史で大切な役割を果たしていきます」

「平和憲法」こそ日本の誇りなのだ。
 戦争をやらない国、できない国こそが今この世界の中で必要であり、重要なのだ。
 このような根源的なことが、日本人の口から出たのは無く、アメリカの学者によって述べられ、それを大きく取り上げるということは日本人として誠に残念である。
私はこの事をずーと云い続けてきているが、残念ながら私の発言が、どこかに取り上げられることは無い。
 
 いつも言うように、軍事強化をいくらやってもアメリカや中国やロシアのレベルには程遠い。喧嘩は強い方が勝つ。抑止力というが、追い詰められれば、なりふり構わず戦いは始まる。
 原発を50基近く持つ日本は生半可なことでは守れない。
 今現在一番の防衛策は、「ひたすら平和を世界に訴え、他の国との外交努力を重ねること」である。
 今の政府の様に、今世紀最大のお客様の中国を仮想敵国とするなど、とんでもない方向違いなのである。”爆買いで潤った”国はどこかよその国だったんだろうか?

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